序章
初めまして。私の名前は”龍宮寺 亜寿沙”。高校二年生よ。今は送迎用の車に乗って、私が通っている白鳥高等学校へ向かう途中。運転手のであり私の執事である”中村”が私ともう一名を乗せて学校へと向かっている途中なの。
この金髪にクルックルの縦ロール、美少女と言ってもいい顔付きに、高校生とは思えないナイスボディーの肉体。もはや誘拐されて如何わしい事をされてもおかしくはない存在ね。それを防いでくれるのが龍宮寺一族に仕える者達なのだけれども。
「亜寿沙ぁ、俺とお前が一緒に乗ってるとマジで誤解されるから」
「あらいいじゃない、誤解させて。この私は、甲我、貴方の婚約者!! なんだから、堂々としてなさい?」
「なんで婚約者になっているんだ? いいか、俺とお前は婚約者じゃない、パートナーだ。それが俺個人として龍宮寺に喧嘩を売った時に言われた内容の一部だ。そこを忘れるな」
まぁまぁ、私との契約が罪だなんて、なんて可愛い遠回りの言葉。真っ直ぐ、龍宮寺一族から私を貰い受ける!! と素直に言えばいいのに。まぁそこが可愛い所なんですけど。
この隣にいるのは、”白濱 甲我”。ワイシャツをズボンから出して上のボタンを三つ外している。顔はかっこいい系ではあるが髪型は普通。同じ高校に通う私の婚約者であり大事なパートナー。しかもこの甲我には、既に私のこのナイスボディーに触れられ済み。もうこれ、実質夫婦では?
「甲我」
「なんでしょうか、お嬢様」
「妻と呼んでもいいのよ? それより甲我」
「……なんだよ」
「私、今唐突に考えたんだけど聞いてもらえるかしら?」
「唐突に考えた事を何も考えずに言おうとする所とかこえぇんだけど……なんだよ」
「貴方、子供は何人欲しいのかしら?」
「本当に唐突だな。頭の中で勝手に結婚させてたパターンだな?」
まぁ! そこまで思考が読み取られるなんて吃驚を通り越して吃驚だわ! これもう実質、お腹の子供が蹴ったのと一緒では? おっと、このままじゃ本来話したい事が話せないわ。
「まぁ今のはおいおい本当にするとして」
「本当って……脈絡を出せ」
「さっき甲我が言ったように、龍宮寺に喧嘩を売った事に対しての科せられた罰です。ただこれは、龍宮寺が私の成長を促しているとも見て取れます。そうは思いませんか?」
「……まぁ確かに? お前との稽古は楽しくねぇわけじゃねぇし、去年の大会はともかく今年の大会には出場出来るっつぅから、お前と組んでるだけっての忘れるな、いやマジで」
ほら、可愛い。二度も念入りに言ってくるあたり、強調したんでしょうね。分かってます分かってますから。
「なんで笑顔で、分かってます顔、してるんだ? ったく。これだったら去年にちゃんとパートナー試験しておけば良かったわ……」
「いいじゃないですか、私だってパートナー試験はしてないんですから」
「それはお前が龍宮寺で、白鳥高等学校の理事長の孫だからだろ? あの爺さん、孫に危なっかしい事はさせられないんじゃ~~って泣いて自分の息子に突っかかってたじゃねぇか。滅茶苦茶大事にされてるんだから、あんまりさぁ、こう、な? 迷惑かけるなよ?」
「あらお優しい」
「お爺さんには優しくしろよって父さん母さんに言われてるんだよ。実際にうちの爺さん達は、俺以上にアクティブに動くからよ、優しくしようとすると怒られるんだよなぁ。だから他のお爺さんには優しくしているわけなんだが……」
そう! うちのお爺様からも厚い信用を得ているんですのよ! 孫を宜しく頼むって去年言ってくれましたから。
甲我とは去年から知り合いましたが、最初はそこまで仲良くは無かったんですのよ? けど、ある事が切っ掛けでお互いの認識が一致しまして、本家――つまりは私の我が家なんですけど、そこに乗り込みに行きましたのよ? そこで父親と面通しをして、とある契約――つまり私のパートナーとなって、とある事をやって見せろと約束をしましたの。
真直ぐに答えた彼はとてもカッコ良かったんですけど、私だけの、私だけの! 思い出にとって起きますの。
「今日も楽しくお喋りをなさっているところ申し訳ありませんが、そろそろ学校にお着きになりますよ? お嬢様」
「あら、そうなの? 分かりましたわ。甲我、降りる準備を」
「中村さん、いつもすみません……」
「はっはっは、大丈夫ですよ。いつも元気なお嬢様を見れるだけでも、私は嬉しいですから」
この中村という執事は、私が小さい頃から居てくれる大事な執事。といっても、年齢は四十代。小さい頃から守ってくれるボディーガードでもあります。これでも武術を学んでいるんですのよ? 私も龍宮寺一族から代々伝わる武術がありますが、中村達が習う武術とは全然違います。
「元気すぎるってのが問題なのでは? だって去年、滅茶苦茶大人しかったですよね? 俺の記憶、昔の亜寿沙って滅茶苦茶大人しいというか、固い? っていうか……」
「それは、甲我様のおかげで柔かくなったということで」
「は、はぁ……」
さて、今日の通学デートもこれで終わりですので、いったんお開きに。
