009話 美少女との帰り道
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「天命ー!寮まで一緒に帰るッスよー!」
「なんで確定事項なんだよ。俺に拒否権とかないのか?」
「何言ってるッス!こんな美少女と帰るなんてご褒美ッスよ?」
ほらと言いながらモデルの写真撮影みたいポーズを取ってみせる。
うーん、悔しいが確かにビジュアルは良い。
鳳凰院が一目惚れしたと言っているのも頷けるレベルだ。
性格だってそう。
一見するとうざったいようにも見えるが、現代においては非常に珍しい人懐っこい性格をしている。
会話をしていて間が空くことがないので、会話が苦手だって人も楽しい時間を共有出来るだろう。
「ちょっと……そんなにジロジロ見られたら恥ずかしいッスよ……」
どうやら顔を注視しすぎていたみたいだ。
女性相手に失礼な事をしてしまったと内心反省する。
狛町はやはり機嫌を損ねたらしく、後ろを振り向いて暫く顔を見せようとはしなかった。
「ま、まぁ、天命になら?見てくれても……って!おい!何女の子とイチャイチャしてるッスか!」
「天命は狛町の物じゃない。小白だって、天命と話したい」
軽快なツッコミと共に現れたのは少し気怠げな小冬だった。
入学式で相当お疲れの様で人の身体をソファー代わり座り、重さを感じさせない華奢な身体の体重を預けて来る。
まさかの行動に戸惑ってしまうが、妹とか娘を想像すると可愛らしい。
自分にも似た存在がいたらこんな気持ちなのだろうか。
「ぐぬぬぬ。なんかコハクッチには反論しづらいッス。つい、内に秘めた母性本能が邪魔をして。クソッ、出てくるなッス」
コハクッチって何か育成ゲームに出て来そうな名前だな。
俺はシンプルな呼び名なのに、他の人にはあだ名を付けるのか?
〇〇ッチの法則だと、俺はテンメイッチになるが、天地雷鳴みたいでカッコいい。
いっそ、それで呼んでみてもらうか?
「ねぇー?天命。犬子は1人で何してるの?」
顎をくいっと上げて、上を向きながら質問を投げかける小冬。
身体が密着しているせいで、顔と顔の距離が近い。
女の子に耐性がある訳でもない俺は、ドキドキしながら返答を考える。
そして考えた結果、答える代わりに手でそっと小冬の目を隠した。
悪いな、狛町。
この光景を未来ある子供に見せる訳にはいかなくてな。
「ちょっとおかしいッス!なんすかその哀れんだ目は!」
「おかしいのはお前だ!1人でボケとツッコミ完結させやがって。ピン芸人でも目指してるのか」
「ウチの笑いのレベルがプロレベルって、そりゃー褒めすぎッスよ〜」
ポジティブなのは良いことだけど、全部ポジティブに変化しないと気が済まないのか?
