だから私は冬の図書館に行く。
ひとしりき降った日差しの雨は、ちょうどさっき雲で顔を隠したみたい。窓から外を見ると、日の光でなんとか寒さに耐えてた植物たちが、心做しか少ししぼんだような気がする。時刻は15:36。天気は曇り。マフラーと手袋、そして手提げバッグを手にして私は向かう。
私はこの寒さの中、歩いて図書館に行くんだ。
空に日は見えないけど、雲が光を反射してオレンジっぽい色になってる。それと対比するように、陽が当たってない場所は薄めた紫や青っぽい色になってる。
これを見るのが、私が図書館まで"歩いて"行く理由。
コンクリートで出来た大きな図書館のエントランスホールは、私の足音を大きくしている。
図書室へ向かう途中で巻いていたマフラーと手袋をバッグに入れる。
自動ドアが静かに音を立てながら開くと、見慣れた司書がこちらに会釈したから、私は何となくで会釈を返してみた。
図書館へ来たはいいが、私は本が苦手だ。あんなに文字だらけで、難しい言葉をこれでもかと使うような本は見ているだけで頭痛がしてくる。
それでも私が図書館に来る理由は、本が好きだからだ。何を言ってるか分からないと思う。私が言いたいのは、好きなのは本の内容ではなくて、本という物体が好きなのだ。それに、本が沢山あるこの落ち着いたような暖かい空間が好き。学校が終わって放課になると、私は週に3回くらい図書室へ向かう。もちろん、本を読むためではなくその空間にいることを目的として。そのくらい私は本が大量にある空間が好きなのだ。
まあわざわざ図書館に来て何も読まず借りずだったら勿体ないような気もしてくるから、難しくなさそうな本を探す。
ミッケを見つけた。6年ほど前までは小学4年生だったことを何故か思い出した。
私は今高校1年生だ。高校生がミッケを読むなんて、私がどれほど本が苦手かわかるでしょ。
ページを開くと、ギラギラした指輪みたいなのがそこらに散らばってる。私は懐かしさか少しニヤけてしまった。『十字架のアクセサリーをさがせ』か。
気づけば外は少しだけ暗くなっていた。満足した私はパタンと本を閉じ、ミッケを棚に戻した。割と楽しめたので、2冊くらい借りていこうと思い、適当に2冊選んでカウンターへ持って行った。
「いつもありがとうございます。」
この人の声を聞くのは、割と初めてかもしれない。声が若いように聞こえたから少し顔を上げてみる。意識してなかったが、この人はすごく若い。多分大学生くらいだと思う。
「い、いえいえ。」
図書館ということと、なんて返せばいいのかわからないということもあり、声は小さかったと思う。
手提げバッグからマフラーと手袋を出して、その中に2冊のミッケを入れる。家を出る時は、ミッケなんて借りてくると思わなかったからバッグは少し小さいものを持ってきてしまった。なんとか入れたが、これじゃ何が入ってるのか外から丸わかりだ。こんな大の高校生がミッケを借りてるなんて思われたら恥ずかしいから、私は抱えるようにバッグを持った。それも、腕を前にしてなるべくバッグを見せないように。
帰り道の空は、行く時とは違って太陽が顔を出してた。道端の植物を見てみると、陽が当たってよく見えるせいか、みどりみどりしてて元気そうだった。
夏では味わえないこの空気、この空模様。私は冬が好き。だから私は冬の図書館に行く。少し気分が上がったのがわかった。
「もう少しゆっくり歩いて帰ろうかな。」
時刻は16:24。天気は晴れ。マフラーと手袋、そして2冊のミッケが入った手提げバッグと一緒に、私は向かう。