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白鳥高等学校。ここはお金持ちの子や成績が優秀な子達が来る学校として有名であり、一般としてここに入るには有名大学の入試と同じくらいの成績を求められる、それほどの大きな壁がある学校。
ただ、家柄で入ってくる子もいる為、成績優秀な子もいればそうではない子もおり、普通の学校生活を送る事は可能ではある。
そんな学校に通う龍宮寺 亜寿沙は、成績は優秀で、全てのテストを行えば毎回一位をとる程の優秀過ぎる事を成してきた。そんな彼女も、男性には当然モテるわけだが全て断り、力尽くで来ようとすると体術による直接的な対応と、学校側からの処分によって守られてきた。
そんな学校には、一つだけ他の学校とは違い、パートナー制度というのが設けられている。
パートナー制度とは、基本的には同性でパートナーとなり、お互いに支え合って学校を卒業する事が命じられている。これは一人ぼっちを作らない為――ではなく、苦手科目があったり一人で抱えてしまわず周りに相談できるようにするために作り出した制度であり、生徒が生徒を守る為に作られた。
勿論欠点もあるが、それを乗り越えられるかも試されているところが大きい。
龍宮寺 亜寿沙はこのパートナー制度を一年時の時には受けなかった。理由としては学校の理事長であり亜寿沙のお爺さんが許さなかったのが一番のポイントであった。それが狙い目として彼女に色々とありそうになったのだが、同じようにパートナー制度を受けなかった生徒が一人。それが、白濱 甲我であり、一種の問題児の少年である。
とある事件を亜寿沙・甲我が起こしたことにより、一年時は一時的な仮異性パートナーとして活動していたが、正式ではなかった。二年時にしてパートナー制度によって現在、パートナーとして活動している。登校するのも一緒なのは、亜寿沙の希望ではあり、無視すればいい所を律儀に守っているのが甲我である。
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「龍宮寺さん、おはようございます!」
「白濱様~~! おはよ~ございま~す!」
「っよ! 甲我! 今日も夫婦登校か? 羨ましいなぁ~~。あんまり敵作るなよぉ~~」
「亜寿沙お姉さま~~。今日もお奇麗ですわ~~!」
亜寿沙と甲我の二人が、校門から学校へ入り声を掛けられるのは、簡単な挨拶から茶化しの言葉が入り混じっている。その言葉にそれぞれ答えていくのだが、亜寿沙は喜びながら、甲我は朝から疲れたようなで、色々と誤解を生ませている。
「甲我、今日も疲れてるな」
「だな。多分、龍宮寺さん絡みだろう」
「拙者が思うに、龍宮寺さんからの猛烈アタックに参っているみえるでふ」
「なるほどなぁ。確かに押しが強そうだもんな」
という男子生徒の言葉。
「今日も龍宮寺先輩が生き生きしていて、目の保養になりますねぇ」
「毎日とても楽しそうで。一時期白濱先輩がお休みの時には元気がありませんでしたからね」
「あの姿を見るくらいなら、白濱先輩が疲れていても問題はないですね」
「ですです!」
という女子生徒の言葉。
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「っていうのがさっきまで言われてたんだけどよ~~。実際、俺が亜寿沙の家に泊まりに行ってるし、誤解でもなんでもない事だってあるもんな」
「確かにそうですわね。一緒にお風呂も入りますし、一緒にお布団で入りますものね」
「布団はお前から入ってきているんだけどな」
二人がいる場所は、龍宮寺一族、もしくは龍宮寺関連だけが入れる部屋であり、それ以外は入れない教室……というよりかは、二度目だが部屋である。ここで二人は勉強をしており、運動だけは他の生徒と混ざって授業を行っている。龍宮寺だけが特別扱いされているのは当然の様な学校ではあるが、それがしきたりみたいなところもあるので、則っているに過ぎない。
「早く先生来ないかなぁ。分からない所があるから教えてほしいんだよ」
「あら? 先生じゃなくても私が教えますわよ? 保健体育? 保健体育? 保健体育?」
「なんで三回も言ったんだよこえぇよ……。お前の扱い方を知りたいだけだ」
「まぁ失礼な。ただ一言、私を押し倒して、”お前を俺の物にしたい”と言ってくだされたいいのに」
「……これから来る先生に誤解が出るだろ。あの先生、俺と亜寿沙の結婚に大賛成じゃん」
そんな事を言っていると、二人のいる部屋に一人の男性が入ってくる。
銀髪の長髪にイケメンと言える顔付き、銀色のスーツを着ている男性。
「お待たせ、亜寿沙、甲我」
「総門先生、やっと来ましたか。もうちょっとで一時間目始まりますよ。というか、もう少しで俺、亜寿沙の妄想アタックを受けていましたよ」
「おや? それだったら、もう少し遅れてきた方がよかったかもね」
「総門お兄様、大丈夫です。私と甲我が結婚するのはもう決まっている事ですから」
「そうか。それを聞けて安心したよ。それじゃ授業の準備をするから、ちょっとだけ待っててね」
こうして、二人の高校生活の変わった一日が始まる。




