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赤マントさんⅨ

タイ焼きが食べたいです。

 空は黒く晴れ渡り、ドアの前には赤いマントを羽織った何者かがこの校舎を取り囲んでいたようだった。さてここからどうしようか。股間を濡らした赤月は部屋の隅で壁とお話をしているし、鷹崎と月花は一切口を開かないし。あの手に持っているティーカップはいつからそこにあるのだろうか。仲が悪いのか、お互いよく知らないから会話ができないのか。気にしないでおこうか。どうせ答えは出ないとわかっている。だったら知らなくても害はなさそうだ。そんなことよりも現在置かれている状況を整理ようか。その必要もないのか。このまま朝が来るのを待って家に帰ればいいだけの話か。割れた窓の向こうから光る眼がこちらを見ている。一つや二つではない。無数の目だ。監視をしているのか、外に出ることを待っているのか。月花の言う通りにするのがここは一番だろう。彼らの目的は一応は知っているが、それにも特に興味がない。そもそもこの街が抵抗を続けているのにも疑問を抱いている。気にしない気にしない。私は何も知らないし、何も知りたくない。さて、赤月と壁との親密度がMAXになってきたようだ。愛の告白までしている。あほか。その艶やかな板に僕を貼り付けてくださいだなんて、興奮するじゃないか。やっぱり杭かな。両手両足を釘で打ち付けて高さ二メートルの位置にぶら下げる。ああ、たまらない。流れ出る血で豚野郎って落書きしてやろうかな。下には七輪でも焚いて、燃えない程度に痛めつけようか。逃げられない恐怖を与え続けることで終わることのない苦しみを。最高じゃないか。いや、待てよ。壁に釘を打ってそこからロープを…。涎が出ちまった。ダメダメ。もっと苦しみを与えないと。死ぬか死なないかの丁度いいやつを。…赤月のやつ、とうとう壁とキスし始めたぞ。あの埃まみれの壁によく口がつけられるな。そうか。そういうこともできるのか。これはリストに追加だな。おいおい、どんどん下に降りていくぞ。まさかさっきのが唇なのか。今は床をなめている。するとそこは…。全速力で脇腹に蹴りをいれる。涙目の上目遣いでこっちを見る。ああ、たまらない。もう一発蹴りを入れる。楽しい。楽しい。楽しい。いや待てよ。これはやりすぎたな。転がる赤月を起こし、背中をさする。

「大丈夫か。」と優しい声をかけると赤月はコクリと頷いた。逃げ場などないと思え。覚悟しろ。今の鷹崎と月花は機能していないも同然だ。お互い目を離さずに見つめあっている。動物かよお前たちは。周りは赤マント。今日は帰れない。誰も助けてくれないだろう。さて、どうしようか。背後でティーカップの割れる音がする。月花が立ち上がった。

「さてと、帰るか。」

「え?」

心の声が表に出てしまった。月花が首を傾げている。

「もう、奴等はいなくなったぞ。帰れる。」

もったいない。このまま赤月を痛めつけ、恐怖のどん底に沈めたい。

「じゃあ、先に。」

足早に月花は退出していった。ドアの向こうにいた赤いマントはとうに消えていた。いつの間にどこにいったのだろう。続いて鷹崎も退出する。ここには二人きり。私のターンだ。両手を構え、赤月に近づく。ゆっくりと、隙の無いように。ドアが開かれ、月花が現れる。やばい、ばれたか。

「鍵かけるから、出て。」

そうか。そういうことなら仕方がない。鞄を肩にかけ、立ち上がる。後から赤月が続く。たまたま月花と目があったが目を逸らされた。見られていたのだろうか。そうか。そうか。

 埃のたまった窓から月あかりが差し込んでいる。床に刻まれた無数の筋に小さな甲虫が挟まっていた。前に進む月花に尋ねた。

「さっきの赤マントは何だったの?」

「あれは、偵察かなにかだろう。きっと。」

偵察?私たちなんかを観察したところで得することでもあるのか?ない。ないに決まっている。まさか。赤月を狙っているのか。普通に考えてみろ。こんな状況の中で一人引っ越してくるのはどう考えてもおかしい。きっとなにかあるに違いない。そうだ。赤月の家に探りを入れてみよう。赤月の家には既に偵察は送りこまれているわけだし。仕方ないな。一晩泊めてもらおう。仕方がない。これは捜査だ。私に与えられた私だけが遂行できるたった一つの任務。ここでやらなきゃいつやるんだ。後ろを振り返るとひどくおびえた赤月がいた。そんなに怖いのか。そうかそうか。

「どうしたの?赤月。」

身震いを一つして赤月は答える。

「いや、なんでもない。ビビってなんかない。」

その目はなんだ。小動物か。

「今夜眠れる?」

少しの間があき、コクリと頷く。

「そう。」

ここであへて素っ気なく返事をする。すると相手は見捨てられたような気分になるだろう。待ってればすぐに食いついてくる。

「やっぱり、ダメみたい。」

それかかった。ちゅろいちょろい。この世を生きていけないぞ、軟弱者ぉ。袖を掴まれ、甘えた声で助けを求めていた。このまま持ち帰りたい。内臓全部かっさばいてシチューにしたい。垂れる涎を抑えながら後ろを振り向く。赤月がひどく歪んだ笑みを浮かべていた。

「捕まえた。」

そうか。捕まってしまったのか。仕方がない。だが、そんなに近くにいるということは貴様も捕まるということだ。脇腹に蹴りを加える。しかし、赤月は歪んで消えてしまった。空間がまるで割れたガラスのように粉々になった。残ったの暗闇と静寂だけ。どうやら罠にかかったの私の方か。口元がゆるむ。目の前には赤いマント。ヘルメットの向こう側からでもわかる。奴と目があった。そうか、お前が捕まえたのか。

こんなキャラだったっけ?

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