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恋愛学校の落第生共よ、恋を知れ  作者: 風野唄


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007話 狛町VS一宮

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

目の前に並べられた本格炒飯と高級ステーキ。

どうやって勝負の決着をつけるのかと思っていたが、やはり俺の採点によって決まるようだ。

本人達曰く、あくまでも公平性を保つ為にどちらの料理を作ったのかは伏せておくらしい。

料理工程を近くで見ていた俺にとっては、何の意味もないと気付かないのかな。


「さぁ、どっちから食べるッスか?炒飯ッスよね?明らかに美味しそうッスもん。他意はないッスけどね」

「そうですか?そちらの炒飯よりこちらのステーキの方がこだわりを感じますけどね。あぁ、もちろん他意はないですよ?」

「分かった、さっさと食べるから。そんなに顔近付けるなって!」


迫られ過ぎて、左右どちらを見ても至近距離に顔がある。

そんな圧のある状態でご飯を食べたって何の味をしない。

なので、一旦落ち着いてもらって、適切な距離に2人を戻してから実食へ。


「じゃあ、まずは炒飯から」

「よっしゃー!ウチの勝ちッス!」

「いや、まだ食べてないから。先に食べる方を選んだだけだから!」

「チッチッチ!それもまた勝負みたいなもんッスよ」

「ふふっ、知らないんですね。天命様は、好物を後に残すタイプ。つまり、第一印象の部分ですら私の勝ちということです」

「ったく、いちいち喧嘩しないと気が済まないのか?もう勝手に食うからな」


どうしてここまでいがみ合う必要があるのか、不思議でたまらない。

入学初日といえば、今後の学校生活を考えて友達作りに躍起になるものなんだけどな。

2人の喧嘩がこうも長引くとクラスメイトから距離をおかれるばかりだ。

寮でもクラスメイトに会うのにやっていけるのか?


「いただきます」


まぁ、その辺は俺が心配しなくとも上手くやっていけるか。

とりあえずは目の前の料理をいただくことに。


「うっま!米がパラッパラだし、材料もシンプルだから味がごちゃごちゃしてない。うわー、このガツンと口に広がるニンニクと焦がし醤油の味がたまらないな」


レンゲを持った手が止まらない。

喋る時間があるなら食べた方が良いと思える完成度だ。

今の今まで見て来た狛町の印象では、料理なんて全く出来ないかと思っていたが、まさかこんな才能があったなんて。


「……天命」


隣に座っていた小冬が、制服をくいくいと引っ張る。

何も言わなくても分かるぞ。

俺があまりにも美味しそうに食べるから小冬も食べたくなったのだろう。

狛町に言ってレンゲをもう1つもらわないと。

そう思って立ちあがろうとすると、制服を掴んだ手を離さないままに首を横に振った。


「それで良い」

「それって、まさかこのレンゲで食べるつもりか?俺が口付けた後だから、あんまり良くないだろ」

「んーん、気にしない。それよりも早く」


気にしないって言われてもな。

俺は気にしちゃう年頃だ。

見た目が幼く見えるからって同い年。しかも、異性だ。

そんな相手と、か、か、間接キスなんて。


……覚悟を決めろ。漢、天命。

目を瞑って口だけ開ける小冬に、炒飯の乗ったレンゲを差し出す。

口の中にレンゲが入ったのを確認すると何も躊躇わずに食べる小冬。

美味しそうにモグモグと口を動かしている。


「あぁー!ちゃんとみんなの分もあるッスよ!わざわざ天命の食べなくても大丈夫ッスから!」

「でも、こうやって食べた方が美味しい。多分」

「ダメなもんはダメッス!ほら、こっちのを食べるッス!」


ちゃんと人数分用意されているのは分かったから、小冬の顔にグイグイ皿を押し付けるのはやめてあげてくれ。

視界が炒飯にジャックされて、何も見えない状態になってるから。


「まさか、こんなところに意外な伏兵がいたとは。狛町さんよりもよっぽど脅威になり得ますね」

「うぅー、否定したいッスけど激しく同意するッス。あの見た目から警戒心を解いて懐に潜り込む。プロ中のプロの手法ッスよ」

「あのなー、小冬が計算してやってる訳ないだろ。天然だ、あれは」

「なら、尚更タチが悪いッス!1等級にも匹敵するッス!」

「……ありがとう」


単純に褒め言葉として受け取った小冬が照れながらお礼を言う。

その破壊力は言わずもがな。

穢れなき心によって浄化され、サラサラと灰になって消えていく狛町を見ればな。


「天命様、私も食べさせてあげますよ。ほら、口を開けてください」

「って、いつの間に!いや、自分で食べれるから!子供じゃないんだし」

「シクシク。私が食べさせるなんてダメですよね。分かってたんです……そんなことは」


そんな嘘泣きって分かる演技されても……!?

背後から感じる殺気の数々。

って、おい!包丁向けてる奴までいるじゃねーか!

冗談じゃ済まないから!凶器向けられると笑えないから!


「分かった、食べるから。泣いた振りするのやめろって。その内、本当に命を狙われてかねない」

「わーい!ありがとうございます!では、あーーん」


すぐ泣き止んだ一宮に食べさせてもらったステーキ。

味は文句無しで美味しい。

噛めば噛む程、肉本来のポテンシャルが肉汁と共に溢れ出す。

そこに追い打ちを掛けるようにソースに入った玉ねぎと赤ワインがさっぱりと味を引き締める。


「めっちゃ美味い!これ、店出せるレベルだぞ!」

「すごい嬉しい褒め言葉ですが、俺の為に毎日使ってくれと言って欲しかったです」


言えるか!

告白通り越して、プロポーズになってじゃねーか!

まったく、折角美味しい物作ってるのに、言動が残念で勿体無いな。


「……一宮さん。小白も食べたい」

「実際にやられると可愛くて仕方ないですね。自分の子供とか出来たらこんな気持ちなのでしょうか。ほら、小冬さん。あーーん」


同じ要領で小冬にも食べさせてあげると、小さな口をまたしてもモグモグとさせて満面の笑みを見せた。

微笑ましい光景だなと思っていると一宮と目が合う。

一宮も全く同じ事を考えているんだと分かる表情をしていて、思わず2人で笑ってしまった。


「一宮氏、一宮氏!ワイも食べてみたいのだが。出来れば、箸ではなく指で摘んで直接食べ──ほぶらぁ!!!」


どこからともなく現れた二階堂が、小冬の真似をして食べさせてもらおうとする。

だけど、援護出来ないくらいの気持ち悪い発言をして、一宮に殴り飛ばされた。

お前、欲に目が眩んで一宮が怪力だってこと忘れてただろ。


不意を突かれて自爆攻撃を受けたみたいな倒れ込み方だ。

もうそのまま安らかに眠ってくれという願いを込めて、合掌しておいた。


「で、どちらが1番美味しかったですか?聞くまでもないと思いますが」

「炒飯!炒飯ッスよね!」

「どっちも美味しかったけど、1番って聞かれたらこれかな」


選んだのは、狛町の作った炒飯でも、一宮の作ったステーキでもない。

小冬と一緒に作ったポテサラだ。

味も技術もまだまだだけど、自分の手で作り上げたという思い出が補正を掛けた。

料理は心ということだな。


勝負事だった為、どちらとも言えない結果に納得のいっていない2人を宥めながら、残った分を食べ進めた。

ご覧いただきありがとうございました。

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