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第五章 亜寿沙と甲我の帰宅


 龍宮寺 亜寿沙は、与えられた屋敷と使用人達で小学生、中学生時代を過ごしていた。それまで友達を家に招く事は禁じられていた。小学生の頃は教育の為にと考えられて友達と遊ぶ事はあっても、遊びに行ったり来てもらったりはしていない。

 そんな屋敷には両親が住んでおらず、本邸と呼ばれる邸宅で過ごしている。亜寿沙の両親も、龍宮寺家のしきたりに則って過ごしていた。それを小さい頃から知っているからこそ、亜寿沙は最初は寂しい気持ちを持っていたが、中学生の頃は龍宮寺一族の教え、しきたりに則って過ごしていた。


 その三年後に、ぶっ壊した人物が現れた。それが、亜寿沙の恋泥棒である白濱 大我である。


            ▼▼▼


「もしもし? あぁ亨か。今亜寿沙の車に乗ってるんだけど、明日は仕事はあったっけ? え、大我がやるって? いや、お前、大我が出たら――え、父さんと一緒に一泊二日の? マジか……。分かった。それじゃ亨は母さんに、亜寿沙の家に泊まるって――え、明音ちゃんが亨の家に泊まりに来てるのか? ちょっと待ってて」


 中村が運転する車で、甲我が自宅に連絡をしている。そんな甲我は隣に座っている亜寿沙を見る。


「明音ちゃんが亨の家にまた数日間、入り浸るってよ」

「あら? そう。明音は私や他の家族と違って反抗的な筈なのに、亨君には懐いているわよねぇ。私から本邸に連絡しておくから、邪魔はしない様にって伝えておいて?」

「あいよ。聞いたか? あぁ、そう。いいんだよ、お前は戦えない方なんだから、普通に暮らしていけって。あぁ分かってるって。あぁ、あぁ、任せておけって。え? マジで? 忘れてたわ……。明音ちゃんと一緒に代わり、頼めるか? ……マジで? ありがとう亨。今度、工作キット買うからよ。あぁ、それじゃ」


 甲我が通話を終えて鞄の中に携帯を終う。


「明音が出たのかしら?」

「出てないけど、後ろでゲームしてたっぽいぞ。滅茶苦茶、亨に懐いてるよな」

「あの子、亨君の芯の通った顔付きに男を感じたって言ってたし、甲我の弟って伝えたら、交際許してたしね」

「亨が頭を抱えて悩んでたけどな。亨は自分の事を太っていてモテない人間って言ってるけど、家事が出来てる時点で普通にレベル高いんだよな。俺、亨の作る料理普通に好きだし。明音ちゃんの為に弁当を毎日作っていくのは最早奥さんだろ。それに比べて明音ちゃんは、龍宮寺家だよなぁ~」

「そうね。私と違って本邸に住んでいたから価値観は私より高い筈なんだけど、確か料理部に入った亨君の料理を食べて、そこからだっけ? 家に遊びに行って入り浸っているの」


 亜寿沙が左手人差し指で顎を押さえて上を見る。


「お前ん所みたいに、亨には亨の家があるからな。高校生になったら一人暮らししたいって言ったから家を一つ渡したんだけど、今となっては明音ちゃんとの共同の家になっちまってる。明音ちゃん、普通にうちに嫁ぎに来るぞ」

「あら? 龍宮寺姉妹が揃って白濱兄弟と結婚だなんて、面白いわね」

「俺と亜寿沙はともかく、亨と明音ちゃんにとってはいいのかもな。亨は戦える人間じゃねぇし、どちらかというと表で稼げる人間だからな。明音ちゃんは確実に裏だけど」

「明音はねぇ~~。私と違って好戦的だし、舎弟作ってるからねぇ~~。レディースチームを中学生の頃に作ってたくらい暴れん坊よ。今は亨君の家に入り浸るレディースチームみたいな感じかしらね」

「食費かかるだろうなぁと思ったら、亨がそこらへん手伝ったりしてるから結構盛り上ってるんだよな。なんだあの吸収力。多分、ハーレム状態だぞ」


 思い出すのは亨の姿。太っているし顎も出ているが、実行力が高いし真直ぐに答えたり料理が出来るしネイルも出来るし裁縫も出来るし――と、やたらと女子力が高い。そりゃモテるわなぁと甲我は思う。そこを見切ったであろう明音ちゃんも、流石だなぁと考える。


「いいじゃない? 弟君がハーレムで後継者をいっぱい作ってもらえば。私と甲我の後継者問題も負けられないわね。私は覚悟できてるから」

「滅茶苦茶真剣な顔で言うやん……。けど亜寿沙の両親もそれには期待しているんだよなぁ。だったら一緒に暮らせばいいの――あぁ~~、亨の件があるから強く言えないわ、うん」

