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蛍が目を覚ますと、そこは図書室だった。寝ぼけ眼で周囲を見回すと、目の前には雑誌が積まれていた。
開かれたページには「夏の絶景特集」としてホタルが飛び交う写真が載っていた。
あぁ、これを見たからあんな夢をみたのか。単純な自分の頭に、思わず笑みが零れた。
どうせなら前半のみで夢から覚めれば良かったものを…。
残念なことに願いは叶わず、蛍は今しがたみた夢を覚えていた。だが、冷静に懐かしい思い出と思えば大したことはない。
思い出に思いを馳せるのをやめて頭を切り替える。別に夏の絶景を探していた訳ではないのだ。蛍が見たかったのはその横のページ。「浴衣に合う髪飾り」の特集の方だった。
妹にかんざしを作って欲しいと頼まれたのだ。
蛍は手先が器用で、手作りのアクセサリーを作るのを得意としていた。
妹はアクセは買うよりも、姉に頼んだ方が確実と知っているのだ。妹の身に付けている物はほぼ、オーダーメイドの蛍製である。もちろん、おおよその製作費は頂いている。
今回は、憧れの幼馴染と夏祭りということで、自身が最大限に可愛く見えるものをとの要望であった。そんな物が無くとも可愛らしいとは思うが、妹を飾り付けるのは好きなので引き受けた。
妹の恋路の応援として今回はプレゼントだ。
自分の作った物が妹の魅力を引き出すと思うと作るのが楽しみで仕方が無のだが、依然としてデザインが決まらない。そこで雑誌に助けを求めていたというわけだ。
さて…どんなデザインがいいだろうか。
そう思いながらページをめくっていると、目に止まったものが2つほどあった。