035話 異様な男達
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チャイムの音が唯一嬉しく感じる放課後。
今日は勧められていた部活動見学にでも行こうかと思っている。
ポケットに閉まった携帯を取り出す。
彩がメッセージで送ってくれた部活の一覧を眺めながら、どこへ行こうかと当たりを付けることにした。
「そういえば、小白は何か見学したいところあるのか?」
隣にいるのは小冬小白。
彼女もまだ部活が決まっていない生徒の1人だ。
少しずつ見学はしているが、どこも決定打に欠けるらしい。
「ここを見る」
「えっ?まじ?いや、止めやしないけど、なんか意外だな」
「そう?ちょっと興味ある」
当たり前の様に俺の膝に座って、同じ画面を見ながら指を差す小白。
そこに書かれていたのはボクシング部だった。
口では意外だなんて言ったけど、正直意外どころの騒ぎではない。
本人はやる気満々らしく、シャドーをやってみせるがか弱いパンチが空を切るだけ。
「まぁ、モノは試しだ。行ってみるか。見学だけなら、させてもらえるかもだし」
「うん」
誰もいない廊下を歩いて部室棟へ向かう。
今日は快晴。
外から聞こえて来る部活動生の掛け声が、晴れた空の青さを強調する。
今では当たり前に使われているエモーショナルという言葉は、この為にあるのだろう。
部室棟は教室棟の各階と繋がる渡り廊下を抜けた先にある。なので、移動時間は然程掛からない。
しかし、部室棟は教室棟よりも広い。
各部活に、適切な広さの部室と部活動の行うスペースを設けているらしい。
グラウンドも野球やサッカー、テニス、陸上などで場所が違うので、みんなが想像している何倍も敷地面積はある。
なんていう映像化向けに説明を入れながら、ボクシング部の部室へと辿り着いた。
外に部活をしている音が漏れ出るものかとばかり思っていたが案外静かだ。
ガラガラと戸を開けると、薄暗い部屋の中で何人かの生徒がいるのが見えた。
まだ準備中だったか?そんな事を考えながらも声を掛けようとする。
「んん?なんだぁ?」
先に気付いたのは相手の方だった。
「なんか来てんぞ?昇也、ってお前また大音量で音楽聴いてやがんな。チッ、めんどいなぁー」
奥から頭を掻いてて部員の1人が出て来る。
気怠げな雰囲気を纏っているのが、逆に強者感を演出していた。
「あれ?あれれ?おまっ、天命じゃね?暴れ鬼の天命!」
近付くとはっきり顔が認識出来たようだ。
ただ、あまり喜ばしい反応では無かった。
ちょっとした有名人の俺は、ここでもダサい異名が広まっている。
でも、いつもと1つ違うことがある。
殆どの人は嫌な顔をするのに、彼は何故だが笑顔だ。
好意的に接する人間は数少ない。
そして、その大半は俺側の人間だ。
嫌でも裏に隠された意図を探ってしまう自分がいる。
「見学とかやってますか?ボクシング部」
「ボクシング部?あぁ、ボクシング部、見学ね。良いよ、見せてやるよ」
目付きで分かった。
今までに何度も見て来た目。
こいつはきっと……、
「ほらよッ!!!1発、殴ってやるぜ!天命!」
平気で人を殴るタイプだ。
「おいおい、この距離でも反応するとかやっぱバケモンだな」
幸い、相手は本気では無かったので、片手で受け止められた。
「ボクシング部なのに、素人相手に素手で殴り掛かるのか?」
「まだ俺達のことボクシング部だと思ってんの?アイツらならとっくに辞めたっつの」
辞めた?それならここにいる奴らはボクシング部と無関係ということか?
なら、何故ここにいる。
理由として思い付くのは碌でもない事ばかり。
そんなことよりも気にすべきなのは、後ろにいる小白の事だ。
万が一、流血沙汰になったら、小白まで巻き添えになってしまうかも知れない。
ボクシング部として機能していないなら、ここに長居する理由もないのでさっさと立ち去ろう。
「おい、天命。俺、お前と同じ1年の3等級クラス、獅子倉レオって言うんだよ。あぁ、こっちのイヤホンしてるのが、音無ヴォルフガング昇也。後は取り巻きだから覚えなくて良いや」
去り際背後から声を掛けれ、振り返る。
「殴り掛かっておいて、自己紹介とかイカれてんのか?」
「良く言われる」
その笑顔もまた怖い。
関われば関わる程、身に危険が及ぶタイプだ。
声を掛けられ立ち止まってしまった自分を恨む。
「恋愛祭楽しみにしてんぜ?殴り合いだと良いなー。ボクシング部の奴らは手応え無さ過ぎたしよ。お前と本気でやる方が興奮すんぜ」
「お前、可哀想な奴だな」
「あぁ?可哀想?冗談はよせや!俺はこの学校でお前と出会えて最高に楽しいぜ?」
「悪いけど、お前の相手をするつもりはないぞ」
「ハァッ!分からないだろ?まだ高校生活は始まったばかりだ。もしもってこともあるだろ?」
獅子倉が後ろに隠れていた小白を一瞥する。
俺と手合わせする為だったら手段を問わないという脅しだ。
軽く睨みつけた。
そんなことをするくらいなら、直接俺に来いという意味を込めて。
これ以上相手をするのも無意味だ。
何か言葉を掛ける訳でもなく、黙って戸を閉じた。
「べぇーーー!!!」
扉を閉じた途端に強気になって舌を出す小白。
思わず笑ってしまいそうになる。
「あんなの良くない」
「そうだよな。後であれは教師に報告しておこう」
「そうしよ。悪い事はダメ」
ボクシング部は見学出来なかったので、諦めて次の場所へ移動を始めた。
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