始まり2
可愛い=正義さんです
俊足魔法は脚力を強化した人間の走行なのでかなり体力も鍛えられる。なので学校側もこの魔法を使わせて生徒達を学校に登校させている。
T字路に差し掛かったときにふと横道を見ると、深い赤色の髪の色の女の子が誰かに絡まれている様な光景が目に入った。なにせかなりの速度で走っているのでそのくらいしか分からなかった。
あまり関わりたくはなかったが、見ておいて無視も悪いので急いでそのT字路まで戻る。
急いで戻ってみると、やっぱり深い赤色で少し癖のある短髪が特徴的な色白のモデル体型の女の子が男三人に囲まれていた。このあたりは郊外なのでたまにこういった連中がいる。帝国第一高等魔法学校の生徒はこういった連中に難癖を付けられることが度々あるのだがそいつらは返り討ちに合うか、無視されて終わるのがオチだ。まあ、女の子の方は帝国第一高等魔法学校の制服を着ているので大丈夫だろうと思っていたが、この時の彼女の行動に違和感を覚えた。ここからは、見たままの事実を記す。
三人の男の内の一人が、ナイフを取り出してスっと突き出した。ナイフは女の子の顔をかすめて顔にうっすらと擦傷をつけた。女の子の傷口から血が一滴、頬を伝う。
女の子はその血を手のひらで拭うと、手から赤黒い色の刀を現した。
そして女の子はその刀で、男達三人をあっという間に返り討ちにしてしまった。勿論殺してしまうと問題になってしまうのですべて峰打ちだった。見事な腕前である。
男達を気絶させた女の子は、その後何故か気を失ってしまった。帝国第一高等魔法学校の制服を着ていたので、学校に行く途中だったのだろう。しょうがないので、少し面倒を見てやることにした。
学校の保健室まで運んで保健医に事情を説明。先生曰く、彼女の容態は、ただの貧血だったようだ。一応の安心を得た俺は。少し駆け足気味に自分の教室へ向かった。
今日は一日中あの女の子のことが気になっていた。と言っても、一目惚れしたとかそういうのではない。正確に言うと、あの女の子が使った赤黒い刀を出現させる魔法を俺は知らなかったのであれはどうやったら使えるのか本人に聞いてみたい。というだけだ。まぁ、大体の検討はついてるけど。
本日の授業が終了して、帰宅している道中であの女の子を見つけたので、追い付いて話しかけてみた。
「体調の方は大丈夫?」
「うわ!?ビックリした…急に後ろから話しかけてこないでよ!」
「すまない…」
彼女からしたら初対面のはずだから、驚くのも無理はない。
「あなただったのね、私を保健室まで運んでくれた男の子っていうのは」
保健医さんが教えておいてくれたのか。不審者扱いはされなくて少し安堵。
「おかげで助かったわ~遅刻せずにすんだし…あなた名前は?」
「天笠命」
「そう、天笠君ね。私は紅茄子 芽衣荷、よろしくね」
「紅茄子さんね。ところで朝使ってたあの魔法は何?」
「あの魔法って?」
小首を傾げる紅茄子さん。命は今朝の光景を思い出しながら問いかけた。
「ほら、赤黒い刀を出したやつ」
「あーあれね…自分でもよくわからないんだけど…あれって魔法なのかな?」
「あ〜そうなんだ」
多分、固有魔法だろう。紅茄子さんは保健医の先生曰く、一年生らしいから知らなくても無理は無い。
「変な事聞いてごめんね…でもどうしてあのときそれを使おうと思ったの?」
「えっ!?」
紅茄子さんは首をかしげた。
「いや、だって普通逃げるでしょ。いくら帝国第一高等魔法学校で魔法を勉強してるからって三対一じゃ分が悪いし、相手は男だし、それに貧血気味っていうなら尚更…」
あの時に覚えた違和感はこの事だ。どうしても気になったので本人に聞いてみることにした。
「あっ、それもそうだね…」
心なしか紅茄子さんの顔が赤い気がするが、まさか自分が貧血気味なんてことを忘れていた訳ではないだろう。きっとまだ体調が良く無いんだろう。
「じゃあ私こっちだから…ありがとね」
「じゃあね」
紅茄子さんとは朝見かけたT字路で別れた。
自分は固有魔法が使えないから少し紅茄子さんが羨ましくなった。
次はゆーともさんです