「そうよ。けどそうなると、明音がそっちの家に嫁ぐのよね」

「あぁ~~……。いや、亨の場合は普通に暮らしたそうだからなぁ。明音ちゃんもだろ? 龍宮寺一族よりなんかこう……な?」


 言いにくそうにしているが、言いたい事は分かる。明音は龍宮寺でいるより、普通の家庭で育った方がいい。ただ、才能はある妹なのだ。しかし、龍宮寺家の生活が合わなかった。だからこそ中学生の頃にグレたとも言うべきなのだろうか。それでも学校には行っていたが、問題も起こしていた。

 龍宮寺の恥晒しなどと言われた事もあった。だが、


「明音が渇望していたであろう人間が、目の前に現れた。それに甲我の言う亨という人間がどういう性格か教えてもらっての担保があるから、余計に安心できるとお爺様は言っておられた。あれでも孫が可愛いと愛でていたから。それに、どうやら隠れて会いに行ったらしいわ?」

「……あの爺さん、亨に会いに行ったのか? え、家に?」

「いえ? 普通に家庭科室。用務員のお爺さんとして行ってお話しをしたそうよ。真直ぐに答えられたから、途中で”明音を頼んだ”と泣きながら言いそうになってたって聞いてるわ」

「理事長、孫馬鹿だからなぁ~。俺の時も途中で覚醒したかと思えば、亜寿沙は渡さん! だったもんな」


 今思い出しても、その言葉が出た事は素直に嬉しい。それがあったからこそ、対話で亨と明音の交際を認めたんだろう。


「……それよりも、甲我は私との間に後継者を作る事に否定はしないのね?」

「ん? うちの親も期待しているし、もうそこらへんは何も考えんばい。けど、俺はまだ強くなっちゃいねぇからなぁ~~って。少なくとも、兄さん姉さんには勝ててないし」

「――そう。けど、十分強いじゃないのよ、甲我は」

「もっともっと強くならねぇと。じゃないと、才能が努力を追い抜いちまうだろ?」


 確かに、と亜寿沙は考えてながら、内心でガッツポーズを取る。


「(子供を作る事には否定はしない。つまりそこは、既に向こうの親子さん方は認めているという事。外堀を埋めていくのに一番の厄介さがここかな? とは思いましたが、実はそうじゃなかった。私が強ければそれでいいという考えを持っている? 部分がありましたから、何処か龍宮寺家と似たようなところがある。だとするならば、他も攻略は簡単ですわねぇ~~。本人は忘れていますが、例の計画を発動させるには、総門お兄様の力が必要。きっと、ものにしてみせますわ!)」


 心の中でだが、強く念じているのを、中村はバックミラーを一度見て亜寿沙の様子を確認し前を向く。


「青春ですなぁ」


            ▼▼▼


 龍宮寺 亜寿沙の家。龍宮寺家の塀の中に家が幾つも立っており、それぞれの子供達に家と使用人が与えられ、そこに暮らしている。家は普通の二階建てで、決して小さくはないが、一人で過ごすには広い。そこの前に車が止まり、使用人が後部座席を開けて、亜寿沙と甲我が外に出て来る。


「ありがとうございます。今日もお泊り、失礼します」

「いえ、これくらい当然ですので。ただ、どうやらうちの祖父が今日のお昼前にお世話になったとかで」

「あ? え、あ~~っと……。もう俺も必死で対応させてもらったので、なんとも言えないです、はい」


 甲我がばつの悪そうな顔をする。それを分かっていて使用人が笑顔で質問した。性格悪いなぁと甲我が笑いながら言うと、その使用人は頭を下げる。


「本当に、一族に属している一家からは根に持たれましたわね、甲我」

「本当だよ。俺が悪いのか? あぁまぁ、悪いか。俺が勝手に暴れたようなもんだしな。けどまさかこうなるとは思わないだろ? もうこうやって家に泊まりに行くのだって、二つ返事でオーケーもらうくらいだし。まぁ息子を信じてもらっているって事で」

「ですわね。では、入りましょう?」


 亜寿沙は笑顔でそう言うと、甲我の手を掴み嬉しそうに家の中に迎え入れる。そんな姿に甲我は溜息はするが、本人が楽しそうならそれでいいなぁと考えるだけ。


 二人が家の中に入り、中村が家の隣に車を停車し、一息付ける。


「今回の甲我様の模擬戦は実に鮮やかだった。いきなり与えられた試練に対しても冷静に対処するだけでなく、まだ底を見せてはいなかった」


 中村は、甲我の訓練を離れた所で見学していた。その実力は確かなモノで、人の理から反しているような動きをしている部分がある。あれを見た時は、どうしようもなかった。私では到底敵わない力を有していた。しかし――、


「今度、手合わせをお願いしてみよう」



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