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通り魔

初めての長編です。

頑張っていこうかと思います。

突然腹部に痛みが走る。腹にあるのは白い太い棒状の物。なんだこれ。訳が分からない。しかし、一度は触ったことのある感触だ。思い出せ。じわじわと痛みが襲ってくる。ああそうだ。これは大根だ。おろして秋刀魚にかけるとおいしいんだっけ。そんなことより今の状況の方が重要だ。なにしろさっきまで俺はベッドの上にいた。『おやすみ、ダークセルバルディー』と満面の笑みを浮かべて快適な睡眠をめざして寝ようとしていたはず。なのにいきなり。ここはどこの空間だ?見覚えはあると言えばある。コンビニへ向かう途中の道だ。確か今日も通った道だ。あそこのコンビニのおにぎりはなんて言ったって最高なんだ。海苔がパリパリで……そんなことはどうだっていい。重要なのは今の状況だ。おにぎりのおいしさについて語ることじゃないんだ。なぜ俺の腹に大根が刺さっているかということだ。そもそも大根っていうのは食べ物で殺人には向いていないはず。おい!皮をむいていないじゃないか。本当に貴様は大根使いか。なめるんじゃないぞ、己。というか、そんなことどうでもいい。凄い痛い。これって夢だよね。薄々気づいていたけどさ。

 生々しい音を出しながら腹部から大根が抜ける。激しい痛みが全身を襲う。朦朧とした意識の中で犯人の姿を一目見てやろうと彼は思っていた。もし現実で似ている輩がいれば一発パンチを腹にかましてやろうと思っていた。そして、彼の眼に加害者の姿が目に映った。犯人は笑っていた。高らかに、そして真っ赤に染まった大根を握りながら。

「まだ生きてるんだねえ。驚いたよ。」

彼女は笑いながらそういった。右手に大根を握りながら。

「普通はもう力尽きているはずなんだけどな。そうだ、何か一言いうことない?ねえ、ねえ。」

ニヤニヤした顔を近づけながら彼女はそう言った。そして、右手には大根を握っている。

「何かいうことないの?あ!それともびっくりしちゃって声が出ないタイプー?」

奴はまだ笑っていた。右手には大根が・・・ない?なぜだ。どこに行った。まさか逃げたのか。嘘だろ。俺たちはあんなに仲が良かったじゃないか。そんなやつだったのか。お前はそんな奴だったのか。分かったよ、もう分かったよ。彼の目から涙が落ちる。諦めかけたその時!彼の眼は見おぼえのある緑色の茎、白いボディ。それはまさしく大根だった。なんだ、戻って来てくれたのか。彼はそう安堵した。これでまた楽しい日常を過ごすことができる。喧嘩したり、ふざけ合ったりの日々をまた繰り返していこう。希望に満ち溢れた彼の瞳を残酷な現実が染め上げる。大根の上をトラックが通り過ぎたのだ。そこにはつぶされた大根の姿があった。まるで大根おろしのようだった。真っ赤に染まる道路。彼は声にならない声を上げる。

「大根ー!」

目覚まし時計が彼を夢から呼び起こす。うまく開かない目をこすった。その手は涙でぬれていた。朝食が出来たらしいのでリビングに向かった。今日の朝食は秋刀魚だった。横には大根おろしが添えられていた。不意に涙がこみ上げてくる。ありもしない大根との思いでが脳裏を駆け巡る。一口食べた大根おろしは少し辛かった。

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