表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

始まり1

マニムツさんです。

―――キィ、ガタン。カチャカチャ――パチン

(よし、家の鍵は掛けたな。ここ最近盗人が出たとは聞いてないしバッチリだ)

うちの家系は母さんと俺と妹の3人家族で父さんはもういない。家が学校から遠すぎたので小さな家を借りて俺はそこに一人で住んでる。日中は学校にいるから夜まで家には誰もいないので

(空き巣対策に錠と鍵を買うしかなかったんだよなー。そこまで大きいものにしてないからたいした出費じゃなかったけど)

遠くの町に行くために山を渡れば山賊に会ってもおかしくないこのご時勢、用心を重ねておいて損はないのだ。

勿論鍵を魔法で破壊したりガラスをぶち破ったりされたらアウトだが、ガラスを割ったり魔法で鍵を壊したりすれば中々の音を立てることになる。そうなれば隣近所はもちろん巡回中の警邏に捕まえられるのがオチだ。

(墓参りしてから行きますかね)

そう思い、俺は走り出した。



視界いっぱいに白い石が整然と並び、辺りは植物の息遣いが聞こえてきそうなほど静寂に包まれている。

ここは墓場、死者の眠る安静の地だ。

少し遠くに着いた時点で走るのをやめ、息を整える。ここで雑音を立ててはならない、そんな気がするから。

(あまり時間は掛けられないけど少し拭いていくか)

共通の倉庫から布巾を拝借し、井戸の水で軽く濡らして朝を告げる鐘の音を聞きながら父の墓を拭く。

この墓の下に、俺の父さん、天笠(父の名前)は眠っている。

(父さんは元気にやってるかな?返事は聴けないからわからないんだけど)

そう思いながら墓の前にしゃがみこみ、少し話した。

「や、父さんは元気?俺も母さんも元気だよ。相変わらず生活はかつかつだけどうまくいってる」

一人暮らしなので収入は母からの仕送りのみで生活は楽ではないが別段火の車と言うわけでもない。学校の費用はトップを取り続けてるおかげでなんとタダだ、奨学金制度に感謝するべきだろう。

「今年で俺も三年生、頑張るよ。まあ普段も頑張ってるけどな、へへっ」

父が此処に居るのだとしたら今どんな顔をしてるのだろう?

相変わらずだなと苦笑いしてるのか、元気があってよろしいと微笑んでるのだろうか。

(此処にいるのかは分からない。だけど父さんは見守ってくれてる、そんな気がする)

もし父が見ていたら誇ってくれるくらい頑張ろうと思う。これまで通りに、これからも。

(そろそろ学校に行くか?早朝に起きたとはいえさっき鐘も鳴っていたしな)

「もう行くけど、あの時誓った通り学校ではトップをとり続けてる。だから安心して眠っててくれ」

そう伝え、しめやかに墓場を出た。墓場は相変わらず静寂に包まれてたが、どこか温かみのある静寂だった。




学校に行くと言ってもただ歩いて行ったりするわけではない、というかそれでは授業に間に合わない。

天傘 命の通う学校、帝国第一高等魔法学校はこの国では最高ランクの学校であり本来なら都市の中心部にあるべきものなのだが中心都市からは遠く離れた郊外にある。

魔法学校は名前どおり魔法を習得する学校だ。魔法を実践するためにはそれなりの土地が必要だし、戦闘関係のものとなれば当然危険が伴い、しかも帝国一なだけに扱う魔法には相当強力なものが存在する。

そのため帝国第一高等魔法学校は都市の中心部ではなく、都市から遠く離れた草原があるだけの郊外に設立されたのだ。

ちなみに学校には寮が無い、ならどうやって郊外にある学校に通うのかというと、入学式の一週間前に配られる教科書に載っている俊足魔法を使って通う。帝国一番な学校なだけに、朝からスパルタなのであった。


基本的に魔法に必要な魔力は、多量である上に、放出した魔力を保持・変換する段階で少なからず魔力が四散する。

そのため、発動するのに十分な魔力を練り上げることに何十秒もかかることが多く、俊足魔法は発動時間に関して、中級魔法の中でも長い部類となる。

よって、ある程度の瞬間的な魔力放出量及び魔力の収束能力がない限り、魔法が発動しないか、効果がすぐきれてしまう。新入生はまずこれをマスターするのが常であった。



「いっちにさんし、ごーろくしちはち にーにっさんし、ごーろくしちはち」

足の筋を伸ばし、肩をほぐし全身の柔軟体操を行う。

学校は俊足魔法を使う前にストレッチを行う事を義務付けている。脚力を強化した人間の走行は足への非常に高く、急激な負荷に足が攣りやすいからだ。

事実これを怠ったため走行中に足が攣り、5mほど転がる者が後を絶たない。

(下手すりゃ顔面スライディング、それを去年やった奴は顔中血まみれだったな)

医務室の前でそれを見た日、ストレッチは絶対にすると心に誓ったものだ。

「フー、ストレッチ完了。―――行くか」

足を強く意識しながら八秒間ほど魔力を練り上げ、唱える。

「千里を疾く駆ける超常の力よ!我が身に宿れ!」

魔力が足元に集まり、履いていた靴が淡く発光した。脚力強化魔法【イダテン】の発動に成功したようだ。

(入学試験の時の発動にかかった時間は40秒、去年で30秒、今年で20秒。卒業する頃には10秒きらないとな)

俺は学校に向けて馬にも劣らぬ速さで駆け出した。

次は可愛い=正義さんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