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敷かれたレールは壊して進め

 占いが流行る時がある。

 どこかのサイトで見つけた占いで、やたら納得行かない結果が出たとしても気にしていないフリをしながら傷付いている。


「貴方はアリストテレスです」

「誰それ?」

「有名な哲学者みたいです」

「よそ者お断りだから」


 よそ物が俺の席を使ってるな。

 朝から人の椅子を断る事もそっちの気で奪うのは構わないのだが、奪っている人とその付き人に問題があったみたいだ。


「裕奈。取り合えず返せ」

「えー! ちょっと待ってよ! 占いやってて手が離せないから!」


 手が離せないのはお前じゃないだろ。

 裕奈の方は手ぶらでリアクションを取りながら話をしていたのが見えたぞ。


「蓮希、何とか出来ないか?」

「ごめんなさい。無理そうです」

「やっぱりか……敵は裕奈だもんな」


 試しに小言を言ってみる。


「何かほざきましたか?」

「いいえ。何も」


 やはり裕奈には聞こえたらしい。

 結局自分の席を取り戻せなかった俺は、仕方無く空いていた適当な椅子を借りて座ると二人の会話を観察する事にした。


「本当にこれで良いんですか?」

「良いよ。続けて」


 何か新たな占いを言うらしい。

 どうやら、裕奈が蓮希に喋ってもらって占いを試しているみたいだな。


「貴方が大切にしている物は?」

「権力」


 それが大切な物かよ。いや、そもそも権力って物じゃないな。


「座右の銘を答えて下さい」

「さおだけ屋は潰れないものだ」


 理由が気になるな。ってそれじゃ座右の銘どころか主張になってるぞ。


「貴方の長所は?」

「自分の拳で釘が打てる所」


 明らかに釘の方が固いだろうな。


「では、短所は?」

「結局釘の方が固くて負ける所」


 やっぱりそうか。


「……はい。結果が出ました」

「どうなったの? 鍋の具材占い」


 そんな占いだったのかよ!


「貴方は、鍋の底にある豆腐です」

「…………え?」


 どうやら納得していない様子。


「鍋底豆腐のあなたは、いつも縁の下から皆を味付けするタイプ。無くてはならない存在と言えるでしょう。多分」

「多分って何よ!!」

「そう書いてありますもん」


 そりゃ納得行かないよな。俺だって言われたらヘコむだろうし。


「……豆腐。ん、豆腐?」


 何だ。何かに気付いたらしいぞ。


「豆腐っておからだよね?」

「そうだと思います」

「健康食品じゃないの!!」


 そっちかよ!


「えらくプラス思考だな」

「まーね! 飛鳥と違うから」

「俺はマイナス思考じゃないぞ」

「うるさいわよ! 電池のマイナス極みたいな顔してるくせに!」


 どんな顔だ。


「飛鳥もやれば良いのよ! きっと悪い結果が出るに決まってるんだからね!」

「ああ良いよ。やるさ」


 どうやら占われるハメになった。

 質問を出されて順番に答えて行く。もちろん(権力)だとか(さおだけ屋は〜)なんておかしな答えは言っていない。


「はい。結果が出ました」

「ごめんな。何回も読ませて」

「いえ。楽しいので大丈夫です」


 蓮希が読むのはこれで二度目。裕奈の強制朗読を合わせたら更に行くだろう。


「貴方は、珍しいから使わずに取って置いたまま忘れられたギザ10。です」


 なるほどギザ10か。ってえ?


「……何占いだそれ?」

「思い出の品物占いです」


 何だソイツは。


「ギザ10なあなたは、つかの間の幸せをみんなに与えます。しかしそれは本当につかの間なのであまり意味が無いでしょう」

「大きなお世話だよ!」


 何で真面目に答えたのにそんな結果が出るんだよ。


「ぷ、あはは……お似合いね」

「やかましい!」

「ふふ……確かに面白いです」

「蓮希まで笑うなよ!」


 声を殺して笑う裕奈と蓮希。

 笑わせるつもりは無かっただけに、軽く傷付いたりするのだが笑いの神が降臨しただけだと自分を励ましておく事にした。


「さて、仕上げね」

「仕上げ?」

「アンタもやりなさい蓮希!」


 裕奈は蓮希に飛びかかった!

 蓮希に14のダメージ。ってあまりに急だからRPG風になったじゃねえか。


「わわ、私もやるんですか!?」

「当たり前。10円君もやったんだから蓮希もやらないと悪いでしょ!」


 多分俺の事だ。10円君は。

 ちなみに、蓮希は文房具占いの結果ボールペンのキャップだった。

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