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不在証明様の御題を拝借しています。
○不在証明/一糸様
http://fluid.hiho.jp/ap/
スクリーン越しに涙、涙
トゥの小さな点が舞う、
天に見立てた踊りに涙、涙
触れず触れる、
触れ触れず、
En dedansの世界観
悲劇の舞いに涙、涙
チュチュの裾が舞い泳ぐ、
適わない恋に涙、涙
見慣れない地に見慣れぬ空に、
En dehors の理想を添えて いつか
pirouette を舞う pierrot が
Pas de chat を踏むような
夢を求めて舞っている
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アン・ドゥ・トロワで恋に落ちよう
諦めたのです
諦めたのです
綺麗になること
清楚でいること
諦めたのです
諦めたのです
静かにあること
あなたの理想になることは
諦めたのです
諦めたのです
綺麗事で着飾った殻を脱ぎ捨てて
ウェディング・チャペルに背を向けて
諦めたのです
あなたの人形になることを
“あなたの”私になることを
これから私は
ただの“私”を生きていくのです
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純白のドレスはもう要らない
塗り固められた黒い斑の
影のような塀の前に僕は佇む
誰かがひとつ嘘を付くたび
重ねられた黒
誰かがひとつ罵るたびに
重ねられる黒
誰も彼もが他人を貶し
誰も彼もが言い訳をして
誰も彼もが罪から逃げる
そのたびに
重ねられる 黒
黒
黒
やがて世界は崩壊して
どろどろとしたもので塀が埋まる
誰か悲劇に気付くだろうか
無恥の哀れ
無知の幸福
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これが最後の天国
月を慕った
銀色に瞬く下弦の月を
星を慕った
降り注ぐ光の涙を
風を慕った
異国の闇の抱えた匂いを
雲を慕った
暗色に紛れて揺らめく海を
空を慕った
広く遠く開け放つ窓を
夜を慕った
闇を慕った
微かな罪を覆い隠す深き天鵞絨
あぁ
あぁ
あぁ
愛した夜が明ける
願わくば再び相見えるまで
哀れな死者を隠さんことを
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愛した夜が開ける
聖女は祭壇へと跪き、清楚な白い衣を汚す。
掲げられた墓標に祈り、無垢な眸を伏せ、そして。
組み合わされた手のひらの中、潰えた世界の終焉を祈る。
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祈りの両手に閉じ込めた終焉