049話 吠えろ二階堂
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「策があるって言ったって、そもそもあの運動能力の相手に勝てる訳ないから!逃げるは恥だが、何とやらって言うの知らないのかな?」
「落ち着け。お前は逃げた振りをして後ろ向きに走れ。俺が気を引きながらアイツのライフを削る。そして、お前は大回りして奴の背後を取れ。それでチェックメイトだ」
「いや、でもワイにそんな重荷は無理だって。見てよこの腹、走れると思ってんの?舐めんなよ?」
「作戦会議はその辺で終わりにしてもらおうか」
律儀に待っていたゴリラが声を掛けて来た。
「良いから行け。お前がこの作戦の砦だ」
わざと聞こえる音量で二階堂に語り掛ける。
ゴリラが言葉の意味を勘違いでもすれば、勝算は増す。
出来る限りの事をしなければ。
「し、知らないから。もう知らないから」
不恰好に走り出した二階堂。
アイツの性格からして、本当に逃げ出した可能性もなくはない。
弱さを肯定する節があるからな。
でも、俺は信じるしかない。
馬鹿を演じている奴にこそ、熱い気持ちが宿っていると。
「おい、ゴリラ。俺は男になんて興味はないが、一応社交辞令として聞いてやる。名前は?」
「剛山男!親から貰った最高の名だッ!」
「チッ。俺と相性が悪い名前だな。でも、文句も言ってられないか。相手してやるよ、ゴリラ。男って言う生き物がどれだけ無価値か思い知らせてやる」
「何を言ってる、漢ってのは最高じゃないか!熱い炎を滾らせて、魂と魂の会話を弾ませる。こんな最高の生き物はいないだろ」
さっきから挑発を効いていない。
ゴリラと連呼しているが、怒る様子はどこにも。
ご自慢の筋肉が褒められたとでも思ってんのか?
なら、1つ地雷があるとすればあれか。
男の中の男を語る剛山だからこその地雷。
俺が唯一知っている剛山の情報。
「天野天命の知り合いとか言ってたな」
「あぁ、そうだ。相棒だ」
「あの嘘付きを相棒にするとは中々の度胸だな。知ってるか?アイツ、平気で嘘付くぞ。約束も守らない。それって、お前の言う男って奴とは真反対じゃないのか?」
友達を馬鹿にされるのを嫌う。
きっと剛山はそういう男だ。
怒れ、そうだ怒れ。
お前が冷静さを保つと厄介だ。
単純な思考で馬鹿力を振り回す方が分かりやすく良い。
「……お前、天命の友達じゃないのか」
「フッ、面白い冗談だ。言っておくが俺は男という生き物全てが嫌いだ。変な勘違いするな」
「あぁ、そうか。なら、遠慮は要らんな。速攻で終わらせる」
始まった。
図体の割に速い動き。
だけど、弱点があるのは分かる。
出来るのは直線的な動きだけだ。
曲がる時は確実にスピードが落ちる。
そこを見分ければ、動きをある程度予測出来るはず。
まだ直進してくる。
速さだけが増して行く。
まさか、このまま速さだけで押し切るつもりか。
身体のデカさが迫力に磨きを掛ける。
相手がそのつもりならこっちも戦いやすい。
真正面から迎え撃てば確実に削れる。
「浅はかだな。それに弱い、心がな」
「余計なお世話だ」
勢いに乗せて伸びるゴリラの手。
運動神経に差がありすぎる。
こんな単調な攻撃でさえ、俺には避けられない。
左腕に触れられてしまった。
リストバンドの色が黄色に。
だが、こちらもただでは終わらせない。
2発目が来る前に、腕を掴み返さなければ。
「弱さは強さだ。受け入れられない者は強くなれない」
「説教なんて聞き飽きてんだよ。大人しくしてろゴリラ」
「どれだけ強い言葉を使おうと本質は変わらないぞ」
「心理戦のつもりか?もっと言葉を勉強しておくんだったな。姫もそんな言葉じゃ靡かないぞ」
会話に意識を持っていかれるな。
リストバンドの色が変化する条件は相手の体の部位をどこでも良いから触れる事。
それだけに意識を回せ。
最悪、相打ちだって良い。
俺の後ろには奥の手が控えているのだから。
「真正面から向き合う事を選んだのだけは褒めてやる!」
まただ。
馬鹿の一つ覚えみたいに直進。
真正面から向き合うのを選んだ?
笑わせんな。身体が反応しないんだ、こっちは。
このままさっきと同じことを。
俺は1回も触れることすら出来ずに終わるのか。
アイツが、あのクソが言うように無能のまま死んでいくのか。
ジリリッジリリッ!
自然豊かな森の中に似つかわしくはない電子音。
だが、その異質が剛山の気を引いた。
無意識の内にセーブを掛けて、スピードが落ちた。
チャンスは絶対に見逃さない。
「お返しだ、ゴリラ」
指先が剛山に触れる。
アイツのブレスレットの色は黄色に変化。
これで俺の役目は終わった。
俺もブレスレットも赤色に変わった。
さっきのアラームの音。何だったんだ?
あれのお陰で一矢報いたけれど、一体誰が。
「はっはっはっ!友のピンチにワイ参上ッ!ヒーローは遅れてやってくるのだ!」
まさか二階堂だったのか。
それよりもあの馬鹿。
わざわざ声出しやがって。
奇襲作戦が意味を成さないだろうが。
「馬鹿ッ!ゴリラがそっち向かったぞ!」
たった一瞬声を出しただけなのに位置がバレた。
剛山は止まらない。
俺は1ポイントすらまともに取れないまま終わるのかよ。
もっと俺が強ければ。
「はっはっはっ!友のピンチにワイ参上ッ!ヒーローは遅れてやってくるのだ!」
二階堂は一言一句違えぬ言葉とテンションでまた声を出した。
「……携帯電話だと」
草むらを掻き分けた先にあったのは二階堂の姿ではなく、携帯電話だった。
「いけーー!!!二階堂ッ!」
俺の声に反応して剛山が振り返る。
その隙を待っていたと言わんばかりに、剛山の目の前のから二階堂が飛び出してくる。
フェイクである携帯電話の近くに敢えて身を隠していた。
「貰ったーー!!!」
二階堂が始めて吠えた。
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