041話 豪快な親友
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開始してからどのくらいの時間が経っただろうか。
慣れない環境下のせいか体内時計は正常に機能していない。
腕時計も付けられない今、時間を測れるのは各陣営に設置されたモニターのみ。
早く敵陣営を見つけて、動きと経過時間を把握したいところ。
「ねぇねぇー、つまんねーッスよ。もっと激しいバトルとか、熱い友情とか期待してたッスけどー」
「贅沢言うな。何回も言うが俺達は偵察班だ。目立つ様な行動は避けないといけないんだから」
「んー、まぁ、そうなんすけどー。今、開始から10分くらいは経ってるし、何かアクションがあってもいい頃じゃないかなーって」
「時間感覚しっかりしてるんだな。俺には何分経ったかさっぱりだ」
「暇だったからずっと数えてたッス」
「何やってんだ、お前」
集中力があるんだか、ないんだか。
似た様な景色が続くから気持ちは分からなくもないが、いつ何処で襲われるか分からない。
気を引き締めるべきだ。
「なんか、しりとりとかしないッスか?」
「待て。静かに」
歩いている道の先に、明るい光が木々の間から出ている箇所を見つける。
つまり、この先に広場があると言うことだ。
きっとどこかのクラスの陣地があるはず。
まだ距離はあるが、ここから物音には気を付けた方が良いだろう。
「ふがぁ!こるひぃ!もがっ!」
「だから、静かに……あぁ、悪い」
咄嗟に口を手で塞いだので、鼻も口も覆っている。
呼吸が出来ず、もがいている犬子を見て、慌てて手を離した。
文句を言いたそうな犬子だったが、とりあえず必死に呼吸する最優先。
「何やってるッス!危うく死ぬ所だったでしょ!」
静かにと言われたから声のボリュームは下げながらも、表情とアクセントだけで怒りを伝える。
殺されかけたのだから怒る気持ちも分かるけど、状況を見て欲しい。
無言で目の前の光景を指す。
何等級かは分からないが大勢の生徒が牢屋を囲うようにして守っている。
牢屋には既に3名の生徒。
この人数が多かれ少なかれ、確実にポイントを持っているということは確かだ。
1.2.3──20人丁度か。
残り10人が暴れ回っていると思ってまず間違いない。
女子生徒を15人全員ここにいるのも、森を駆け回る10人はやられない前提で、防衛の男子生徒5人を15人掛かりで回復する戦法か?
よく考えてあるが、10人の男子生徒に信頼を置き過ぎではないだろうか。
大体の情報を把握し終えた時、ようやく背後からの足音に気付く。
微かに聞こえていたのが、徐々に大きくなり近付いてくる。
後ろを確認してる暇はもうない。
「犬子ッ!ちょっとだけ我慢しろッ!」
脇腹に手を回して、目一杯左に飛び込む。
直後、飛び散る地面の土。
人が出せる威力ではない蹴りが俺の元いた場所を襲っていた。
あと数秒でも遅れていれば、あれの餌食になっていたと思うと恐ろしい。
「こんな攻撃するのはだ……れ…だ。お前、……どうして」
「ガッハッハッ!久しいのぉー!相棒ッ!元気だったか?」
「知ってる人ッスか!?い、今殺そうとして来たのに!?」
状況が飲み込めない犬子がパニックでワタワタとしている。
知ってるも何もあるかよ。
だってコイツは、この学校を落ちたはずの俺の"親友"なんだから。
「お前、秀恋は落ちたって言ってたじゃねーか」
「かーちゃんが、落ちてるも同然とか言うから真に受けてたら、どうも違うらしくてよ!補欠合格っての?は、空きが出来れば入学できるみてーでな」
「で、偶然空きが出来たと?」
「そう言う事だ!ガッハッハッ!驚いたか!」
「あぁ、驚いてるよ。補欠合格の意味も知らないアホがいるなんて」
肌の色は日に焼けている。
そして、筋肉が異様なまでに発達した身体はどこの漫画?と言いたくなるくらいムキムキだ。
何より、豪快すぎる性格が彼を彼たらしめる。
剛山男というのはそういう生き物だ。
「時に天命よ。横にいる女の子は、これか?」
小指を立てる男。
古臭い表現方法だ。
同じ年齢とは思えない。
「違うっての。それより、お前敵なんだよな?」
「そうだなッ!俺は4等級クラス!天命とは別クラスだ!つまり、ここでバチバチにやり合うという選択肢もある」
「後ろの牢屋守ってるのはクラスメイトか?」
「質問ばかりの男だなー。そうだ。だったら、どうした」
これ以上騒がれたら、守りが手薄になっても男の援護へ向かってくる。
動くなら、今しかない。
犬子を置いて走り出す。
地面を強く蹴る。
出来るだけ男から十分に距離を取った。
「逃げる……なんて事は無いよなッ!相棒!久しぶりの喧嘩といこうぜッ!」
助走はこれくらいで良いか。
「犬子、回復は任せたぞ」
「わ、分かったッス」
あの馬鹿に数的有利が通用するとは思えないが、回復が出来るという利点はある。
戸惑う犬子がどこまで冷静に対応出来るかは疑問だが、最悪自ら触れに行けば良い。
後はアイツと俺とのシンプルなぶつかり合いだ。
男に弱点があるとすれば、小回りが効かないところ。
背後を取れば、攻撃は通りやすい。
あくまでも通りやすいだけで絶対ではないけど、ルールのある恋愛祭においては致命的な弱点だ。
「漢なら正々堂々ドンッと真正面から来んかい!」
「そんなアホいねーよ」
背後は取れた。
これなら簡単に触ることが出来る。
「詰めがいつも甘いな!考えが狭くなっている」
「脳筋キャラがちゃんと説教するなよ」
手を伸ばす。男までの残りの距離は指の関節1つ分にも満たない。
ただ、俺の手が届くよりも先に男が大きく息を吸う。
「敵襲ーーッ!」
「お前ッ!ずるいぞ!自分から正々堂々って言ったくせに」
「知恵だ!知恵!」
最悪だ、今の大声で4等級の生徒達は動き出す。
アイツから勝負に水を差すとは予想外だ。
それだけ4等級クラスの生徒に徹していると言うことだろう。
ここは大人しく逃げるしかないのか。
……いや、腹が立つ。
理性的で無ければならないのは分かるが、どうしても我慢が出来ない。
アイツは今の今まで同じ学校にいることを知らせなかったんだぞ?
クラスに乗り込んでくるとか色々選択肢はあっただろうに。
私的であるが1発だけは殴りたい。
「歯食いしばれッ!アホッ!」
「そうこないとな!相棒!」
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