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あっつい

あの後の空気は最悪だったと言いたい。申し訳なさそうな小鳥遊の顔と縛られた鷹崎の体を交互に見ながら顔を赤らめている。ただの沈黙が包むこの空間だけが一時間ほど続いている。何も言わず時間が過ぎる。鷹崎の体をどうするか、相手の正体がなんなのかあれこれ思考を張り巡らせたところで意味がないことはここにいる誰もが分かっていた。

 背中に背負う鞄の後ろに太陽が沈んでいく。長い時間あの場にいたのだと察した。月花は耐えられなくなったのか気まずそうにゆっくりと退出していった。小鳥遊は縛った鷹崎の体を抱えて帰っていった。今後の監視のためと言って涎を垂らしていたのは見てないことにしておきたい。鷹崎も飛んだ趣味を持った人に目をつけられたもんだ。一人取り残された俺は窓の外からあの二人の影が消えたころに立ち去った。そろそろ夜が来る。来たところで何もないが、暗いより明るい方がましだということだ。街灯に灯がつきはじめる。唐突に聞き覚えのある声が聞こえる。

「おい。」呼び止められる。振り返ると奴がいた。それはそれは赤き衣を纏う女性の方が立って居った。

「これはこれは、お久しぶりでござんすな。」

「久しぶりか。最近会ったような気がするが、まあいい。お前はそんな喋り方をしていたか?」

「まあ、気にする出ない。本人ですら、キャラが不明なのである。最近の御様子を伺わさせてわいただけないところにあるばかりです。」

「そうか。最近は割と込み入っていてな。謎の襲撃騒動についての調査が忙しいんだ。余計なことをしている暇はない。」

「ほほう。その調査とやらを私、赤月めに教えていただけないでしょうか。先ほど、鷹崎氏がお戻りになさったのでいざ、刺殺してみるとあれまあこれは驚くことに自動的に体を再生しなすった。いつの間にあの方は奇術を会得したのやら。私は非常に怖くなりましてもう、大変でございまする。:

「鷹崎?失った仲間の一人か。それが帰ってきた?それはどういうことだ。詳しい話を聞かせてくれないか?私の仲間も所内で見たという話しは聞いていたが、どこか様子が変だと言っていた。お前らの所為ではないというのなら一体誰がこんなことをするというのか。」

俺は首を横に振るとその場を立ち去ろうとした。正直やってられなかった。なぜこんな訳の分からない奴と訳の分からないことを話さなければならないのだろうか。余計に頭が混乱してきた。敵の正体だの、無理矢理連れてこられたこの街で何が起きているのかも知らない。そしてさらによく分からないことが起きた。散々な気分だ。今日はもう寝かせてくれ。コマンドは逃げると寝るしか用意されていない。背後から妙に強烈な恐怖が波のように押し寄せてきた。振り返ろうとしたが振り返れなかった。蛇に睨まれた蛙ではない。睨まれてすらいない。存在に恐怖を覚える。冷たさが心臓を掴む。逃げ出せない。とうとう残った最後のコマンドも消されてしまった。どうしようもない。諦めてしまおう。

「そうか。お前もよく分からないのだな。」

赤いマントのそいつは靴の音を立てながら歩いていった。夕焼けが反射して眩しかった。恥ずかしくないのかな、あの恰好。心臓を掴んでいた冷たさはいつしか温められていた。気にもならなかった。

 家に入ると暗闇だった。まだ誰も帰っていないらしい。気にも留めずに靴を脱ぐ。汗でぬれた靴下を脱ぐと洗濯機の中に放り込んだ。疲れた。

 目を覚ますと時刻はもうとっくに夜を指し示していた。透明な猫が机の上に座っている。ぼやけた視界の中でこちらの反応を窺っているそいつは突然人へと姿を変えた。水のようなその体を通して本棚の形が見える。鷹崎の体を包んでいたそれだと気づく。ああ、殺されるのかと悟った。


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