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恐怖の入口は此方から

 何処までも追い掛ける。

 そんな芸当、ストーカーか余程暇な人にしか出来ないと思っていたが例外もあることを痛感させられた。


「待てこの野郎!!」

「ワイは野郎じゃなくて翔や!」

「翔!? 待ちなさい翔!!」

「あかん! 名前教えてしもた!」


 ずっと逃げなあかんハメになった。

 こいつ、何や理科室にいた(幽霊)と自分では言っとるんやけど、あからさまに人間そのものでいまいち信用出来へん。


「ちょー待て! 先生に叱られるで?」

「問答無用! 誰にも私の姿を見る事なんて出来ないのよ!」


 やっぱそうか。予想してたわ。


「あんたの体を使って、私は生きる!」

「勘弁してや!」

「嫌と言ったら?」


「……逃げるわ! 何してでも!」


 だからワイは走っています。

 やなくて、捕まると危なそうやから放課後の学校を疾走しとる。

 ちなみに、ここは四階やから一階に行ければ校舎の外に出れるかもしれへん。

 目指すはそこや。


―四階の階段―


「な、何やこれ!」


 10段階段に敷かれた無数の画鋲。

 アイツ(幽霊)の仕業か。とパニックになりそうになるが上靴を履いてれば貫通して突き刺さる事はないんやで幽霊はん。

 ジャリ。と画鋲同士が互いに擦れ合いながら奇妙な音を立てる。転んだら針串刺しの刑も良いとこやな。


―三階の階段―


「待ってたわよ翔!!」

「うあアンタいつの間にいたんや!」

「覚悟なさい! ってえ?」


 ドンッ。と車の飛び出し事故よろしく止まれずに思い切り幽霊と衝突する。


「ったいわね、止まりなさいよ!!」

「すまん! やけど逃げるで!」

「逃がさないわ! 首狩り激情! 今からここは血の海になります事よ!」


 めっちゃ怖いわ! 何か背後から叫び声が聞こえて来るし助っ人はおらんし!


「こら! 廊下を走るな」

「あー先生! えろうすんまへん!」


 冷静や。やっぱ見えてへんな。


「喰らいなさい! 真・零式疑似死体経験的衝撃波!」


 背後からの声。と同時に風が来た。

 バリン! と正面にあった図書室ガラスが割れた。あかん本気で死んでまう!


「避けるんじゃないわよ!」

「アンタが勝手に外したんや!」

「私を侮辱するとは……こうなったら何が何でもあんたを斬り刻むわ!!」


 体を奪うんやなかったんかい。


―二階フロア―


「とにかく階段に、ってうわ!」


 熱っ! って何で二階のフロアが燃えてんねん! 避難訓練は終わったで!


「どう? 幻覚攻撃の味は?」

「やっぱしアンタの仕業かい!」


 幽霊が窓の外に浮いてる。もう慣れたから驚かへんけどな。


「幻覚によって焼け死ぬが良いわ!」

「嫌や! 間抜け過ぎる!」


 それだけは避けなあかん!

 ふと外を見ると、幽霊が多少苦しそうにしてワイの方を見てる事に気付いた。


「……MP使うんか?」

「そうよ! だから早く燃えなさい!」


 素直やコイツ。なら話は簡単や。


「暑いから裸になるわ」

「そうしなさい。ってえ!?」


 気が散った瞬間に炎が消えた。アホやな動揺しただけで失敗するとは。


「隙あり!!」

「あ! まま待ちなさいよ!」


 待て言われて待つヤツはおらん。


―1階フロア―


「このまま行けば出口やな」


 後ろにも誰も見えへんし。このまま行ったら外に出られる。

 そうなったら陸上部の足で逃げ仰せられる確率は高くなるやろと思う。


「待ちなさーい!!」


 幽霊の声が遠くから聞こえた。


「しつこいなアンタも!」

「再始動! 真・零式疑似……」


 やばい!また呪文唱えとる。

 インコースを曲がって行った時、見知らぬ二人のシルエットが見えた。


「え? うわあっ!!」


 互いに衝突。ソイツは転ぶ。


「誰か知らんがすんまへん!」


 一旦止まって誰かに謝る。もたもたしてたら捕まりそうやから勘弁してや後でジュースの一本でも奢るさかいと心の中で言っとく。


「兄さん。平気ですか?」

「頭のネジが飛びましたネ」

「どんなネジですか?」

「とても大切なネジですよ」

「そうですか」


 何やけったいな会話やな。


「ちょっあんた達どきなさい!!」

「え? うわあっ!」


 またぶつかったでコイツ。


「気を付けて下さ……ん?」

「さ……皐月っ!! それに卯月! 何で二人がここにいんのよ!?」

「貴方もです。何故廊下に?」


 皐月と卯月は双子やろか。えらい似てるし区別が付かへんな。


「さては、封印を抜け出しましたね?」

「ちち違うわよ!! 翔が勝手にお札を剥がしたから悪いのは翔なの!」

「言い訳無用です」


 そう言い、卯月と皐月は青色のペンダントをポケットから取り出して幽霊をはさみ打ちの要領で素早く取りかこむ。


「ちょ、また封印!?」


 いきなり慌て始める幽霊。やけど逃げようにも卯月と皐月が身構えとる。

 それからは一瞬やった。卯月と皐月が何かの呪文を唱えると次の瞬間には幽霊の姿が消えてもうたから。


「ふう……怪我は無いですか?」

「あ、別に平気やで」

「良かったですね無事で」


 ペンダントをポケットにしまう双子。


「所で、あの幽霊を知っとるんか?」

「もちろんですよ。あの方は昔からこの高校に住み着いてる地縛霊です」

「貴方が封印を解いてしまったので、僕らが理科室に封印しておきました」


 ホンマの幽霊やったんか。


「悪戯好きでして、俺達もほとほと困っているんですよ。性格も騒がしいし」

「もう理科室には入らないで下さい。今度は告白されるかもしれませんよ。純情なのでそっち系には免疫がありませんし」


 だから気が散ったんやな。


「じゃ、僕達はこれで」

「じゃ、俺達はこれで」


 同時に言われても聞き取れへん。


「おおきに! 助かったわ」

「あ」

「忘れてました」


 双子が同時に立ち止まる。


「幽霊の名前は凛です」

「名前で呼ぶと良いですよ」


 良い情報なんやろか。取り合えず礼を言うと双子は今度こそ向こうに行った。

 あの二人、何してたんや?

 ともかく今後、理科室に近寄るヤツがいたら陰ながら笑っといたろ。

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