043話 彼もまた5等級クラス
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がむしゃらに森を走る。
体力を無駄に消費することなんてどうでも良かった。
足を止めてしまうことの方が怖い。
頭の中にある色々な感情が一気に押し寄せて来そうで。
「何も変わっちゃいねーな、俺は」
いつだってそうだ。
本当は向き合わないといけない事から目を背けて、考えない様に何かに没頭する。
俺は卑屈な生き物だからと、納得する為だけに何度も自分の心で呟く。
そうやって逃げて来た弱い自分が嫌いだ。
「おっ、天命のアニキじゃーん!何してんの?」
「やっほー!って、なんか怒ってる?」
斉藤と日纏のペアが偶々目の前に現れる。
最悪だ、こんな所を仲の良いクラスメイトに見られるなんて情け無い。
「怒ってない」
どれだけ取り繕って返せただろうか。
鏡なんてないから、分からない。
「いや、それ怒ってる人のやつだから。てか、そんなに焦ってどうしたん?話聞こか?」
「え?斉藤くんってそっち系!?幻滅ー!」
「違うよ!ノリじゃーん!……いつものコントにも笑わないか。相当事態は深刻みたいだね」
話せと斉藤は言わなかった。
日纏だって。
本当はちゃんと聞きたいはずなのに。
俺の気持ちを優先する良い奴らだ。
だから、迷った。
今の状況を言うべきか。俺が招いた失態を話すべきか。
「いや、何でもない」
誰かを巻き込む訳にはいかない。
1人でどうにかする、そう決めたんだ。
「いやいや、その感じ何もないわけ「ふーん、そっか。じゃあ、急いでるみたいだし。僕達はこの辺で。さぁさぁ、行った行った日纏ちゃん」
「でも、天野くんが」
「良いから良いから」
ありがとう、斉藤。
お前が話の分かる奴で助かった。
本当は斉藤だって聞きたいことがあるだろうに。
空気の読めるところが彼の長所なのだと、痛感させられた。
2人は俺の見送ってくれた。
斉藤は満面の笑顔で手を振りながら、日纏は納得出来ない様子で。
日纏が悪い訳じゃない、自然な反応とすら言える。
だから、解決してからちゃんとみんなに謝ろう。
少しだけ冷静さを取り戻していることに気付く。
狭くなっていた視野が急に広くなったような感覚。
ここで考えるべきは、獅子倉と音無がどこで俺を待ち受けているかだ。
相手から戦いを挑んだ以上、俺が辿り着ける場所で待っているはず。
姑息に隠れ奇襲をしてすぐに戦いを終わらせるのは、獅子倉にとって興醒めだろうからな。
堂々と且つ大胆に。
つまりは戦場のど真ん中。
そう考えてまず間違いない。
現在地から太陽の位置で方角を割り出す。
そして、地形を思い出す。
頭だけでは整理出来ず、その辺に落ちていた小石を広い地面に描いた。
ざっくりとだけど、出来るだけ丁寧に。
場所も行くべき道も分かった。
後は進むだけだ。
「よぉ、遅かったなー。暴れ鬼」
予想は正しかった。
森の中央に位置する場所に、目を見張る大きな大木。
それを背にして座り込んでいる獅子倉と音無がいた。
「クラスメイトはお前達の牢屋か?」
「さぁ、どうだろうな。教えて欲しいなら、何をすべきか分かってんじゃねーのか」
「……アジタート」
「ほら、昇也もこう言ってんだ。さっさと喧嘩しようぜ」
ここに来るのがどういう意味なのか。
分からない程、馬鹿じゃない。
当たり前のようにスッと構える。
体に染み付いた動作が咄嗟に出た。
「良いね!そう来なくちゃ!でもな、アンタは生きる伝説。憧れながら、憎むべき相手だ」
「何が言いたい」
「悪いな。アンタと手合わせしたいのは、俺だけじゃないってことだ」
大木からは8人の男子生徒がぞろぞろと現れた。
勝手に2人しかいないと思い込んでいた。
戦いを楽しむ為にそうするのだと。
合計10人。
相手をするには確実に分が悪い。
しかも、獅子倉がルールなんてものを律儀に守るとは思えない。
今この瞬間だけここは無法地帯と化す。
気合いを入れないとな。
「さぁ、ここからが本番だ。1対10の楽しいイベントを始めようぜ」
ジリジリと距離が迫る。
物理的には逃げられるが、それでは何の解決にもならない。
このまま足を引っ張られ続けるだろう。
そうなれば、3等級、5等級共に沼に沈む。
自ずと1等級クラスの勝率が上がる。
それだけは阻止したい。
1人、2人削っただけでは、意味がないか。
全員、ここに縛り付ける。
10人というクラスの男子生徒相手にそれが出来れば上出来だろ。
ここからが正念場だ。
「なんか面白そうなことしてんねー、天命のアニキ。こんなの黙ってたなんて狡いよ」
「こっそり付いて来たら、これなんだから。どこか達観してるイメージあったけど、やっぱりクラスメイトって感じだねー」
「なっ!?付いてきたのか?」
後ろから声がすると思えば、斉藤と日纏がいた。
あの時、確かに見送ったはずなのにどうして。
「そりゃ、あんな顔してたら誰だって心配するさ」
巻き込みたくはなかった。
過去を1人で清算するべきだった。
苦しい。
みんなが優しいから。
「前に言ったことがあるよね?人の心は見えない。だから、見せないといけないって。あの教えには続きがあるんだよ」
「続き……?」
「そして、常に見る努力をしなければならない。僕は常々、それができる人間でありたいと思ってる」
「だったら、尚更来ないで欲しかった」
「あはは、面白いことを言うね。天命のアニキ、いや、天命。確かに君の心はここを1人で片付けるのを望んでいる。だけど、1番じゃない。1番は5等級クラスが勝つことだ。それは昨日の夜、君が下げた頭が語っていたよ」
分かってるんだ、俺の我儘だって。
もっと人に頼るべきなんだって。
でも、俺はその方法を忘れてしまっていた。
多分、これからも。
「めんどくさい男だな、俺」
「僕も大概だよ」
「あーしも」
まぁ、それが落第生クラスか。
「弱くなったなー、暴れ鬼」
「……デクレッシェンド」
「そんなお荷物抱えて勝てる訳ねーだろ」
「僕がお荷物?あははは!笑わせてくれるね、見せてやるよ。僕の本気」
指を立て、クイクイと古典的な挑発。
まさか、斉藤に知らない才能が。
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