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第一章 甲我と亜寿沙の関係

 龍宮寺 亜寿沙は、白濱 甲我の事が好きである。理由は一目惚れというわけではないが、とある共通点があった。それは、性格。亜寿沙には妹と弟がおり兄と姉がおり、甲我にも弟がいて兄や姉がいる。

 お互いに似たような境遇というのもあるが、お互いに好戦的な所が似ている。というのもあるが、一番は甲我が亜寿沙の為に行動をしているのが一番だろう。


 一時間目が終わり、総門が机に教科書を置き、甲我が黒板に書かれた文字を消す。

「そうだ、甲我君」

「なんですか総門先生」

「うちのお爺さんが、亜寿沙の花嫁姿を見たいって言ってたよ。来年あたり、学生結婚はどうだ? って」

「それ、うちの親にも話したでしょ? 前帰ったら、子作りしたんだろ? って親に言われましたよ。勘違いなのか茶化しなのか分からないけど赤飯が炊かれてましたから」

「はっはっはっは」


 総門が笑うが、甲我は溜息をする。亜寿沙はメイドから紅茶を入れられたティーカップを持って紅茶をゆっくりと飲み、休みに入っている。


「亜寿沙。トイレに行きたくなるからあまり飲み過ぎるなよ。昨日なんか、世界のティーセットって言って結構飲んでただろ?」

「あら? ちゃんと私の尿意の心配をしてくれるなんて。だったら」


 亜寿沙はティーカップを置き、両手を広げる。ん! と強めの発言をして。


「……一人で行けよ……」

「やだ!」

「子供か! ったく~」


 黒板がまだ消し終えてないが、黒板消しを置いて亜寿沙の元へと行く。そしてお姫様抱っこの状態で持ち上げる。


「総門先生、トイレ行ってきます」

「行ってらっしゃい。遅くなってもいいからね?」

「お花摘みに行かせるだけですから、遅くなる事はないですよ。というか、やめてほしい」


 甲我がお姫様抱っこしながら出入り口に近付くと、執事の中村が開ける。


「どうぞ」

「ありがとうございます」

「行ってきますわ~」


 二人が出て行き、中村が閉めて総門を見る。


「本当に亜寿沙お嬢様はお元気になられましたね」

「まぁ元々元気だった子だけど、うちの家訓が厳しいからね。特に、男性は生き残れ、女性は子供を産め、みたいな所があるでしょ? 昔馴染みのってのがあるけど。それを真っ向から否定してぶっ壊してくれた甲我君が大好きなんでしょ?」


 中村が笑みの表情を作り、天井を見る。


「去年の、龍宮寺総本山襲撃事件ですね。甲我君というたった一人の16才の男の子に、戦える者達が、師範クラスが、そして……旧当主が敗北しましたからね。たった一人の、亜寿沙お嬢様という女性の未来を壊すために。彼の犯した罪は、総本山の襲撃の罪であり、パートナーとなる事……ではありますが、本当の所は、彼の様な人間の血縁を持っておくべきであると判断したんですよね?」

「まぁね。あの状態の彼には、私でも敵わなかったよ。世の中にはいっぱいいるんだねぇ、あぁいう事が出来る子とか」

「はっはっは。現当主である大門様も、あれには敵わないと言っていましたからね」


 一年前の、龍宮寺一族に所属している者達がいる総本山が、たった一人の少年に襲撃され、殺されはされなかったもののボロボロにされた過去がある。そこには亜寿沙の兄である大門、総門、正門がいたが、全員迎撃され、ボロボロにされた。完全敗北である。


「そんな彼が、亜寿沙と結婚するかも知れないんだよ? 私は凄く期待しているよ、あの二人にはね」

「はい。総門様も無理をせずにお願いしますよ?」


            ▼


 亜寿沙を抱えたまま連れて行く甲我は、別教室……いやこの場合別室といえばいいのだろうか、そこを通っている。トイレまでは近いのだが、男女共同になっているのはどうかと思う。いや、別々のはあるのだが。


「甲我も勿論入るでしょ?」

「……メイドさ~~ん。お願いしますぅ」

「ちょっと!?」


 甲我が筋肉モリモリマッチョウーマンのメイドさんにお渡しし、そのまま共同トイレに連れて行かれた。甲我は一度だけ溜息をし、壁に凭れる。


「いつもお疲れ様です、甲我様」

「いえ、大丈夫で――」

「去年殴られた腹部の痛みは今も忘れてはいませんからね?」


 メイドが笑顔で言うと、甲我の顔が引きつる。引きつりながらももう一度だけ溜息をして、


「毎回会う度に言うのやめてくださいよ……。いや、確かにアレは申し訳ないとは思いますが……殺さない様に頑張ったんですよ?」

「いつでも殺せるって事ですよね? それって」

「私達はいつでも、いつでもお相手致しますからね?」

「……さっき引き渡した女性の方より強くなったらお願いします」


 さっきの筋肉モリモリマッチョウーマンの女性だが、甲我が暴れた際に世紀末覇者のような構えや攻撃、迎撃が印象深かったらしい。ただ、甲我の知り合いが多い女性達で構成されているらしい。


