045話 日纏陽花の恋心
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あーしは生まれた頃から不自由だった。
教育という名の縛りがキツくあーしを締め上げる。
息をするのさえも苦しくて、気が狂いそうな毎日だった。
物心を付いてすぐにそんな感想を抱くくらいだ。
きっと産まれてからずっと厳しい環境で育ったのだろう。
だから、あーしは親を親とは思っていない。
血の繋がった他人だ。
どれだけあーしが嫌だと叫ぼうとも、どれだけあーしが泣こうとも、父は顔色1つ変えずに、どこで教育を失敗したのかと呟く。
心底腹の立つ生き物。
自分で産んだ子に失敗?
よく平気で言えたものだ。
愛情なんてない。それどころか、出来の悪いあーしが、憎くて堪らないのだろう。
母だって同じ。
子供よりも父親の顔色を伺う最低の母親。
あーしなんて視界に入っていない。
父が叱れと言えば叱り、甘やかすなと言えば露骨に態度を変える。
震え、怯える。
同情なんてしない。
母が勝手に選んだ道なのだから。
まぁ、要するにあーしの今後の人生において、思い出したくもない2人が両親なのだ。
高校進学を間近に控えた中学3年の夏もそうだった。
「おい、陽花。お前、進路はちゃんと考えているんだろうな。学生の本分を忘れて、浮ついた格好をしているが、それが通用するのは子供の内だぞ。社会に出れば、レールから外れて生きるの事がどれだけ辛いか身を持って知ることになる。そうなる前に……」
あーしは話を最後まで聞かなかった。
聞きたくも無かった。
夕食を急いで食べて、皿をシンクに置いて水に浸しておく。
本来であれば、夕食など残してしまって皿も放置しておきたかった。
身に付いてしまった親の教育がこんなところにまで。
そんな実感が湧いてしまう。
部屋に閉じ籠ると、雑誌を開いた。
あーしが載っている雑誌だ。
保護者の許可がないと載るはずもないのにどうしてか。
あーしの家系の中で唯一母方の祖父母だけは味方だったから。
保護者の同意も大好きな祖父母に頼んだ。
だから、父も母もこの事は知らない。
知らなくて良い。
コンコンとノックが聞こえる。
おおよそ、父に命令された母が様子を伺いに来たのだろう。
ノックをした割に何も言わないのが、その証拠だ。
父なら、ここで無神経に入るぞと言って扉を開ける。
母はあーしの部屋に来て、扉を叩いたという事実が欲しいだけ。
自分の保身の為に。
「……なんで産んでしまったのかしら」
去り際に聞こえた到底母親とは思えない言葉にも、傷付かなくなっていた。
こういう人だと心の中で割り切っている。
秀恋高校に入学を決めたのは、この日のすぐ後だった。
親には猛反対されたけど、祖父母を後ろ盾してなんとか願書を書いたのは記憶に新しい。
どれだけ頑固な父親も、義理の両親には気を遣うらしく、何度目かの説得で心が折れた。
あーしは叱られなかった。
代わりに温かさを一切感じさせない冷たい視線を送る。
そんなのが怖いと思う年頃では無かったので、軽く無視をしてやると、次はお前だと言わんばかりに母へ当たるのだ。
泣き叫ぶ母の声がリビングに響き渡る。
それを目障りだと思ってしまうあーしも、きっと彼等と同じ異常者なのかもしれない。
あーしが家を出る最後の最後まで、父は好きにしろとは言わなかった。
分かっているんだろうなと何度も釘を刺す。
言われなくても分かっている。
父があーしを教師にするのを諦めていないことぐらい。
だからこそ、何も言わずに家を出た。
玄関の扉を開けた先に見えた空がやけに広大に見えた。
───
あーしはやっぱり無力だ。
大人になったつもりで、何でも1人で出来るつもりで、結局何も出来やしない。
目の前に倒れ込んだクラスメイト1人すら助けることが出来ないんだから。
いや、寧ろ足手纏いになっている。
あーしを庇った斉藤くんが酷い暴行を加えられていた。
天野くんを尾行するってなった時、斉藤くんはクラスメイトを呼んで来るようにあーしに頼んだ。
あーしはそれを押し除けて付いていくと言った。
自分の意見を貫き通した結果がこれだ。
碌なことにはなっていない。
見知らぬ男子生徒から腕を掴まれた。
あーしも斉藤くんと同様に乱暴な目に遭うのだろうか。
振り解こうと抵抗するも男女の力の差は、簡単には埋まらない。
徐々に抵抗する力さえも抜けて来てしまった。
殴られるのかな、蹴られるのかな。それとも、もっと酷いことをされるのかな。
痛いのは怖いな。
この状況からあーしを、
「助けてッ!」
悲痛な叫びを上げた。
誰とは言わない。
頭に思い浮かぶのはいつだって彼1人だ。
気弱で人見知りの癖に、意外とお喋りで真面目で努力家な彼の姿。
届くはずがないと分かっていても、彼の事を考えてしまう。
「雨水流新術・陽光影分身ッ!」
あーしの求めていた声がする。
声のする方向を振り向くと彼がいた。
額からは汗を流し、息も絶え絶えになりながら、あの無理だと言っていた影分身を成功させて。
あーしにはそれが最高に格好良く見えた。
10人以上はいるかげちゃんが、あーしと斉藤くんを救出して、相手を蹴散らす。
その圧倒的な実力に、目が離せなかった。
ずっと目で追っていた。
早くなる鼓動。
ドキドキが止まらない。
多分、この気持ちを辞書で引いたら、"恋"という言葉が出てくるのだろう。
確証はないけど、そんな気がした。
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