彼女は感染していた?
木箱に背中を預けながら、ショーンとミー達は、体を休め続けていた。
「うあ、寝ていたか? ミー、起きろっ!」
「ニャア? ニャアアアアァァァァーー!!」
いつの間にか、眠っていた、ショーンだったが、目を覚ますと、ミーが感染者に変貌していた。
「うわあっ!!」
「きゃあっ! どうしたんだい?」
ショーンは再び目を覚ますと、そこは装甲トラックの中であり、フリンカに声を掛けられた。
「ここは? はっ! そうか、さっき、チンピラのバリケードを通って、十字路を曲がった先で、トラックに乗ったんだよな?」
「そうよ? さっきの戦闘で減ったのか知らないけど、ゾンビの群れも減ってたし、遠くに居たから、無視して乗ってきたんじゃないかい?」
「ゾンビの存在する道路の反対側にあった、酒樽を大量に積んであった馬車だが? アレを、トラックで牽引して、道を塞いだだろう? その時、俺は弓を構えて、警戒してたが」
「それを下ろして、馬車の下から、ゾンビが来れなくなる作業もしたけど、その後、ショーンは装甲トラックの中で、眠ってしまったんだぞ? 俺も剣を振るいすぎて、疲れてて、まったく動けなかったから、見張りだけはしてたけどな…………」
眠っていて、目が覚めたばかりのショーンは、顔から大量に汗を滴しながら呟く。
その真向かいでは、座席に座りながら、フリンカが声を掛けてきた。
ワシントンも気になったのか、彼の様子を心配して、話しかけてきた。
同じく、マルルンも疲れたような顔をしながら、さっきの作業を語る。
「ショーン、連戦が続いてたからね? 貴方は疲れているのよ? チンピラ達のバリケードを塞いだら、もう今日はゴルバの武器屋で休みましょう」
「それがいい、道路を塞ぐのは、我々みたいな力のある者に任せて、君は休むといい? 医者からの忠告だ」
「ああ、みんなの意見は分かった…………運転しているのはーー? カーニャとスバス達か?」
リズの提案を聞いて、ゴードンは顔色が悪いショーンに、ドクター・ストップをかけた。
「そんな事を言ってる間に着いたぞっ! さあ、俺はクロスボウで見張りをしているから、皆はバリケード塞いでくれ」
「私も、薙刀で敵を警戒しています」
「おっし、やるとするか、この緑の豪腕の見せ所だっ!!」
「爆弾や鉄球を投げる腕力は、伊達じゃないぜ」
「ならば、私も木箱を積み上げるとしますか?」
「にゃあ~~私も、手伝うにゃっ! 棚を退かして、っと…………これだけ、やれば普通のゾンビは入って来れないにゃっ!」
トラックが停車すると、テアンが後部ドアを開いて、特殊部隊員のように足音を立てずに降車する。
一方、サヤも薙刀を抱えながら、いつでもゾンビを迎え打てるように身構える。
袖を捲り上げた、ゴードンは近くにあった、茶色いタンスを持ち上げて、左端の建物へと運ぶ。
スバスは、空のドラム缶を転がして、路上に何個も置いて、二段に積み重ねていく。
その上と後ろに、フリンカは木箱を置いて、バリケードを強化する。
ミーは、荷車の後部を立てて、そこに古タイヤを何個も積み上げていく。
「おお、塞がれたな? それで、またゴルバの店まで行くんだな」
「もう、ゾンビやチンピラ達も、存在しないから安心できるわよ」
こうして、一機に道を塞ぐ、バリケードが作られると、ショーンは仲間たちが車両に乗るのを待つ。
リズは、荷台の中から、マジックロッドを構えていたが、作業が終わった事で座席に座る。
こうして、全員を乗せた、サーバル装甲トラックは勢いを上げて、道路を走っていく。
「着いたよ? て、言うか、お~~い? 食糧を持ってきたよっ!」
「頼まれていた品だ、ここの道を開けてくれないか?」
「おっ? ようやく、食糧が届いたのか? 分かった、仲間を呼んでくるっ! 少し待っていろ」
「お前ら、よく無事に帰ってきたな…………」
運転していた、カーニャが装甲トラックを停車させると、窓を開けてから見張りに声をかけた。
反対側から、スバスも頭を出して、邪魔な木箱の山を退かしてくれと、彼等に頼む。
白いローブを揺らしながら、金髪ロングヘアの男性エルフは、店へと走ってゆく。
ショーン達を見て、オレンジ色のアリ人間は、ようやく飯が食えると思って呟いた。
「ふぁ~~あ? それより、木箱を退かしてくれっ! よっと」
「この木箱があると、通れないからねぇ?」
「俺は、こっちから横に退かすからなっ! おりゃっ! こんな物は緑の腕に取っては軽いもんだぜ」
「みんな、腹を空かしているだろうし、はやく動かさないなきゃね」
ショーンは、木箱の山に飛び乗ると、地面に着地して、反対側から退かしていく。
フリンカも同じように素早く、バリケードを飛び越えると、邪魔な部分を取り除き始めた。
