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多色好きのTactics  作者: 水炊き半兵衛
Ep0:Exhibition-GAME
3/3

2.稼働前日(後編)

 アバターカードを読み込ませ、VR機内に設置されたデッキホルダーの中身を確認する。ざっと見た感じ、青と黒の混色デッキのようだ。

 GoSではバックストーリーとして四つの派閥が存在している。それが赤、青、黒、白。赤派閥のカードを使う場合は赤の魔力、青派閥のカードを使う場合は青の魔力といった具合に使える魔力の色が決まっている。つまり、多色デッキはそれだけ色魔力の管理が難しい。

 とは言え、僕は多色デッキが大好きなので色魔力の管理は慣れている。


「さて、ダイブ開始っと」


 デッキを確認した後、すぐさまダイブを開始する。一瞬意識が飛び、次の瞬間には視界がVR機内から切り替わっていた。

 場所は廃村。朽ちた家が乱立するフィールドだ。

 視界に"Turn 1"の文字が躍る。同時に手の中に六枚の初手が現れる。カードゲームによってはここからマリガンがあったりするのだが、GoS2にはマリガンがない。

 腰にはマナボトルが差さっており、ここに魔力を集めてカードを使うことになる。カード効果を除いた魔力を集める方法は二つある。


「それじゃあ始めるかな」


 タッチパネル式のメニューが現れ、"移動"をタッチする。それに伴い移動可能範囲が表示される。地面が青く輝いている範囲ならどこでも移動できる。

 

「さて、どこに移動するかな……」


 下手に動きすぎると茜さんに先制攻撃される可能性がある。慎重にいかないとな。ふと見回せば三マス先に水溜りがあった。これ幸いとばかりにそこまで移動して、メニューの決定をタッチする。

 瞬間、水溜りに宿った青魔力がマナボトルへ貯まる。これが魔力を集める方法その一、フィールド上に存在する魔力を吸収する。フィールドによって集めやすい魔力の色が違うので注意しておかなければならない。

 そして次は手札の一枚をマナボトルへ吸い込ませる。これが魔力を集める方法その二。手札のカード一枚を色魔力に変換できる。この行動をドリップと言い、一ターンに一度行える。

 ターンの構成としては移動、ドリップ、カード使用の三工程となっている。そして相手と同時進行によって進むのも特徴だろう。

 さてと、マナボトルに貯まっている魔力は青が二つ。手札のカードを使っておこうか。


「青二つで"生命魔力探知"をキャスト」


 マナボトルの中から青魔力二つが消える。代わりに俺の視界の端にレーダーが映る。


 ◆――◆


 生命魔力探知

 青2 エンチャントスペル

 視界の端に敵対者の位置を示すレーダーを映す


 ◆――◆


 エンチャントスペルは剥がされない限り、永続的に効果が持続するスペルだ。青派閥の生命魔力探知は使いやすく、コモンカードなので手に入りやすい良カードだ。敵対者の位置を知ることはGoS2の基本なので、誰でも手に入りやすいようになっているんだろうな。

 因みに、このゲームの勝利条件は敵対者のライフ十五点を全て削ることだ。戦い方によってはあっさり削れるが、ワンターンキルやワンショットで全て削れるほどでもない。

 これで何もできないのでメニューにある"ターン終了"をタッチする。

 すぐさま"Turn 2"の文字が映り、手札が補充される。このゲーム、珍しい事に手札が六枚固定なのだ。ドローソースもないので六枚から増えることも無い。かと言って手札を全て使い切ったとしても次のターンには六枚に補充される。


「茜さんは……随分と遠いな」


 僕はこのまま水溜りの近くを動かずに決定をタッチ。マナボトルに青魔力が貯まる。更にドリップで青魔力が二つに。

 ふとレーダーを確認すると茜さんは同じ場所から動かない。ちょっと覗いてみるか。


「青一つで"一瞬の千里眼"をキャスト」


 ◆――◆


 一瞬の千里眼

 青1 マジックスペル

 敵対者の様子を映像として見ることができる


 ◆――◆


 これで茜さんの様子を見てみよう。すると茜さんは何やら大きなタマゴを抱えている。そんな茜さんの隣には大鍋が鎮座していた。そしてタマゴに赤魔力を注いでいる様子も見える。同時に僕の血の気が引いていく。


 ◆――◆


 粗暴竜のタマゴ

 赤1 ユニットスペル

 ランク0・孵化=赤6

 孵化したユニットのランクは"1D6"である

 孵化したユニットは息吹【炎】を持つ


 ◆――◆


 スターターに入っているタマゴと言えば粗暴竜のタマゴ一択だ。しかも茜さんの隣にあった大鍋ってもしかして夕暮れ亭の大鍋なんじゃないだろうか。


 ◆――◆


 夕暮れ亭の大鍋

 赤1 ミソロジースペル

 自分は二点ライフを失う=自分のマナボトルに赤魔力を一つ加える

 上記の効果は"夕暮れ亭の大鍋"を唱えたターンには使用できない


 ◆――◆


 ふと茜さんのライフを確認する。残りライフ十一点。二ターン目でこれということは一ターン目に赤マナを貯めて大鍋を出して終了。

 その後大鍋の能力を起動、その赤魔力で粗暴竜のタマゴを出す。そしてドリップで赤魔力を貯めてタマゴに注いだ……ってこと?

