050話 男達の雑談
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不意を突かれた剛山だったが、軌道修正も早い。
振り向き体勢を整えるまでにそう時間は掛からなかった。
ただ二階堂も引き下がらない。
ここを逃せば、全てが水の泡になると本人も分かっているのだろう。
だから、例え不恰好でも腕を伸ばし続ける。
二階堂の奇襲と剛山のフィジカル。
どちらも考慮すると勝敗は五分五分と言ったところか。
だとすると、均衡を壊すのは数パーセントのプライドの差。
赤く光るブレスレット。
どちらが先に光ったのかと聞かれたら答えづらかった。
「やっ、やったー!」
二階堂は喜びが隠せない様子だ。
相手のブレスレットを見て、自分の勝ちを確信したのだろう。
「喜び過ぎだ馬鹿。お前、自分のブレスレットを見てみろ」
「えっ?ワイの?」
言われた通り、二階堂は自分のブレスレットに視線を落とす。
「な、な、なんですとぉーーー!!!」
確かに剛山は赤くなっている。
だけど、二階堂もそれは同じ。
触れた判定が偶々同時だったのか、または別の要因があるのか。
どちらにせよ、ここにいる全員が動けなくなった訳だ。
折角ポイントをゲットする機会も、この状況では無かったに等しい。
「ど、どうしよう!これじゃあ、他のクラスが来たら一気に3ポイントですぞ!」
「落ち着け二階堂。騒いだらバレるリスクが高まるだろ。俺達に残された可能性は2つ。自分達のクラスが真っ先に助けに来る事を願うか、このまま誰にもポイントを取られずに終わるのを待つかだ」
「うぅ、ワイの努力は水の泡だったということか」
「……馬鹿が。お前は良くやった」
「えっ?」
二階堂は戸惑う。
決して聞き取れなかった訳ではない。
聞き取れたからこそ戸惑っているのだ。
俺も柄にもない事を言ったなと思った。
でも、アイツがやってのけたのは簡単な事じゃない。
剛山相手にはどう足掻いたって単純な身体能力では勝てるはずもないのだから。
「男は嫌いじゃ無かったのか?」
剛山が会話に割って入る。
「嫌いだ」
「の割に、友達を褒めるんだな」
「あぁ、彼はツンのデレという奴ですからな」
「むっ、ツンデレというのは天邪鬼みたいなことか?」
「まぁ、ニュアンスは近いですぞ。嫌いと言っても好きってこともありますし」
「なるほどな」
勝手に納得するなゴリラ。
こっちを見てニヤニヤしやがって。
あの時の会話を思い出しているみたいだが、天野のことは勿論嫌いに決まってるだろ。
変な説明をした二階堂は後でしっかり絞めてやらねばならない。
「天命はクラスにちゃんと馴染めているだろうか?」
保護者の様に心配した目で問いかける。
俺は答えたくなかったので、二階堂に任せてだんまりを決め込む。
「そりゃ勿論。クラスの中では社交的な方なんじゃないかな?友達も多そうに見えるけど」
「天命が?ガッハッハッ!そいつは面白いな!」
「クラスメイトが個性的過ぎて、まともな方に分類されますからな。それに変な二つ名が出回っているみたいだけど、ワイは今の彼しか知らない。知らない事を語るのはオタクの風上にも置けないのだよ」
「……そうか。先程はすまなかったな、卑怯者だと言って。良い友達を持ったみたいだ、天命も」
「いやいや、良い友達だなんて。それ程でもある」
「ガッハッハ!良い自尊心だ!」
くだらねぇ会話だ。
天野の話ばかり。
そんなにアイツが好きかよ。
もっと姫の話をした方が有意義だ。
まぁ、むさ苦しいのには変わりないんだけどな。
「お前さんも悪かったな。ちょっと口が悪いけど、あれは戦いの上での戦略ってことだよな」
「話し掛けるなゴリラ。言っておくが男が嫌いなのは本当だ」
「こりゃ、まるで昔の天命を見てるみたいだな」
「誰か天野だ。アイツと一緒にすんな」
「似てるさ。他人を拒絶しているように見えて、1番自分を拒絶している。アイツもお前も根底は一緒という訳だ」
否定はしない。
男を嫌う理由に自身を嫌っている事が含まれていることは。
それでも虚勢を張る。
今できる最大限の強がりを。
そうしなければ、俺は本当に俺を憎み始める。
「うっせぇ、ゴリラ。焼いて食うぞ」
「ゴリラ肉は流石の俺でも食わんな。美味しいのか?」
「違うよ、剛山氏。あの食うぞというのは、物理的な意味ではなくて、比喩表現で主にB…ぶへぇらっ」
その辺に転がっていた小石を二階堂目掛けて投げつけてやった。
野球が得意とか、経験者とかではないんだが、外す気は全くしなかった。
次、あの口が変な事を言い出す様であれば、文字に起こさないぐらい酷い目に遭わせてやる。
「おーーい!何やってんだー!」
「なにこれ?どんな状況?なんかこの状況だけで面白いの書けそうなんだけど」
あれは俺達のクラスの福部と物部姫だ。
「俺達の勝ちだな、ゴリラ」
「お前さんは頑なにゴリラ呼びだな。まぁ、今回は俺の負けでいいさ。次の恋愛祭、その時こそは俺が勝つかなッ!」
「出来れば、2度と関わりたくねぇーよ」
こいつ、見た目はパワー系の癖して、中々考えるタイプの人間型ゴリラだ。
クラスメイトにも近しい存在として斉藤がいるが、あれは全体の空気を見ているタイプ。
こっちは個を見ているタイプだ。
とことん相性が悪い。
近くにいるだけで思い出したくもない事を思い出してしまう。
唯一救いがあるとすればクラスが違う事。
違うクラスの奴と会う機会なんてそうそうないだろうからな。
……ないよな?
例えあったとしてもこのゴリラとだけは。
そんなことを思いながら、自陣へと戻ったのだった。
これがフラグになるとも知らずに。
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