そういう翻訳機が脳に付いているとしか思えない。
「よし、寮まで行くか」
「うん、分かった」
狛町はまた自分の世界へと入り込んでしまった。
こうなれば、当分元の世界に帰って来れなそうだ。
狛町から連絡先を聞き出すという面倒なミッションが残っているが仕方ない。
膝の上に座っていた小冬を下ろして、2人で先に寮へ向うことにした。
「待って!置いてかないで欲しいッスー!」
ガタガタと机にぶつかる音を背後で立てながら、息を乱して狛町が後を追いかけて来る。
流石にこれ以上意地悪をするのは可哀想そうだ。
後ろを振り返って、合流するのを待つことにした。
「酷いッスよ。天命がウチを虐めるッス。女の子を弄んで楽しみ趣味がある鬼畜野郎ッス」
「バカ!おまっ、大声出してこんな所でそんな事言ったら変な噂が広まるじゃねーか!」
「広まっちゃえば良いッス!変態!鬼畜!バカ!たらし!」
「天命の悪口言うのはダメ!」
悲惨な言われようの俺を哀れんで、味方をしてくれる小冬。
小さい背ながらに最大限背伸びをして、非力な力で目一杯にデコピンを放つ。
ギリギリおでこに届いた1発は、意外にも良い音を奏でて狛町のおでこを赤く染めた。
小冬のまさかの行動に、痛みよりも驚きが勝った表情をしている。
何が起こったのか理解するまでに10秒くらいは掛かっていた。
「おい、いくら何でも暴力はダメだろ。いや、まぁ、庇ってくれたのは嬉しいけどさ」
「……ごめんなさい」
小冬はしょんぼりと肩を落とす。
狛町にも悪い所があったので一概に咎める事はできないが、手を先に出した方が負けという言葉もある。
小冬の事を考えると直しておいた方が良い。
「お前もバチが当たったんだぞ。口は災いの元っていうぐらいなんだから、気をつけないと。ほら、おでこ見せてみろ」
前髪を少し上げて腫れていないか確認。
怪我は慣れっこだからある程度の処置は出来る自負がある。
もしも、腫れていたとしても冷やせば痛みはすぐ引くだろう。
「ちょ、大丈夫、大丈夫ッスから!」
「本当か?デコピン甘くみてたらダメだぞ?意外とヒビ入ったりするからな。そうなりゃ、治療は早い方が良いだろ」
「もう大丈夫って言ってるじゃないッスか!」
「2人、距離が近い。デコピンしたのは小白だから小白が見る」
俺と狛町の間に割って入って、怪我をしていないか確認し始める。
見た感じは大丈夫だったので、2度3度と見る必要はない。
なんて、口にするのは配慮に欠けるか。
目の前に広がるのは、手を取り合って仲良くなろうとしている2人の女子生徒。
先程の事は一度水に流して、キャッキャうふふと楽しそうだ。
このまま寮に着くまで仲良くしていて欲しいとさえ思う。
───数分後
……これ、俺いるかな?
最初は微笑ましかったよ。
2人とも顔が良いし、絵になるなとも思ったよ。
だって、男の子だもん。
可愛い×可愛いってテンション上がるのは必然。
可愛い子2人、つまり最強ってわけだ。
ただ、そうなってくると邪魔な要素が1つあるんだよな。
深く頷いているそこの君達、俺に失礼だとは思わないのか?
分かってるよ、自分でも!
怖い顔の男が、完璧な百合の間からカットインしているのが似つかわしくないことくらい!
あぁ、このまま空気となってどこかへ消えたい気分だ。
「何、ぼーっとしてるの?」
「ちゃんと話を聞いて欲しいッス。何でコハクッチは、天命は下の名前で呼んでるのに、ウチのことは苗字なのかって話ッスよ」
「あー、確かに。それは気になるかも。名前呼びと苗字に何か特別な差があるのか?」
「特にない。天命が苗字で呼んでたからそうした」
「俺は基本的に苗字呼びだけど、それに合わせることもないだろ」
「でも、それ以外に呼び方が分からない」
親鳥の真似をする雛鳥か。
呼び方なんて呼びたいようにすれば良い。
俺はちょっと気恥ずかしいから男子も女子も苗字呼びで統一してんだよ。
「これは天命のせいッスね。責任をとってウチの下の名前を呼んでもらわないと」
「何で俺のせいなんだよ。そもそも……」
「良いから呼ぶッス!」
うっ……、そんな勢いで来るなよ。
悪いことしてるみたいだ。
「……い、犬子」
「どーしたッスか?」
「いや、お前が名前呼べって言ったから!」
「お前?はてさて?誰のことを言ってるッスかね?」
「い、犬子が呼べって言ったから」
「恥ずかしそうに言うのは初々しさがあって良いッスけど、及第点ってところッスね」
何で犬子が評価する立場にあるんだよ。
下の名前で呼ぶのは恋愛のテクニックとして必須級なのは分かる。
そして、恋愛力で言えば犬子の方が高いのは否めない。
だけど、同じ恋愛学校の生徒だろ。
どうしても解せない俺がいる。
「……私も小白って呼んで欲しい」
「小冬まで……。しゃーない、こうなれば慣れるしかないよな。ってことで、よろしくな小白」
「うん!」
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