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恋愛学校の落第生共よ、恋を知れ  作者: 風野唄


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052話 天命の独白

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

隅っこの方で体操座りをしている犬子を見つけた。

話し掛けられないよう小さく小さくなっている。

俯いていて表情は見えない。

それでも泣いたのだと分かるくらいに、空気が重く澱んでいた。

俺は話し掛けるのを躊躇った。

俺のせいで、犬子を傷付けてしまったのだから。

でも、そんな時には小戸野との約束を思い出す。


約束という縛りが俺に勇気をくれる。


「あのさ……ただいま」


俺の声を聞いて犬子が顔を上げた。

怒るでも、悲しむでもなく、疲れ果てた表情で俺を見つめる。


「ごめん、俺……」

「気を遣わせちゃったッスね。あぁ、奏ちゃんには黙っててね言ったんだけどなー。止まらなかったッスか」


口角を無理矢理上げた張り付いた笑顔。

気を遣わせているのは俺の方だ。

本当は言いたいこと沢山あるだろうに、我慢させて。

何がごめんだよ。

違うだろ、本当に言うべき言葉があるだろ。


「俺は過去に取り返しのつかない事をした。だから、俺は俺を責め続けてるんだ」


俺の独白。

無様な独白。

それでも彼女には聞いてもらいたかった。

もらわねばならなかった。


曇り空からポツポツと降る雨。

何ともタイミングの悪い完璧な演出だ。


「今回もそのせいで周りを巻き込んでしまった。だから、1人で何とかしないとと思って。それだけで頭が一杯になって。犬子の事も傷付けた。……本当は迷子なんだ、俺」

「……迷子ッスか?」


よく分からない言い回しに、黙って聞いていた犬子も言葉が漏れる。


「あぁ、迷子。来た道を何度も訪れて、立ち止まって、考えて、また訪れる。そうやって何度も過去を断ち切れないでいる哀れな迷子」

「結構詩的なんすね」

「……うっせ!茶化すな」

「あっ、茹蛸みたいに真っ赤ッス!立場逆転ッスねー!」


ニシシと笑う犬子。

ひとまずは笑顔になった事を喜ぶと同時に、寮生活1日目を思い出す。

あの日の夜のことを。

俺はこの笑顔を見て……犬子を……、いや、今はそんなことより話の続きをしよう。


「俺、結構ネガティブで」

「知ってるッス」

「時々、面倒くさくもなるし」

「それも知ってるッス」

「そして、俺このクラスが好きだ。だから、みんなと一緒に前を向いて進もうと思う。1人じゃなくて、みんなで」

「はいッス!」


天気と気持ちは連動するみたいな表情があるけど、あれはどうやら嘘っぱちみたいだ。

小降りの空の下、気持ちは不思議と晴れやかだった。


「ちょっと押さないでよ!」

「ワイじゃないから小戸野氏、ワイじゃ!後ろのイケメンが押してくるんだが!」

「おい、何だあれは!何で犬子姫と天野が良い感じなんだ!」

「男女が書かれてすることなんて1つしかないっしょ!」

「よし、そこどけ福部。俺は、天野を殺しに行く」

「あはは、ご、ごゆっくり〜」


ごゆっくりさせるな。

俺がじっくり痛ぶられるだろうが。


「あはは!本当に良いクラスッス!」

「あぁ、本当に」


この喧騒を落ち着くと思うのが、やはり俺もこのクラスの一員であると証明している。


だけど、頼むからそこの暴走寸前の鳳凰院を離さないで欲しい。

今にも殺されそうだ。


「さてと、残り時間は短いッス。気持ちの整理も着いた所で反撃と行きましょうか」

「反撃って、どうやって。何か策はあるのか?」

「勝つならみんなでッスよ。大丈夫ッス。1等級クラスを足止めする策はもう講じてあるッスから」

「策を講じるとか使うんだな。で、どんな策なんだ」

「彩を向かわせてるッス」


どう言うことだ。

彩を直接1等級クラスへと向かわせているだと。

確かに綾の狙いは彩だ。

1等級クラスへ行けば、かなりの時間を足止め出来る。

でも、その分俺と綾で交わされた話を知ってしまうリスクが高まる。

半ば無理矢理だったとはいえ、そんな約束をしてしまったと知れば彩が悲しむのは間違いない。


「大丈夫ッスよ。ちゃんと全部話してあるッスから」

「全部話したのか?」

「勿論じゃないッスか。天命は本人に隠してクラスメイトに協力してもらおうとしてたッスけど、ウチが彩ならそれはちょっぴり悲しいと思ったから。寮から連れ出した時に話しちゃったッス」


なんて事をしたんだとは言えなかった。

犬子の言っている事は正しい。

クラスメイトの中でただ1人何も知らないまま助けられるのは、寂しさを感じる。

恩着せがましいとは違うけど、勝手だとは思ってしまう。


「彩はなんて言ってた」

「うーん、言葉で伝えるのは難しいけど、簡単に言えば怒ってたッスね」

「やっぱりそうだよな」

「勿論、従姉妹の方にッスけど。主に天命を巻き込んだことについて。まぁ、でも、大丈夫だと思うッスよ。彼女もちゃんと地に足付けて立ってるッスから。しがらみくらい自分の手で抜け出してくるッスよ」

「分かった、信じる。となれば、俺達が出来る事は何も考えず出来る限りポイントを取る。それだけだな」


シンプルで分かりやすい。

小細工なんて必要ない勝負。

点差だけ見れば圧倒的に不利に見えるが、何故だろうか勝てる気がしてならない。


『全部クラスに告げる』


ここからだという時に、アナウンスが聞こえる。

このタイミングでポイント発表か?

先程したばかりだろ。

見覚えのある顔だな。

確かクラス主任の先生じゃなかったか?


神妙な声色。

申し訳ないという気持ちが伝わる。

何があったのか。

3等級クラスが退場した事か。

だとすれば、納得出来る。


『天候の悪化により、残り30分で終了とする』


神の悪戯は突然に、進み掛けた歩みに待ったを掛けた。

ご覧いただきありがとうございました。

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