034話 激闘!天野VS雨水!
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簡易的に作られた円の中で俺と雨水は向かい合い立っていた。
2人が待つのは、斉藤の合図。
音が聞こえたと同時に始まると思って良い。
勝ったら何か貰えるとか、負けたら何か失うとかそんな賭けはしていないけど、どこか張り詰めた緊張感がある。
プライドと言ったら大層な物に聞こえるが、概ねそんなところだ。
「よーい、スタート!」
まずは様子を……
なんて軽く考えていた合間の出来事だった。
「いきなりかよッ!」
姿勢を低くして、懐へと飛び込んでくる雨水。
いつもの不安そうな表情とは違い、獲物狩る鋭い目付きをしていた。
意表を突かれたというよりは、普通であれば気付いていても反応出来ないというのが正しい。
体勢を崩す為の足払い。
地に手を付け一層低い体勢からの攻撃。
土を這う足の音が耳にまで届く。
負けじとこちらもバックステップ。
円のギリギリ内側まで移動して、相手を誘い込む。
相手が深く踏み込んでくれば、攻撃を躱して外へ出す。
「どうやら、自信あるってのは嘘じゃないみたいだな」
「拙者、一撃で終わらせるつもりだったのに。容易く去なされるとは」
「お互い怪我しないようにねー」
瞬きをする合間の出来事に戸惑いながらも忠告する斉藤。
怪我をしないようにするのは、俺も理解はしているがどこまで歯止めが効くか。
気を抜かない勝負。少しでも力加減を間違えれば傷の1つくらい簡単に付くぞ。
雨水は地面に手を付けたまま、向きを変え背を向ける。軽く地面を蹴った反動と、腕の力だけで顔を目掛けた蹴りを放った。
「おいっ!顔は無しだろ!バトル漫画じゃねーんだから、こんな激しい戦闘シーン挟んでくるなっての!」
咄嗟に足首を掴む。
これで勢いは無くなる。
俺の経験則がそう言っていた。
「……まだでござ」
そんな雨水の呟きが聞こえた頃。
掴まれている足を軸に、空中に浮かんだ状態での回し蹴りが飛んでくるのが見えた。
1秒にも満たない出来事。
足首を離しこそしたが、雨水の対空時間が長く体勢は崩れない。
躱すには間に合わない。
腕を立てて、側面から攻撃を防ぐ構えを取る。
見た目に反した身体に響く重い蹴り。
よろめきながらも倒れないように地を踏み込む。
直撃したらと怪我どころでは済まなかった。
血が疼くのかどうかは知らないが、入り込み過ぎだろ。
冷静にさせるため、ここは俺も反撃に出るしか───。
「はい、そこまで。雨水くんの勝ちだね」
斉藤がパンッと1回手を鳴らす。
そこでようやく気が付いた。
俺の足は既に円からはみ出していたのだと。
冷静でなかったのは俺の方だったらしい。
殴り合いばかりが脳裏に過ぎって、最後の最後で勝敗の付け方が頭から抜けていた。
「いやー、2人ともすごいねー。ねっ?二階堂くん」
「全然す、すごくないけどね。ワイだって、あれくらい出来るし?頭に血が上って、気を失って、目覚めたら目の前にいた奴らが血まみれになって倒れてたとかあるし」
「あっ、もしもし警察ですか?目の前にヤバい奴いるんで捕まえてください」
「ちょっ、冗談ですやーん」
横でアホなやり取りを見せられて場の空気が和む。
やはり斉藤は空気を読むのが得意らしい。
決着は付いたので、疲れたのか地面に尻を付けて座り込んでいる雨水に、手を差し伸べる。
「お疲れ、やるな雨水。忍術なんて要らないレベルだろ」
「そういう天野くんの方が、やるでござるな。今回は円の中でルールがあったから勝てたでござるが、そうでなかったらと思うと……。最後の瞬間で特にそう思ったでござ」
「謙遜するなよ。恋愛祭で絶対活躍出来るから自信持てって」
「天野くんに言われたら、嬉しいでござるな」
俺でなくても褒めると思う。
純粋に身体能力が高いだけでなく、身体能力を無駄にしない発想力があった。
足首を掴まれた人間が取る行動は、決まって振り解き距離を取ろうとする。
まさか、回し蹴りに発展するとは思いもしなかった。
「どうする?僕達もやってみる?二階堂くん」
「冗談キツいぜー、斉藤ボーイ。あんなの見せられた後にワイらがやってもお遊戯会にしか見えないやん」
「分からないじゃないか。僕が青白いビームを掌から出すから、二階堂くんの方で黄色のビームを出してくれれば。そこから宙に浮いて……」
「残念ながらワイは、エリートな一族ではないんだなコレが」
自分達もやってみないかと冗談混じりに提案した斉藤だったが、二階堂は乗り気ではないらしい。
その後は通常通り、基礎的なトレーニングに戻る事に。
体力的には自信のあった俺も、最後の方には息をするのも苦しいくらいには疲れていた。
恋愛祭まで残り時間はそうない。
今からでも体力作りくらいはしておくべきかもな。
「頑張ってるね、諸君!良い事だよ。動いてお腹空いたんじゃない?」
リビングから様子を見に来たのは、小戸野だった。後ろには、日纏や小白、犬子もいるみたいだ。
「おにぎり作ったから食べてよ!JKの作ったおにぎりなんてお金払っても食べられないんだからさー」
「おにぎり!おにぎり!おにぎり!」
二階堂が真っ先に飛びつく。おにぎりに反応したのか、JKに反応したのかは微妙に分からない所だ。
「じゃあ、俺も」
大きめの白い皿に並べられていたのは形も大きさもバラバラなおにぎりだった。
どれを選んだとして大した差などないだろうと思い、パッと取る。
何となく1番頑張って作ったんだろうなというのが伝わったおにぎり。
決して綺麗な三角形とは言えないけど、これにした。
「うぐっ!?」
隣で苦しむ二階堂。
そんなに慌てて食べるからだ、と思っていたらどうやら違うらしい。
「か、辛っ〜〜〜!!!」
水を求めて、靴を脱ぎ捨てキッチンへ。
どうなってんだと小戸野を見ると、彼女はニヤッと笑って説明した。
「ロシアンルーレットおにぎりー!何個かタバスコ入りがあるから気をつけてね!」
危険性に言葉を失う。
自分の手に持ってしまったおにぎりは大丈夫なのかと凝視。
外からの見た目では分からないようになっているのが姑息に感じる。
ええい、こうなれば勢いでいくしかない。
意を決して豪快にかぶり付く。
「あっ、うまっ」
具は入っていなかったけど、疲れた体に塩分が染み渡る。
もう一口を体が求めてしまう。
本能に従い、かぶり付く。
やはり美味い。
気付けば、あっという間に手からおにぎりは消えていた。
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