こんな異世界転生ってありなんですか。
私は、日本で働く一会社員。
ブラック企業で働いたり、特殊な才能を持っていたりなんてことはないどこにでもいるような人間だった
「今日も1日頑張って働いた~!
さっさと家に帰って、ご飯食べて読みかけのマンガでも見ようっと」
自宅へと帰っている途中突然光に包まれたかと思えば車にはねられてしまった
どくどくと目の前に広がる血、痛みで重くなる体にああこのまま死んでしまうんだと思った
(私の人生あっけなかったな・・。
まだ読んでない小説や漫画があったし、見たいアニメだってあったのに無念すぎる)
次も人間に生まれ変われたらいいなぁ、と思いながら目を閉じた
「・・・い、おー・・い」
誰かの声が聞こえる。
え、結構強めに当たったし感覚的にも死亡待ったなしだと思ったんですが、あの事故で生き残れるなんてあるんですか?
「馬鹿もん、そんなわけあるか。
さっさと起きろ。我も忙しいんだぞ」
頭を殴られた感覚に、驚いて目を開けるとそこには金髪イケメンが立っていた
「なにするんですか!?
私事故で頭思いっきりぶつけてるんですよ?!」
「ああそうだな。
居眠り運転していた男に思いっきりはねられて死亡した。
だが、この空間ではさっきの怪我は消えているから気にするな」
驚いて自分の体を見ると、先ほどの怪我がきれいさっぱり消えていた
その姿がおかしいとばかりに、けらけらと笑う金髪イケメン(仮)を睨みつける
「まあまあそう睨みつけなさんな。
我は本当のことを言ったまでだし、お前さんがあまりにも不遇だからチャンスをやろうと思ったのだよ」
「私にチャンス・・?
も、もしかして今流行りの異世界転生ってやつですか?!」
「そうそう!話が早くて助かるよ。
お前さんがこの紙に署名さえしてくれれば、異世界に転生させよう」
金髪イケメン(仮)が軽く指をふると、ポンッ!と軽い音がなり一枚の紙が現れる
「なにこれ・・?」
自分の目の前に落ちてきた紙を手に取り、中身を見る
★貴女を異世界転生させるにあたっての注意事項★
・異世界転生をするには、この書面に本人の署名が必ず必要です
・署名を行い、異世界転生した場合いかなる場合でもクレームは受け付けません
※クーリングオフも対象外です
・異世界転生した後は、神の介入は原則禁止になっています。
※不都合が発生してもお助けできませんので、悪しからず。
・転生先は、神が選定しますので指定はできません。
etc....
「・・・なんですか、これ?」
「お前さんも言うように、最近は異世界転生が流行なんだが転生先に不満を持つ者も少なくない。
だから、前もってクレームは受け付けないとわかった上で最近は転生をしてもらっているんだ」
神様も楽じゃないんだよね~、とふざける金髪イケメン(自称神)にあきれつつ紙に署名をする
「お!署名してくれたか」
「はい。どうせ、私はもう死んでますから。
それにこんなチャンス、受けないのももったいないですから」
「おお!さすが我が見込んだ人間だ!
さあ、その魔法陣に立って目を閉じるんだ。
次に目を開けると、君の第二の人生がスタートする」
金髪イケメン(自称神)の言う通り、魔法陣の中心で目を閉じる
不思議な感覚がして、目を開けると見慣れない豪華な部屋のベッドで目を覚ました
「・・うそ」
肌触りのいいシルク、心地いい日差しに思わず目を細め体を起こす
(~~やった!本当に異世界転生したんだ!
しかも断罪前や孤児スタートじゃないなんて、めちゃくちゃラッキー!)
と内心喜んでいると、目の前に1通の手紙が現れる
「・・あれ、この手紙さっき署名した紙に似てる気がする」
そっと手に取り、開封する
「やあ、目が覚めたかい?
これから君には、オルレアン公爵家の令嬢ジゼルとして生きてもらう。
断罪前や孤児スタートにならない異世界を探すのは大変だったが、善良で心優しい君が少しでも暮らしやすい世界を選んだ。
第二の人生では、幸せに暮らすように。
PS.
書類に記載していた通り、あの子を幸せにするように。
この契約に違反すれば、小説で言うBADエンドまっしぐらだ!
では、健闘を祈る!うははははは! By神様より」
「あの子を幸せにしないとBADエンドまっしぐらってなに?!
こんなの詐欺じゃん!?てか、あの子って誰ですか!」
思わず頭を抱えると、大きな音を鳴らしながら部屋の扉が開かれる
慌てて扉の方向を向けば、数人の女性が立っていた
「・・ジゼルお嬢様が目を覚まされたわ!」
「お医者様、いえ公爵様に!」
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「・・ふむ」
「ジゼルの体調はどうなんだ」
聴診器を外した医者に、急かすように問い詰める男
「公爵様。
ジゼル様は少し記憶障害があるようですが、他に異常や後遺症は見つかりませんでした。
私も信じられませんが、これは奇跡としか言いようがありません」
そんなにジゼルは体が悪かったのか、と少し不安になっていると近くに公爵がきて私と目線を合わせる
「・・ジゼル、本当にどこも苦しくないか?」
黒髪に金の瞳、整った顔立ちをしているイケメン公爵に思わず発狂しそうになったが
頑張って飲み込み安心させるように笑顔で答える
「うん、どこも苦しくないよ」
少し泣きそうにしながらも、優しく微笑む姿にどれだけ心配していたのか痛いほどわかった
「・・そうか、本当に良かった。
記憶障害のことは気にするな。
時間はたくさんある、これからまたゆっくりと覚えていけばいい」
優しく頭をなでる手は、暖かくて私は本当に異世界に転生したんだと実感した
「・・ありがとう、パパ」
「さ、もう少し休みなさい。
明日になれば、一緒に食事をしていろいろと話をしよう」
肩まで布団をかぶせられ、暖かい手に撫でられているうちにそのまま眠ってしまった