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晴れた日に傘を差した人

 暑くはない、ケドさ。

 真夏の季節でも無いっていうのに、これだけ陽射しギラギラって法律的に許されるんでしょうか。

 馬鹿みたいに朝寒いからってブレザー着込んで来たら、日中いきなり気温上がって来やがったんで裏切られた気分です。


「いやー、急に暑いですネ」

「働き盛りですよ。太陽のヤツも」

「有給出してやったらどうですか?」

「倹約家なんで無理ですネ」

「そーですか」

「道に落ちてる金は拾いますんで」

「ケチですか」

「いいえ、倹約家ですヨ」

「そうですか」


 コイツらの話を聞いてると、体温どころか脳味噌の70パーセントぐらいが沸騰して蒸発しそうなテンションなので、涼しい窓際から仕方なく教室に待避してやった。

 ベランダに信長よろしく陣取って、涼しい風をまったり堪能しながら、あんな意味不明な会話されたらこっちまでオカシくなりそうですよ。


「あ」


 ただ一言。いや、一文字。

 何が起こった? と確認する為に声のした方向を振り向く暇もなかった。

 ドォン。と、背後から野球ボールが飛んで来て顔面スレスレの壁に当たって、何とも危機感に満ちた音を奏でた。


「って、危ねーよ!」

「悪い悪い。コントロールミスった」


 野球ボールが足元に転がる。

 あと数センチズレてたら、恐らくボールの形に後頭部がヘコんでたに違いない。


「しかし、あの双子は大変だな」

「見てるのが大変だ」

「調子狂うだろ」

「狂う」

「どっちが皐月だ?」

「さあ……左じゃないか?」

「左は卯月だろ?」


 疑問系の嵐。嵐が吹き荒ぶ。

 自信無い。っていうか未だにどっちが卯月でどっちが皐月が分からない。


「僕が卯月ですヨ」

「俺が皐月ですヨ」


 って、聞こえてたのかよ。と突っ込むには多少距離が開きすぎているし、何より疲れるし暑くなるから速攻で却下した。


「僕、が卯月で……」

「俺、が皐月か」


 悠に続いてオレが言う。

 というより、双子らしく片方だけ髪が七三分けとか瞳の色が違うとか、声がソプラノとか背が低いとかにして欲しいと思う。


「所で、何で制服着て来たんだ?」

「あーえっと、寒いから?」

「何で疑問系? って言うかさ、急に暑くなるならなるって言って欲しいよな」

「無理だろそりゃあ」


 やっぱ無理だよなー。と笑いながら悠は落ちてた殺人未遂球体もとい野球ボールを拾って自分の席に戻って行った。

 まだ使うのか。あの野球ボール。


「すいません。飛鳥君」

「前通りますよ。飛鳥君」


 丁寧な挨拶を交わして――というか一方通行的に挨拶をされて――卯月と皐月が壁に寄りかかっている俺の前を通過した。

 滅茶苦茶似てる。軽く犯罪でも出来そうな位に似た端正な顔立ちは、まさに神が作り上げた傑作とでも言ってみようか。


「卯月と皐月、暑くないのか?」

「はい。もう」

「ええ。治まりました」

「ちょっくらベランダ借りるぞ?」

「どうぞ」

「はい。どうぞ」


 悠が笑いながら卯月と皐月の双子ら二人とベランダの使用契約を結んでいる。

 うーむ、こうやって見ると悠も何気にカッコ良かったりするんだよな。いつも元気があったりするし。


「飛鳥。行こうぜ」

「え? あ、ああ」


 ベランダは公共の物だから仲良く使いましょうなんて校則は無視する。

 校則を貫き通すなら、この田舎にある高校でなおかつ資金不足の影響をモロに受けている貧乏な教室にエアコンの一つでも付けてくれと言いたい。


「言っても良いか?」

「うん?」

「直射日光のせいで、中より外の方が蒸し風呂みたいになってるよな?」

「……確かに」

「卯月皐月は何してたんだ」

「……日光浴?」


 まさに一杯食わされた。

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