沿岸警備隊の事務所で
ショーンとマルルン達が率いるチームは、裏口から沿岸警備隊の事務所に入ってきた。
すると、いきなり沿岸警備隊員の面々が、ホールで彼等を出迎えた。
「待っていたぞ、君たちに新しい頼み事があるんだ」
「次は、アジア人街に行って欲しいのよ」
「いや、少しは休ませろよ? てかな、こっちは報酬なしで戦ってるんだからな」
「はあーー! そうだぜ、昨日は嵐のお陰で、少しは休めたんだけどな」
早速だが、エドガーとカルメン達は、現れた面々に頼み事をしてした。
ショーンは、ヤレヤレと両手を振りながら悪態を吐き、マルルンも溜め息を吐きながら呟く。
「そうだったな? だが、しかし?」
「アジア人街は、ゾンビが自警団に一掃されている安全区域よ? 貴方たちは、安全な場所に行きたいだろうと思ったから伝えたんだけど」
「比較的に初期の段階から、バリケードの構築とゾンビ達の一掃に成功したらしい」
「そこまでの道のりは、危険かも知れないがな」
エドガーが喋ろうとすると、カルメンが行き先の状況を丁寧に語る。
リザードマンである、クレンショーは街の様子を話ながら両腕を組む。
金髪白人のダビドも、一応は気をつけるようにと、ショーン達を気遣う。
「アジア人街は、安全区域だが、何でも君達の知り合いが存在するらしくてな? 今まで働いてくれた礼に、この情報を伝えたんだが?」
「だから、貴方たちに行くのを進めたのよ? ここに留まるのも、一つの選択肢だけど? 見ての通り、かなり安全に成ってきたし」
「まあ、そう言う事なら行くよっ! どの道、愚痴は言っても、冒険者として仕事を頼まれたら断れないからな」
「私達は、安全な場所に行きたかったし、アジア人街からなら出島から出られるかも知れないからね」
エドガーとカルメン達は、行く必要がある理由を話して、全員を納得させる。
その話を聞いて、ショーンとリズ達は、早速行動に移ろうとした。
「で? その知り合いってのは、誰なんだ?」
「ルドマンと言ったかな? あと、シューと言う人物だった」
「ショーン達の事を話したら、二人とも知り合いだと驚いてたな? 早く会いたいと言ってたぞ」
「シューさんは、私と遠い親戚になるんだにゃっ!! 今すぐ行かなきゃにゃっ!!」
ショーンは行く前に、誰が自分たちを呼んでいるのか質問する事を忘れていた。
そして、振り向いた彼が名前を聞くと、クレンショーが答えてくれた。
ダビドは、背中の白シャツに警防を突っ込んで、軽い場所を掻きながら話す。
急いで会いに行こうと、すばやく駆け出したまま、ミーは裏口から飛び出していく。
「あっ? ミー、待てっ! 取り敢えず、装甲トラックだけは貰っていくぞ」
「分かった、それは構わない」
「元々、私達の物じゃないからね」
急いで、ショーンも出ていこうとして、エドガーとカルメン達に、車両を貰う許可を求めた。
「俺たちも、ショーンに着いていくからな? 安全な場所なら、楽も出来るだろうし、スパタを振るう必要は無くなるからな」
「そうですね、私達は安全区域に着いたら、ずっと、救助隊が到着するのを大人しく待ちましょう? それでは、さようなら」
「アジア人街か? 俺の知り合いも生きてると良いんだがな~~」
「戦力が減るのは困るが、行きたいと言うなら止めはしない」
マルルンは、ショーン達を追いながら出ていく前に、別れを告げた。
ジャーラも、両手を上げながら背筋を伸ばした後、頭を軽く下げたから歩いていく。
クロスボウの下部に装着している、モーターを弄りながら、テアンは呟いた。
両腕を組みながら、抜けていく彼等を眺めつつ、エドガーは難しそうな表情を浮かべた。
「みんなっ! 早くするにゃっ!」
「焦るなよ、ミー? そんじゃ、そう言う事だから、今まで世話に成ったな」
