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アラブ首長国連邦

どうもパロネタ厨の朝霧担当編集です。

行を修めると書いて修行。身体的な動作や反射神経、威力や速度を高めることが修行ではない。何故肉体を鍛えるかを理解し、自らの身を危険に投げることで命の大切さを感じとり、無の境地へと───悟りを得ること。これが本来の修行であり、修行の目的である。

「そうは言っても、あんたが悟りをひらいてるようには見えないぞ……」

「そりゃ簡単じゃ。わしの悟りはわしだけのもの。他人に易々と理解出来るような代物ではないということじゃ」

───ここは第一魔法学校とは街を挟んだ反対側にある、仙双岳という山の中だ。古典的ではあるが修行として山籠りを敢行中である。疲労で片膝をつく俺を見下ろし、老人───仙人と呼ばれる翁は、長く伸びた顎髭を愛しげに撫でた

「ふぉふぉふぉ。まだまだわしには遠く及ばぬか」

仙人のその物言いに、未熟な心がささくれ立つ。不機嫌そうな口調で、

「具体的にどのくらい遠いんだよ」

と訊いた。

「三千里程かのぉ」

「三千ミリ?」

「三千里じゃ。ちなみに一里は約3.9km」

「無茶苦茶遠いじゃん」

実際、少年が満身創痍なのに対して、仙人は息一つ乱れてない。勿論傷も無い。過ごしてきた年月の違い。この老人からは、それでは納得出来ない何かを感じた。師事してきて早半年が過ぎようとしているが、未だ底が知れない。少年は言い様の無い理不尽さを感じて、歪んだ表情を頭を下げることで隠した。

「魔法発動のモーションに武術を取り入れることで隙を無くす。というのは面白い発想じゃ」

「問題は熟練度。武術の才能が無い俺には、魔法発動で手一杯」

仙人の台詞を引き継ぎ、自分で自分の批評を語る。

「ふぉふぉっ。よく判ってるじゃないか」

仙人は見た目通りの笑い方で、くるりと背を向けた。

「今日はここらでお開きじゃ。また半殺しにされたくなかったら、よりイメージを凝らすとよい」

捨て台詞と共に去っていく背中を、少年───天笠命は、立ち上がることも出来ずに見送った。


「そろそろ顔を見せてくれんか」

仙人の名を冠する老人───趙劉は、命が下山したのを見計らい、背後に声をかけた。

「おぅ……流石はエロ仙人です」

何も無いところから声が聞こえると同時、空気が人一人分の揺らぎを見せた。

「何度も言うが、わしはエロい訳ではないぞ」

言いつつ趙劉が振り向くと、そこには一人の青年が立っていた。彫りの深い顔立ちに、浅黒い肌。額にはト音記号のようなマークの彫られた防具が巻かれている。確か額当てといったか。

「それにしても久し振りじゃのぅ」

「オーゥ、アラブデース」

「今まで何処に」

「オーゥ、アラブデース」

「……相っ変わらず話聞かんなこいつ」

「オーゥ、アラブデース」

ひたすら同じ言葉を繰り返すこの青年は、本名なのかどうかは知らないがアラブと名乗っている。興味の無いこと以外は全く話を聞かないという困った───というかうざい奴である。

「……とりあえず何しに来たのかは教えてくれ」

「オーゥ、……別に」

「は?」

アラブは腕を組み、軽く握った右手を口許に当てるような仕草をして、

「特にありません」

と、不機嫌そうに言った。急にどうしたんだこいつ。

(天の声的には沢尻エリカが通じる訳ねぇだろ!と突っ込みたい感じです)

「じゃあ何でここ来たのじゃ?」

三年前突然現れ、そして二年もしないうちに忽然と立ち去った彼が、今更何の用で顔を出したのか。

「いヤいヤ、ちょっと追われテテ」

「追われてる……じゃと?」

カタコトで放たれた物騒な言葉に、眉をひそめる。

「確カ、Magic Registersダカラ……そウ!魔法抵抗軍団デス」

「魔法、抵抗……軍団?もしかして、反魔法組織と言いたいのかの?」

「まァソンな感じぃ?」

何故だろう。こいつの言葉の節々に苛々してくる。

「とにかくもう疲れたんで、泊めてもらっていいっすか?」

「何かブレッブレじゃなぁ……アラブよ」

趙劉は溜め息を吐きつつも、アラブを山小屋へ案内することにした。反魔法組織と聞いたら、たとえどれ程ウザかろうと、追い出すわけにも行かなかった。


俺の名はゲーンズボロ・ガリカ・ゴールズワージー・ギーソン・グロヴァー・ディズリー・ダルグリッシュ・ド・モルガン・バージェス・ベッセマー・エニス・ヅダ・オーウェル・キンケイド・クロトーゾ・メコナン・サーキス・タウンゼント・ツヴァイ・チュレット・テート・ネルソン・ヲルトレイク・ハリス・ヒーリー・フック・ヘネカー・ホドル・ミーリック・ヨーク・ビーチャ・ヤング・ザドク・ユノーヌ・リュージュヂム・ショーンドゥーカス・ウォーク。

