008話 鳳凰院からの依頼
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ようやく1日目が終わった。
半日だったにも関わらず、どっと溜まった疲労感。
机に項垂れたまま動ける気がしない。
丹波先生が言うには、寮で入寮説明を行われるので15時までには着いていないといけないらしい。
現在の時刻は13時ちょうど。
今から向かえば、13時15分くらいには寮に着く。
早く着けば、その分荷解きに時間が充てられるが気分が乗らない。
少しのんびりして、落ち着いてから寮まで向かうことにしよう。
「ちょっと良いか?あー、天邪鬼。お前に話があるだけど」
「アマノまで思い出せたなら余計なもの付けるなよ。分かっててやってるだろ」
「言っただろ?俺は男の名前を覚えるのは苦手なんだ。こうやって話し掛けるだけでも成長したと思って欲しい」
こっちは知らんわ、そんな成長。
人がゆっくりと休もうとしているところに、わざわざ声を掛けやがって。
嫌がらせか?嫌がらせなんだな!
羨ましいんだろ、俺が3人もの美少女と会話していたのが。
女の子しか興味ないもんな、鳳凰院。
「……犬子姫の連絡先を教えて欲しい。あんなに喋っていたお前なら知っているんだろ?ほら、早く」
「狛町の連絡先?そんなの持ってる訳ないだろ。携帯触ってる暇なんてあんま無かったし、今日会ったばかりで連絡先とか交換するか?」
「するだろ。寧ろ、そのタイミング以外で交換する方が難しいまである」
ホスト志望は行動力が違うな。
こちとら、高校に入るまでは女子と喋る機会が無くてな。
そんなスマートに連絡先を交換するテクニックなんて持ち合わせてないんだよ。
そもそも俺の携帯の連絡先は家族とたった1人の親友が入っているだけ。
女子の連絡先なんて以ての外だ。
「ワイも欲しいンゴ。鳳凰院氏は狛町氏を狙っているらしいけど、ワイは一宮氏の連絡先をキボンヌ。いやー、あの怪力を実際に受けてみると、何というか、こうグッとくるものがあったというか」
照れ照れと身体をくねらせる二階堂。
コイツ、調理実習の時に投げ飛ばされて、開けてはいけない扉を開けてしまったみたいだ。
見るに耐えないので、とりあえず身体をくねらせるのを止めさせて、ちゃんと真実を話す。
「良いか、お前ら。俺は誰一人として女の子の連絡先は持っていない!」
2人は口を開けて驚いた表情を見せ固まったかと思えば、今度は手で口を押さえて涙目になる。
おい!今、俺のことを憐れんでいるよな!
ふざけんなよっ!
100歩譲って俺が可哀想な女の子も寄り付かない色物だったとしても、お前らだって同じだからな!
入学式早々あんな目立っておいて、違うという方が無理があるからな!
そんな恨み言と共に目から海水が流れ落ちた。
「いやいや、冗談はいらないから。あんなに姫達と話しておいて、そんな嘘が通じる訳ないだろ。ほら、携帯を貸してみろ」
貸してみろというのは言葉の綾で半ば強引に奪い取られる。
見られて困る物などないが、配慮というものはないのか?
俺も男だ。検索履歴とか、検索履歴とか、検索履歴とか。
万が一にも変なものがあるかもしれないだろ。
「お前、SNSも入ってなければ、連絡先にも少人数しか登録されていないだと」
「ぷっ、これだったらワイの方が友達多いんだが。天野氏、流石に最近はSNSぐらい活用出来ないとねぇー。お話にならないですけど」
「三階堂、お前だってネットの友達だろ。実際、会ったことすらない癖に」
「おっと、一階かさ増し建築されてて草。いやはや、昨今のネット情勢を甘く見るのはやめた方が良い。例えその場にいなくとも、バーチャル空間で同じ時を過ごすことは可能なんだから」
「それで話の続きだけど」
「無視はしないで欲しいんだが。これ以上虐めると夜な夜な枕元で啜り泣くものとする」
それだけは勘弁して欲しいな。
うるさくて、眠れないだろ。
イラついて殴り飛ばした日には、余計泣き出しそうだ。
「おい、コイツの変な話に耳を貸すな。俺は真剣な話をしているんだぞ」
「で、何だっけ?狛町の連絡先が欲しいんだっけか?」
「そうだ。ちゃんと話は聞いてるみたいだな」
「いや、自分で聞けば良いじゃねーか。まだ入学初日だろ?どさくさに紛れて連絡先交換出来るだろ、鳳凰院なら」
「それが無理なんだ……」
ここまでふざけたテンションで会話が進んで来たのに、いきなり真面目な空気へと変わる。
眉を軽くひそめて、後ろを振り向く。
震える程強く握りしめた拳からは、強い思いを感じる。
「一目惚れしたんだ。だから、直接は恥ずかしい」
「聞いたか?二階堂、一目惚れだってよ」
「ええ、聞きましたとも天野氏。あれは女性の中身を見ていない証拠ですな。完全に顔でいこうとしてますぞ」
「うるさいぞ、有象無象。良いか、俺は本気だ!今日の夕食の時までには聞いておけよ!分かったな!」
「今日の夕食まで!?そんなの無理に……おい、ちょ待てよ!どこ行くんだよ!」
言いたい事を全部言ってどこかへ消えやがった。
確かに狛町はクラスメイトの中では話せる方だ。
だけど、それは雛鳥の刷り込みみたいなもの。
最初に出会ったのが狛町だったからであって、俺がどうこうという話ではない。
きっと狛町が最初に出会ったのが鳳凰院であったなら、仲良くなってたと思う。
「面倒な事になって来た……」
全身から力が抜けて、地面に手をついて落ち込む。
冷ややかな床と視線が、まだ寒さの残る4月の辛さを体現していた。
「天野氏、天野氏」
こんな過酷な状況を案じてなのかトントンと肩を叩く二階堂。
「ワイの分も忘れずに頼むンゴ。女子の連絡先欲しいから」
励ましとかじゃなくて、おねだりかよ!
また一波乱ありそうな展開に、激しく落ち込む。
もういっそ、このまま床と同化していたい気分だ。
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