「いや、こちらこそ、かなり助けられた」
「貴方たちの無事を祈っているわ」
「また、いつか会おう」
「それまで、達者でな」
入口まで戻ってきた、ミーは仲間たちを手招きして、出発を急がせる。
ショーンは、彼女を注意しながら、沿岸警備隊員たちに別れを告げて、外へと走っていく。
それに対して、エドガーとカルメン達は、去り行く彼等に、笑顔で手を振った。
もちろん、クレンショーとダビド達も、同じように快く見送った。
「にゃっ! にゃっ! 出発だにゃあっ! はやく行くにゃあっ!」
「よっと? ミー、まだ他の連中が来てないぞ」
「待ってくれ、急がせるなよっ! こっちは獣人族と違って、素早く動けないんだからな? ただの医者なんだし」
「私たちを、急かさないで下さい…………はぁ、私もただの女武者なんですから」
装甲トラックの助手席に乗り込んだ、ミーは元気よく仲間たちを呼ぶ。
しかし、運転席に飛び乗ってから、ショーンは彼女を注意しながら、シートベルトを閉めた。
そこに、ゴードンが小走りで来ると、彼は後部ドアを開いて、内部に入ってゆく。
サヤも、中に入ると内側から見て、左側の座席に座り、小さな溜め息を吐いた。
「とにかく、出してくれ? 全員が乗ったからな? さて、狩猟弓を射たなくて済むといいが」
「そうならないと、願ってるんだけど、これが叶わないのさ? だから、マチェットの刃を手入れする必要があるんだわ」
「じゃ、出すぞ? いいな?」
「にゃあっ! 出発進行だにゃっ!」
ワシントンとカーニャ達は、座席で語り合いながら、それぞれの武器を眺める。
二人の声を後ろから聞いて、ショーンは装甲トラックを走らせ始め、ミーは子供みたいに騒ぐ。
こうして、彼等は、以前ファットゲローと戦った交差点まで向かった。
現地では、冒険者やBB団員たちが、家具や木箱で、バリケードを築いていた。
もちろん、スライド式の金網ゲートも、四方に設置されている。
「おい、アンタら? 何処に行くんだ?」
「アジア人街だよ? 連絡が無かったか?」
ここで、アラブ人の冒険者が、装甲トラックに近寄って声をかけてきた。
彼に対して、ショーンは窓を下げながら、顔を出して、行き先を告げる。
「ああ、そうか? なら、話は聞いている? ゲートを開けろ」
「ありがとよ」
アラブ人の冒険者が、ゲートを開いて、通れるようにすると、ショーンは装甲トラックを走らせる。
「んじゃ、行くぜ」
「にゃあっ! また、出発だにゃっ!」
ショーンは、装甲トラックの運転席から、エンジンが始動する音に耳を傾けた。
ミーも、前にファットゲローと戦った、トラックを元気よく指差した。
「死体が黒焦げだな? 燃やされたのか? 腐敗臭から感染するかも知れないからな」
「この間の戦火の爪痕にゃ…………もう暫くは、戦いがないと良いにゃ」
ショーンは、ハンドルを握りしながら、ファットゲローと激しく戦っていた時の記憶が甦った。
ミーも、強敵だった奴の事を思い出しながら、中央に停車しているトラックを眺める。
「まあ、もう戦いには成らんだろう? あったとしても、ザコのゾンビとか? チンピラ達と遭遇するくらいだろうな」
「だと良いけどにゃ? それより、炒飯と水餃子っ! それに、ラーメンが食べたいにゃあ~~? 速くつかないかにゃあ~~!」
トラックの右側を通り過ぎて、ショーンは前方に目を凝らしながら、呑気に呟く。
ミーは、安全区域であるアジア人街で、食べ歩きしたいと言って、笑みを浮かべる。
そんな二人を乗せた、装甲トラックは通りに散乱する様々な車両を、うまく避けながら走っていく。
最初は、ゾンビ達が見えていたが、進むに従って、数が段々と減っていった。
こうして、彼等は大した障壁もなく、目的地へと無事に進む事ができた。




