後方では…………
ショーン達は、何とか安全区域まで逃げてきていたが、未だに、ゾンビとの戦闘は続いている。
「アレ? そう言えば、リオンとマーリーン達は?」
「ショーン、あそこだにゃっ!」
「弾薬を補給したら、すぐに戻るぞっ!」
「ゴクゴク…………ここで、敵を食い止めなければ」
冒険者や自警団員たちを、ショーンは見ていたが、二人の姿が見えない事に気がつく。
そんな彼に、ミーは指差しながら、彼等が立っている居場所を教えた。
リオンは、左側の建物手前にある木箱に置かれた厚紙箱から、拳銃弾を取り出している。
マーリーンは、缶に葡萄が描かれている、エナジードリンクを飲んで、魔力を回復していた。
「お前ら、どうするんだ? てか、いつの間に逃げてきてた?」
「さっき、君が呟いている時だっ! 俺たちが生き残りの最後だったっ! それより、やる事は決まってるっ! 敵を食い止めるだけだっ!」
「ここも、食い破られれば、終わりだからね」
ショーンは、二人を見つけると、すぐに近づいていって、話しかけた。
それに、リオンとマーリーン達は、ここに残り、ゾンビ達を足留めする積もりだった。
「分かった? しかし、俺達は…………」
二人から、この場で戦い続ける覚悟を聞いて、ショーンは自分たちも残ろうかと考える。
「おいっ! 誰か、こっちに来てくれっ! 防衛線が突破されそうなんだ」
その時、カエル人間が東側から現れると、青ざめた顔で叫び、援軍を求めた。
「なにっ! リオン、マーリーンッ! ここは任せたっ! みんな、行くぞっ!」
「ああ、そっちは頼んだぞ」
「向こうでの民間人の救助、お願いするわ」
「ええ、行くしかないわっ! 今、飲むしか無いわっ!」
「武器の補給くらいは、させてくれ」
援軍要請を聞いて、再び戦闘に戻るべく、ショーンは、剣と盾を強く握りしめる。
リオンとマーリーン達は、木箱が積まれた、バリケードの方へと走っていく。
リンゴとミカンのジュース缶を、一気に飲み干して、魔力補助した、リズは素早く駆けだした。
スバスは、樽の上に、置いてある子樽型の爆弾や火炎瓶を幾つか拾うと、直ぐに東側へと向かう。
「こっちだ、はやく来てくれっ!」
カエル人間の誘導で、ショーン達は路上を進み、木々が生えている公園に出た。
「うわああんっ! 痛いよ~~!」
「済まん、こうするしかないんだっ!」
「いや、止めてぇっ!?」
「落ち着いて、下さいっ!」
公園では、重傷者や避難民が集められており、そこは地獄のような光景だった。
強酸が頭にかかり、泣きわめく少年を、ゾンビの警察官は、ベレッタで眉間を撃ち抜く。
その母親である白人女性は、我が子を守るため、銃殺を止めようと走り出した。
しかし、時すでに遅く、さらに彼女は兵士により、後ろから羽交い締めにされる。
「くぅぅ…………な、ななんで、こんな? こんなのって、あり得ないわ」
「リズ、見るなっ!」
子供や老人に優しい、リズに取って、この場所はゾンビと戦うより辛く、気分を悪くさせる。
ショーンは、彼女を気づかい、この悲惨な現場から早く離れようとした。
「グハッ!? ゲホ、ゲホ」
「カラチスッ!? どうした、何があったんだっ!」
「カラチス…………嘘、どうしたのっ?」
「いったい、何で怪我しているんだっ! 誰か、負傷者を治せる奴は、居ないのか?」
だが、そこには、公園のベンチに銃弾を何発も、下顎に撃たれて、凭れているカラチスが居た。
彼が、苦し気に血を吐く姿を見た、ショーンは直ぐに駆け寄り、両肩を掴む。
リズも、即座に近づき、治療できる手段は無いかと、包帯や回復アイテムを探す。
怪我の深刻さに驚き、スバスは目を見開いて、医者やヒーラー達を探す。
「ショーン、リズ、スバス? 俺は下手こいたんだ、ガキ達を守ろうとしてっ!」
「カラチス、無理はするなっ!?」
カラチスは、自らが負傷した理由を話そうとしたが、それを止めようと、ショーンは叫ぶ。