「おや、女衆は甲我様に恨みがあるみたいだが、男衆は甲我様を尊敬しているが?」


 執事が数名、甲我を囲うように立ち塞がる。メイド達が笑顔で額に血管を出している。


「男衆は黙って料理でもしてな」

「女衆は黙って飲み物でも淹れてなよ。それしか出来ないんだから」


 執事とメイドから殺気が出され始める。それを甲我が三回目の溜息をして――、


「はいはい、お互いに止まりなさい。甲我も、溜息を何回もしない」


 亜寿沙がトイレから出てきた。奇麗に歩き始めて甲我の元へ。メイド、執事が甲我への道を作り頭を下げる。ゆっくりと亜寿沙が甲我を抱き寄せて首に腕を回して、ポールダンサーのように足を絡める。


「私と甲我がいる間で争いは無しよ? けど、私の甲我の為に争ってくれて嬉しいわ?」

「まぁ俺が暴れたのがそもそもの原因……いや、元を辿れば亜寿沙が原因だからな~~」

「そう。私の可愛い、助けて……、からの、任せろ、って発言だけで去年の様な事が起きたのよね」


 亜寿沙が軽く飛ぶと、甲我がお姫様抱っこをする。甲我が亜寿沙の我儘を聞いている状態である。


「こっちとしては全員、俺が倒しちゃった事だからなんとも言えないけど、戦うならいつでも構わねぇよ。俺だって好きで~~……あぁ~~、途中で楽しくなっちゃったからなんとも言えないけど、戦うならいつでもいいよ。ただ、殺し合いはなしで。マジで俺、殺しちゃうから」


 甲我が面倒そうにそう告げながら、亜寿沙を抱っこしつつ元の教室へと戻りに歩く。

 執事とメイドが頭を上げて背中を見る。歩いているその背中を。


「やっぱり、甲我様には勝てないな。最後の言葉だけ本音を喋られた」

「えぇ。こちらも鍛え直さないとね」

「でしたら、私がお相手になりましょう。そうすれば少しは強くなるかも、知れませんよ?」


 筋肉モリモリマッチョウーマンが笑顔で言うと、全員がそちらを見て首を横に振る。


「遠慮しておきます」

「同じく」

「あらら。甲我様でしたら、この私の攻撃を全て受け止められるというのに」

「それが出来ている時点で、まだ俺達には無理ですよ。なぁ?」

「そうね。鍛え直すからって、流石に段階はほしいわ」


            ▼


「おや? まだ二時間目が始まる前だけど、致してないのかい?」

「総門先生、そういうのやめてくれません? 普通だったら女性からセクハラと言われてもおかしくないですからね? いや、俺からも言うから変わらないか」

「断られたんですのよ、総門お兄様」


 甲我が椅子に座らせて離れる。まだ放したくないと服を掴むが、ゆっくりとその手を外させて自分の席に座る。


「そっちのご家庭は色々と求めすぎなんですよ。俺だってちゃんとそういう事を考えていますから」

「ほう? 結婚を考えていると?」

「……そうなる可能性は否定出来ないのでって言わせもらいますよ。それで……えっと、次は数学か。俺数学苦手なんだよなぁ。亜寿沙は得意だったよな?」

「どれでもかかってござれ、ですわ!!」


 凄い自信の亜寿沙に、総門は嬉しそうに笑みになる。こうも楽しそうにしている妹を見ると、去年までの妹の笑顔の無さは、兄妹として無視できなかった。ただどうする事も出来なかったのも事実だ。だけど、それを壊してくれた甲我には感謝している。

 止めるために招集されたが正直行きたくはなかった。ただ、旧当主がそれを良しとしなかったばかりに集まるしかなかった。ただ予想外な事に、白濱 甲我という人間の強さが、人間離れをしていたとしか言いようがない動きをしていた。

 暫くしてから、この白濱 甲我に対して裏の者達が動き出そうとしていたのだが――その前に、違う組織から襲撃に合い、完全に壊された。それが白濱 甲我と関係があったのかなかったのか分からないが、少なくとも、妹である亜寿沙が今現在、楽しそうにしているのが一番良かった。いい結果になったと考える。


 二時間目が始まるチャイムが鳴った。総門は考え事を切り上げて、ビシッとする。


「それじゃ次の数学を始めようか。甲我君は、苦手科目をなんとかするように」

「は~~い。くっそぉ~~。なんちゅう学校に来ちまったんだが」

「それが運命ですわよ? 甲我。”命”を”運”んでくると書いて”運命”」

「それ爆弾使いの発言だからな? 殺そうとするな」



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