033話 君の強さを示す方法
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「始めにウォーミングアップとして、簡単な忍術からやっていくでござる」
簡単な忍術と言われてもピンと来るものはない。
例えば、初日に見せてくれた空蝉の術だって、気まずい形でこそ終わったが原理は謎のままだ。
「これでござる」
見せたのは何の変哲もない布。
これで今から何をしようというのか。
全く想像も付かない。
想像が出来ないからこそ、気になる。
「じゃあ、いくでござるよー!」
手の届かない範囲まで距離を取り、指を3本立ててカウントダウンを始める。
ゆっくりと折られていく指を眺め、期待が膨らんでいく。
そして、指が全て折り畳んだ時、雨水は動いた。
空に舞う布が徐々に世界へ溶け込む。
比喩表現などではなく、本当に。
言わば、透明に。
透明になっていく布は、雨水の方へと重量によって落ちていく。
ひらりと地面に落ちた時には、人1人が完全に消えていた。
「これが1番簡単な隠れ身の術でござ」
何もないところからパッと顔を出す雨水。
どう、簡単でしょ?みたいな顔をしているが、そんなのはどうでも良い。
気になるのはこの不思議な布の方だ。
雨水から強引に剥ぎ取って、みんなで鑑賞会を。
手触りは普通だなとか、どうすれば最初の色に戻るのかとか。
「すげーな、全く原理が分からねー」
「これって売ったらいくらくらいになるかな?億とか普通に行くんじゃない?」
「ふっ、斉藤氏は甘いな。何の為の共同生活だと思っているのか。女子の裸を拝む為。これさえあれば、風呂に入った女子生徒を……デュフ…デュフフフ」
「そんな使い方しないで欲しいでござ!」
後ろから不思議な透明マントを奪われた。
面白そうな玩具を見つけたと思ったのに。
また遊ばれてしまっては敵わないと、大事そうに懐に仕舞われてしまった。
結局の所、変わり身の術はあの布がないと成立しないので、練習もクソもない。
俺達は何を見せられたのだと思いながらも、諦めて他のメニューに移った。
空蝉の術や縄抜けの術など、一通り使えるものは見せてもらったが、はっきり言って地味。
もっと火遁とか水遁とか、パッと見ただけで忍術だと分かるものを見せてもらいたい。
本人にそう伝えては見たが反応は微妙だった。
「今見せたのが基礎、斉藤くん達が言うような火遁とかは中級、瞳術や影分身、影縫いとかは上級者向けでござる。ちなみに中級は練習中で、火遁はこの通り」
うんうんと呻きながら、全身に力を込める。
「どりゃーーーーー!!!」
溜め込んだ力を一気に解放。
これであの火遁の術を!
……ぽっん
「どうでござるかー!」
ふっーと額の汗を拭う雨水の掌には、蝋燭に灯されたくらいの小さな小さな火だった。
「おいっ、これなんだよ」
「見て分からないでござるか、天野くん?火遁の術でござる」
「お前も苦労してんだな」
「ぷっ、くくく。これくらいならワイの方が大きな炎を出せる。喰らえ、"神聖なる炎"!」
普段は使用用途のないオイルライターを、無駄に音を鳴らして着火する。
こんなくだらないノリなのに、確かに雨水よりも火は大きかった。
「どんぐりの背くらべだな」
「本当にそうだね。まぁ、雨水くんの方が無から生み出してるって点で若干凄さはあるけどね」
「にしたって、あの大きさなら大した役には立たないだろ」
「それもそうだね。うーん、なんか得意な事でもあれば……あっ、そうだ」
手をポンと叩く斉藤。
何かを思いついたらしい。
ただ、斉藤だからな。余計なことでなければ良いんだけど。
「忍術の不得意な忍者ならさ、体術はどうなの?ほら、忍術でアドバンテージを稼げないかって思考錯誤してたけどさ、結局のところシンプルに運動神経良ければそれで良くない?」
「で、どうなんだ雨水。お前、足とか腕に数トンの錘とか付けてないのか?」
「そんなことしたら死ぬでござるよ。あれは忍者の中で格上でござる。でも、良いことを聞いてくれたでござるな。何を隠そう、この雨水影丸、同年代の男子よりは運動神経に自信があるでござる」
得意気に鼻を鳴らす。
長所があるのは良いことだ。
あの雨水が自分でも言うくらいだ、相当の自信があるのだろう。
「じゃあ、実際に見せてよ」
「見せる?何かやるでござるか?」
「いるじゃんか、ここに。丁度良い人が」
おい、斉藤。俺の事を指差すのはやめろ。
「だって、何を隠そう天野くんは、暴れ鬼の天命と呼ばれるくらい喧嘩強いんだよ?だったら、彼で雨水くんの実力を見せてもらおうってこと」
「あのな、俺は喧嘩はしないって決めたんだよ」
「喧嘩じゃないさ。クラスメイトのストロングポイントを探す為、一肌脱いでもらうだけの事だよ」
「うーん、まぁ、そうか?そういうなら」
斉藤に上手く丸め込まれた気もするが良いか。
相手は忍者、ちょっとだけ楽しみな自分もいる。
しかし、雨水はそうでもないらしい。
顔が引き攣っている。
「安心しろよ、怪我しないように手加減してやるから」
親切心で言った。
きっと俺が衝動的に殴り続けるとでも思っているだろうから。
「せ、拙者は強いから手加減なんて要らないで……ござるが、怪我をするは嫌なので程々にお願いするでござ」
「強気なのか、弱気なのかどっちだよ」
「それじゃあ、この円から出た方の勝ちね。怪我だけしないようにすれば、どんな攻撃もアリってことで」
軽く腕を回す。
お手並み拝見といかせてもらおうか。
いじられてばかりの雨水だが、ただのネガティブな忍者ではないことをここで証明して欲しい。
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