出身はアラブ首長国連邦だが、身分は日本の理学大学に通う学生だ。いや、今やそれも過去のことか。何故ならそれは、まことに信じがたいことだが、俺はある日、異世界に飛ばされたのだ。魔法という超常の力が当たり前のように存在する、この世界に。

俺が最初目覚めたとき、そこは見知らぬ山の中だった。拉致でもされたのかと恐怖に身を竦めたが、辺りに誰もいないことに、その考えを改めざるを得なかった。

とりあえず下山しようと、勘を頼りに、とにかく下方向に歩を進めた。そうするとどうだろう。いつの間にか、俺の足は登り坂を踏みしめているではないか。俺は露骨に混乱した。何かの間違いだと心を落ち着け、再度挑戦したが、また足は登っていた。もう訳がわからなかった。

朽ちた切り株に腰かけ、思考を整理する。体力的に、もうハイキングを続けるのは限界だ。頭を使うしかない。

そうして頭を抱えること数分。意外にも、閃きは早かった。

「出られない山───もしかして、結界か!?」←英語です

俺は日本好きの外国人の例に漏れず、日本のアニメが大好きだ。特にNARUTOが一番気に入っている。結界とは、そこから得た考えだった。

「入ろうとしても入れず、出ようとしても出れない。突拍子も無いが、結界としか思えんな」

推測するに、山を囲むようにして展開しているのだろう。抜け道があるのかもしれないが、それを探し始めたら骨になっても終わらないだろう。

「はぁ……」

万事休す、か。俺が絶望にうちひしがれ、NARUTOの名シーンを脳内で回想し始めたときだった。

パキッ。

枯れ枝を踏み折るような、乾いた音が耳膜を揺らした。

「え……?」

音の方向に反射的に顔を向ける。するとそこには、一人の老人が佇んでいた。

「おやおや。こんなところに見慣れぬ顔がおるわい」

老人はそう言って、ゆっくりと近づいてくる。反射的に立ち上がり、距離をとろうと後ろ足を下げる。が、そこで俺が動けたのはそこまでだった。

「さっきの……日本語?」←英語

「おや、英語を喋るか」←日本語

老人は俺の言葉を聞くと、驚いたように目を開いた。

「この山には結界が───それも力づくでは通ろうにも通れんものを張っておいたはずじゃが……」

「結界ヲ張っタのは、あんタナのか?」

「おや、日本語が喋れるのか。うむ、いかにも。結界の主はわしじゃ」

やはり───。

どういうわけか、この山の周囲には結界なんてものが発動している。まさか魔法などではないだろうが。きっと方向感覚を狂わせる音波などが発生してるのだろう。

「ふむ。害意は無いようだし、見たところ道に迷ってる様子。それに興味もわいた」

「なニ?」

「どうじゃ。わしと来んか?」

老人はそう言って、俺に手を伸ばした。


それから俺は、老人の小屋へ行き、そこで様々な話をした。俺が今いるこの世界は、元いた世界とは違う───つまり異世界だと。そして更に驚愕だったのは、老人───仙人も、俺と同じ世界からきた人間だということだ。

「世界を越えた者は、ただの迷子ではない。その身に莫大なる異能を備えているのじゃよ」

「異能?」

「あぁ。わしは仙人の力を。君は何だろうな」

「俺は……」

その時はわからなかった。だから俺はそれを知るために、仙人の弟子になることにした。

力の正体は半年ほどで判明した。何と、忍術だったのだ。

それから一年半の修行で身に付けたのは、影分身とRASEN☆GAN。俺は力をつけたことでつけ上がり、山を出て、旅に出た。

案の定、右も左もわからないのに旅に出て、何とかなるはずがない。俺は反魔法組織に目をつけられ、今日、仙人のいるこの山に逃げ帰ってきたわけである。各国に情報収集のための影分身を残してきたが、いつバレるかは時間の問題だろう。

だがここにいればとりあえず安全だ。ここは魔法の総本山。いくら標的とはいえ、無闇に襲われることはないだろう。

俺は仙人の晩酌に付き合いながら、そう自分を勇気づけた。

次は確か、マニムツ(マニアックムッツリ)さんだった気がします。きっとすごく面白いはずです。少なくともアラブが主人公みたいなストーリーではないはずです。

基本的にアラブは担当編集専用機ですので。

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