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【父の死】

【序】


享年、60歳。

これが父が生きた期間だ。


父は国境なき医師団の一人として中東にいた最中に、ゲリラの突然の襲撃を受け、命を落とした。


父の告別式の会場。


私はそんな人生を生きた父の遺影を見ながら、ふと昔を思い出しつつ、横にいる母を見た。


母は辛い表情が見えつつも、気丈に振る舞い、父の葬儀に足を運んだ人たちの対応を行う。

そして、私の袖口をぐっと握る制服姿の妹。

妹は俯いたまま、顔をあげる力は無いように見える。


この仕事は生と死に常に関わるものだ、だからこんな結果もある意味仕方ない。

それが分かっていたからこそ、リスクある地で働いていたのだから。


このゲリラ襲撃で父を含む三人の医師が亡くなり、五人の医師が重傷。患者は全員死亡、数は特に述べる必要はないだろう。

ゲリラは現地の軍によって、全員射殺されたらしい。


このニュースも大きく報じられたこともあり、私たち家族はマスコミの対応にも苦慮したが、それよりも遺体となって帰る父を空港で出迎える辛さの方が何とも耐え難いものとなった。


人の命はあっけない、と今も思う。

誰の為でもなく、本人の意思でもなく、人は生まれ、そして形はどうであれ、いつか人は死ぬ。

それは動物の摂理であり、変わることのないものだ。


父も、それに従っただけだと、私の中の誰かがいう。

自分の信念に従ったまでだったと。


夏の日差しが暑く照らし付けていた。

ふと空を見上げると昔を思い出す。


あの日もこんな暑い日差しの日だった。


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