 粗暴竜のタマゴから生まれてくるのはその名の通り、ドラゴンだ。強さはまちまちだが、脅威的なのは間違いない。

 三ターン目が始まる。同時に一瞬の千里眼の効果も終わる。茜さんのライフが九に減った。やばい、大鍋の魔力加速から早めに孵化させるつもりだ。

 急いで茜さんの方へと足を進める。けど、このペースじゃ茜さんの近くまで行くのに後二ターンはかかる。その間、大鍋の効果を使い続けると仮定するなら、孵化に間に合わないことになる。

 けれど今の僕には何もできない。そのままドリップを行いつつ、茜さんの近くまで来ることができた。直後、大地を揺るがす咆哮が聞こえてきた。


 ――現時点での状況――


 良哉:青3黒1 ライフ15

 茜:0 ライフ7


 ――現時点での状況――


 近くまで来ると、生まれたドラゴンの大きさに思わず唖然としてしまう。これはマズいなぁ……。

 幸い茜さんは生まれたドラゴンにご満悦のようで、僕には気づいていないようだ。仕掛けるなら、今かな。


「青一つと黒一つで"不快な幻"をキャスト」


 ◆――◆


 不快な幻

 青1黒1 マジックスペル

 敵ユニット一体に幻覚を見せ、敵対者に攻撃させる


 ◆――◆


 いきなり牙を剥いた自分のドラゴンに驚愕の表情を浮かべる茜さん。そのままドラゴンの火炎ブレスの餌食となった。


 茜:ライフ7→3


 茜さんのライフが四点削れた、ということはあのドラゴンのランクは四か。思ったよりも高いな。


「あちゃー、良哉くんのデッキって青黒コントロールかぁ」

「茜さんのデッキは赤単ですか。大鍋があるってことはスーサイドアクセルかな」


 僕の青黒デッキは普通のコントロールデッキ。ユニットを指揮して敵対者を倒すのではなく、マジックスペルやエンチャントスペルを駆使するデッキのことだ。

 対して茜さんは赤単スーサイドアクセルという魔力加速型のデッキと思われる。夕暮れ亭の大鍋は魔力加速としては優秀だけど、二点のライフロスは痛いので初心者は好んで使わない。

 というかそれ本当にスターターデッキ? ある程度GoSやってる人前提でスターターを組んでないかな、それ。


「でもまぁ、出来る限りやるつもりだけどさ!」


 ターンが始まった途端ドリップしてドラゴンにエンチャントスペルを発動させた。


「赤一つで"煮え滾る血"!」


 ◆――◆


 煮え滾る血

 赤1 エンチャントスペル

 自ユニット一体のランクを"15-自分のライフ【X】"点上げる

 Xの上限は5である


 ◆――◆


 え、ちょ、それって……!


「吹き飛びなさい!」


 僕は必死で逃げた。脇目も振らず逃げた。けれど僕の移動範囲ではあのドラゴンのブレスを避けることはできなかった。

 茜さんを襲ったブレスとは比べ物にならないほどの業火の壁に僕は飲み込まれる。熱さを感じなくて本当に良かった。


 良哉:ライフ15→6


 正直な話、スターターでワンショットを決められるとは思わなかった。というか次のターンどうにかできないと負ける。ドリップして、今の魔力は青が二つに黒が一つ。

 さてこの五枚の手札でどう攻めるか……。よし、なら――。


「青一つで"突撃衝動"をキャスト」


 ◆――◆


 突撃衝動

 青1 マジックスペル

 敵ユニット一体【X】を行動可能状態にする

 Xを自分へ攻撃させる

 


 ◆――◆


 ドラゴンが再度ブレスを吐く準備を整える。訝しげに見る茜さんにニヤリと笑いかける。


「更に青一つと黒一つで"身削り反射"をキャスト!」


 ◆――◆


 身削り反射

 青1黒1 マジックスペル

 敵ユニット【X】の攻撃を無効とし、敵対者は"Xのランク"点ライフを失う

 自分は"Xの元々のランク"点ライフを失う


 ◆――◆


 あのドラゴンの元々のランクは四だ。だから僕のライフはギリギリ残り、茜さんは九点のダメージを受けることになる。


 良哉:ライフ6→2


「これで僕の勝ち――」

「はいはい、ちょっとストップ。大鍋から赤魔力を抽出!」


 茜:ライフ3→1


「そう簡単に負けてあげないわ。"生贄の呪詛"!」

「へ?」


 ◆――◆


 生贄の呪詛

 赤1 マジックスペル

 自分は"自分のユニット数【X】"点ライフを失う

 敵対者は"1+X"点ライフを失う

 ターン終了時、自分のユニット全てを失う


 ◆――◆


 茜さんが最後に唱えた生贄の呪詛が僕と茜さんを襲い、対戦が終わる。勝ったと思ったのに、まさか引き分けになるなんてなぁ。

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