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蛍は、躊躇いつつも気になった事をたずねた。
「あの…自分で使うんですか?」
「え!? ち、違う!!」
先程までの無表情から一変して、焦ってぶんぶんと首を横に振る男に蛍は少し親しみを覚えた。
無表情よりも遥かに人間らしい。実をいうと、こういったプレゼントの依頼は今までにも受けたことがあった。ひとまず、名前などを聞かなければ依頼の受け様がない。
「えーっと、とりあえず自己紹介しましょうか。私は、川島蛍。2年生です。」
「俺も2年。尾崎司郎。」
同じ歳でこんなに大きく育つものなのかと、感心する。
この尾崎司郎という男、見た目は怖いが、悪い人間ではなさそうだ。
同じ歳という事で、砕けた話し方でいいだろうという事に安心する。敬語などは元々あまり得意ではないのだ。少し慣れてきたので本題に入る。
「誰かへのプレゼント?」
この質問に司郎は無言で首を縦に振る。
「女の子?」
これにも頷く。
ーー先程までの流れで予想は付いていたが、司郎はあまり話すのが得意ではないようだ。これでは話が進まない。
大方、相手は彼女かなにかだとは思うが。
半分決めつけて蛍は質問する。
「相手の人は何歳?」
「…6歳」
26歳の聞き間違いだろうか。
蛍の頭の中に「ロリコン」という単語が浮かび上がる。まさかこの容姿でロリコンとは…。
流石に、幼児との恋愛は応援しかねる。
プレゼントで幼児を釣るつもりだと決めつけ、どうしようか迷っていると、司郎が気まずげに顔をそらしながら口を開いた。心なしか耳が赤くなっているように感じる。
「変な勘違いしてるみたいだけどさ、妹にあげるためだから」
その言葉に胸を撫で下ろす。
恋愛は自由だが、法律に引っかかるような恋愛は自分の目の届かないところでして欲しいというのが本音だったのだ。
そもそも、冷静に考えればその可能性のほうが低いのが分かる。申し訳なさでこちらも目を逸らす。
あたりに重い沈黙が満ちた。