「いいんだ、ショーン、俺は負傷が酷いっ! 海トカゲ団のクズに撃たれたんだ…………へへ? お前は、リズと一発やれよ? 俺も女とヤリ…………ぐ」
それだけ言うと、カラチスの頭である蕾は、ベンチから転げ落ちた。
「カラチスッ!! カラチスッ!! アイツらっ! 絶対に緩さねえっ!」
額の青筋から、血を吹き出させようなほど、ショーンは怒りに震えながら、爆走しだした。
「ショーン、待ってってばっ!?」
「一人で、死にに行くなっ! 俺だって、復讐に燃えてるんだっ!」
一人で、先走るショーンの後を追って、リズはマジックロッドを抱えながら着いていく。
もちろん、スバスも仲間を殺られて、ただ黙っていられる男ではない。
「ショーンの仲間だったのか…………なら、敵討ちに加勢してやる」
「私は、コイツの事を知らないけれど、良い奴だってのは分かった」
「にゃあっ! 悲しいけれど、今は戦うしか道はないにゃあっ!」
ワシントンは、東側へと向かう、三人の後を追って、一気に駆け出した。
フリンカとミー達も、これ以上の被害を出さないために、二人とも敵を殲滅しに行った。
「お前ら、着いてこいっ! んんっ!」
「はあ、はあ、うぐぅぅ」
派手な看板が並ぶ、アジア人街を走るショーンの前に、血塗れになった、ナカタニが現れた。
「ナカタニさんっ! どうしてっ!?」
「ショー…………私は、出前を届けようとし? そこで、噛まれ…………はや、首を切ってく」
ショーンの声を聞いて、ナカタニは地面に倒れそうに成りながらも、何とか立ったまま答える。
「またかっ! ナカタニさん、俺が残って居ればっ! 済みません」
「謝らなく…………て、いい? シューさ、よれしき、ウゲゴアッ!?」
「ショーン、もう彼はゾンビに転化しているわ」
「ダメだ、これは俺たちまで危なくなるっ! 鉄球で、頭を叩き割るしかない」
咄嗟に動き、ショーンは肩を貸して、ナカタニを支えたが、彼のゾンビ化が始まりだした。
リズは不安気な顔で、マジックロッドを構え、
スバスも、ウニ鉄球を無げだそうとした。
「いや、俺がやる」
「ウゴガアアアアーー」
ショーンは、ナカタニを地面に押し倒すと、額にショートソードを、思いっきり差し込んだ。
「はあ、はあ、はあ~~? なんで、カラチスやアンタが死ぬんだよっ!」
「ショーン…………」
「確りしなっ! 黙っていると、まだまだ犠牲者は増えるよっ!!」
「ナカタニさんの仇を取りに行くんだにゃあっ!」
怒りの余り、顔を真っ赤にしながら、膝に両手を突いて、ショーンは怒鳴り散らす。
リズは、彼にかけるべき言葉が分からず、一言だけ呟き、それから黙ってしまう。
フリンカは、ポイズンソードを構えながら、勢いを下げず、東側に進んでいく。
ミーも、忍者のように素早く、彼女を追いながら、風打棍を抱えながら走る。
「そうだな、そうだっ! 今度は、奴らを殲滅しに行かないとっ!?」
「その意気だぜっ! 俺も、ナイフしかないが、復讐には付き合う」
「取り敢えず、東側に行きましょうっ! 銃声や魔法の音がするわっ!」
ショーンは、拳を強く握りしめると、ショートソードを、ナカタニの遺体から抜きとる。
そして、慌てて駆け出した、彼に続いて、ワシントンとリズ達も武器を手に動き出す。
彼等が向かわんとする、東側からは、連続で木霊する機銃掃射の音が鳴り響いている。
また、雷撃魔法の稲妻が光り、火炎魔法による煙が、ここからでも見えていた。
「確かに、銃声が成りやまない? 海トカゲ団は、ここまで進撃しているのか? かなり、不味い状況だっ! だが、二人の仇は討たせて貰うぜっ!」
「ここから、先は戦場だっ! ゾンビとは、また違った脅威が来やがるぞっ! 火炎瓶を投げて、やらないとな」
高いビルの間を走る、ショーンは聞こえてくる戦闘音に、敵が近い事が分かった。
補充してきた、投擲武器を片手に、スバスは遠くに見える、キノコ雲や落雷を睨んだ。