正面側から、ゴードンはVAB装甲トラックが通れるように、作業を素早く行う。
武器屋の避難民に、食糧を届けるべく、リズは忙しいそうに動く。
「お前ら、よくやってくれたなっ! 感謝するっ! 怒鳴って悪かった」
「それはいい…………しかし、ゴルバ、もう木箱を置く必要はない? ここに来るまで、チンピラの拠点を潰したり、バリケードを作ってきた」
ゴルバが、部下である黒アリ人間たちを引き連れて、ショーンの前に現れた。
「だから、ここの木箱は不要だ? ジャンピンガー、ウォーリアー、フレッシャー以外の通常ゾンビは入れないからな」
「そうか、分かった? しかし、チンピラの拠点を潰すとは大変だったなっ! それより食糧を運んでくれっ! こっちには腹を空かせた避難民で、溢れかえってるんだからな」
ショーンの報告を聞いて、ゴルバは凄く機嫌が良さそうな声で話す。
「だとよ? もう、通れるように成ったし、トラックを店の前まで、動かしてくれ」
「あいよ、店の近くに適当に停めておくから、後は頼んだよっ!」
ショーンの言葉を聞いて、カーニャは手を振ると、装甲トラックを運転していく。
そして、店の手前で、後部を向けながら停車すると、直ぐに避難民が出てきた。
「やっと来たわね? 赤ん坊に、ミルクを与えられるわ、はぁ~~」
「よかった、よかった、これで暫くは安心じゃなあ」
「ミルクにゃ? たしか、あったようにゃ? あ、これだにゃ?」
「押さないでくれ、食い物や飲み物は、たくさん有るからなっ! あ、ターバンがっ!」
黒ギャル風のサキュバスは、赤ん坊を抱きながら、老婆とともに、装甲トラックに歩いてきた。
集まってくる群衆に、ミーとスバス達は、混乱を押さえつつ、食糧を渡そうとする。
「ショーン、子供の食糧があって、助かったわね」
「だな…………これで、ここの連中も、一安心だろう」
リズとショーン達は、食糧を受けとる人々の安堵した顔を見ながら、一仕事を終えたと思う。
アリ人間やトロール等と言った様々な人々が、木箱や段ボール箱を店内に運んでゆく。
こうして、武器屋への補給は終わり、日が暮れてしまい、彼等も夜食を食べる時間になった。
「はあ? ここでも、床に寝るしかないのかよ? しかも気持ち悪い、うぇ~~飲みすぎたわ」
「ショーン、大丈夫かしら?」
頬を赤く染めながら、フラフラと店内を歩いていた、ショーンは腹を酒で満たし過ぎていた。
そんな苦しむ彼の背後から、リズが現れて、心配そうに声をかけてきた。
「リズ、お前は女だからな? ソファーとかで、寝ろよ」
「いや、遠慮しておくわ…………子供が優先だからねっ! それに、お年寄りもね」
ショーンは、女性であるリズの身を案じて、優しい言葉をかけた。
「そうか、男女関係なく、俺達は大人だからな? それに若くて、冒険者なんだから甘えた事は言ってられないよなっ! 明日も、ガキとジジババ達を助けるために動かんとな」
「そうよねっ! で、ショーンッ! このあと、時間は有るかしら?」
子供と年寄りを思いやる言葉を聞いて、ショーンはリズの真面目さに感嘆する。
そして、当の彼女は、何か悩みがあるらしく、神妙な顔つきで質問をしてきた。
「ああ、あるけど? どうした?」
「じゃあ、今から来てくれるかしら?」
何の話があるか知らないが、取り敢えず聞いてやろうと、ショーンは思い、リズに着いてゆく。
「いったい、何だってんだ? リズ、ここは装甲トラックの後ろじゃないか?」
「いいから、中に入ってってば」
用事があるなら、さっさと済ましてしまいたい、ショーンは後部から内側へと入っていく。
リズも後から中に入り、両側に開いてあるドアを閉めてしまった。
「分かった、分かった、で? 何のようだ? こっちは、もうヘトヘトなんだが」
「ショーン、実はさっ! 私は貴方の子を…………」
眠気が溜まっているショーンは、用事を済ませてしまい、さっさと就寝したいと思う。
そんな彼の前で、リズは背中を見せつつ、緑色をした長いローブを脱いだ。
「ぐかああああ~~~~」
「って、寝ちゃったのっ? もう、ショーンったら、何時もはイヤらしい目で見てくる癖にぃ~~」
しかし、肝心のショーンは酔っており、しかも疲れているため、すぐに寝てしまった。
それ故、リズは誘惑しようと思っていたが、シャツ姿のまま何にも出来なかった。
「フフッ♡ でも、チンピラやゾンビとの戦いッぷりは格好よかったわよっ! それに、一人で突っ込んで、みんなを助けてくれし、リーダー姿が、もうねっ! チュ♡」
ぐっすりと眠るショーンを見ながら、リズは彼の頬に、静かに口付けする。
こうして、疲れきった彼女もまた、明日に備えて、早々に眠るのであった。




