029話 迷子の菜々ちゃん
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「どうした?迷子かぁー?」
「うわぁーーん!!!」
「親と来たの?それともお兄ちゃんとかお姉ちゃん?」
「うわぁーーん!!!」
「ったく、しょうがねーな」
やはり軽くパニックになっているらしい。
何を聞いても泣いてばかりだ。
子供の頃ってのはそんなもんだよな。
「良いか?俺の手をよーく見とけよ?」
指を器用に組みあげて、パッと生き物をつくる。
「うぅっ、……カエルさんだ」
鼻を啜りながらも、何が出来た答える。
やはり子供はこういうのを見せられると答えたくなるもんだ。
「じゃあ、これは?」
このまま、次の問題に入る。
ちょっと回り道にも思えるが、まずはこの子のいつもの調子を取り戻す事が重要だ。
「オオカミさんだ!すごい!すごい!」
「おぉー、正解!君、動物詳しいんだね!」
まぁ、本当はキツネだったんだけど、不正解にすると気分を損ねそうだから正解にしておく。
俺としても、厳密に答えて欲しい訳じゃないし。
「君の名前、教えてくれるか?」
「ううん、ダメ。ママがしらないひとにおなまえはおしえちゃダメだって」
「偉いなぁー!ちゃんとママの言う事守れて」
この歳で親の言いつけをちゃんと守れるとは。
教育が良いのか、この子が賢いのか。
頭を撫でて褒めて上げると、目を細めながら嬉しそうにする。
「あのね!ママもね!よくナデナデしてくれるの!なーちゃん、すきなの!ママのナデナデ!」
あまりにも嬉しかったのか、勢い余って自分の名前を口にしている所が一層子供らしさを際立たせる。
「……ママ、どこいったのかな?」
「天命様、どうしましょうか?サポートセンターがあると思うのでそこまでお連れするのが1番だと思いますけど」
「それが1番良いか」
親御さんもきっと血眼になって探しているはずだ。
だから、1番最初に思い付くであろうサポートセンターで待っておくのが無難だろう。
仮にサポートセンターへ来なくても、こちらの方から迷子のアナウンスが出来るので尚更安心出来る。
どうやってその事をなーちゃんに伝えるか。
一応、それなりの警戒心は持っている訳で、どこかへ連れて行こうものなら、また泣き出してしまうかも分からない。
かと言って、事情を説明したとしても幼い子には理解が難しい話だ。
「ねぇー、てんめい!アイス!アイスがあった!」
こっちの心配を他所に、近くにあったアイスクリーム屋に気を取られている。
食べたいとは口に出して言わないが、見えない涎がダラダラと垂れている。
仕方ない、ここは1つ機嫌取りに買ってやるか。
「よしっ、あのアイスを3段買ってあげる。だから、その後はちゃんとママ探そうな?」
「いいの!?ありがとうてんめい!」
多分、この子にはアイスを買ってあげるという部分しか聞こえてないんだろうな。
まぁ、それでも良いけど。
はぐれない様に手を繋いで歩く。
俺に子供はいないけど、早くも親になったような気分だ。
反対側の手を彩が繋いでいるので、余計家族みたいに見える。
「ほら、落とさない様に気を付けろよ」
「うん!わかった!えへへ!」
オレンジとバニラとソーダの3段のアイス。
本人はコーンタイプが良かったみたいだけど、溢しそうな気がして、カップタイプで我慢してもらった。
本人はアイスが食べれたら何でも良いみたいで、少しも気にしている様子は無い。
「歩きながら食べたら行儀が悪いから、ちゃんとここに座って食べろよ」
「はーい!」
ベンチに座って、落ち着いて食べさせる。
サポートセンターに行くのもう少し後になりそうだなと思いながらも、焦られてはいけないのでゆっくり見守ることにした。
「菜々!菜々!どこなの!」
女性の必死な声が聞こえた。
もしかするとこの子の親か?
ベビーカーを押しているので、走ったりは出来ないみたいだが、焦りは十二分に表情から読み取れる。
アイスに夢中のなーちゃんの肩をとんとんと叩き、確認してもらう。
「ママ……」
視界に母親が入った途端、走り出して母親の下へ。
その手にはしっかりとアイスのカップが握れていて、ちょっと笑ってしまいそうになる。
母親はごめんねと何度も謝りながら、菜々ちゃんを抱きしめた。
それと同時に、安堵感でいっぱいになった菜々ちゃんもまた泣き始めた。
最初は子供から目を離すなんて、酷い親だと思ってしまっていたが、俺の考えは的外れだったようだ。
「すみません、貴方達がうちの娘を見ていてくれたんですよね?ご迷惑をお掛けしました」
綺麗に90度腰の曲がった謝罪に、どうすれば良いのかとたじろぐ。
「いえいえ、大丈夫ですよ。無事に再会出来て何よりです」
「そうですよ。お子様とはぐれてしまうのは良くある事だと思います」
「本当にありがとうございます。なーちゃんもお礼言って」
「ありがとう!てんめい!」
母親と再会して、完全にいつもの調子を取り戻した菜々ちゃん。
ニコニコの笑顔でお礼を述べる。
その後も、アイスのお金がどうとか色々とやり取りはあったんだけど、最終的には何も受け取らなかった。
そっちの方が良いことをした感あるし、お金が欲しくてやった訳でもない。
それよりも、最後まで後ろを見ながら手を振ってくれた菜々ちゃんの気持ちの方が何よりも価値がある。
そんなクサイことを心の中で思った。
「懐かしいな」
「何か思い出したんですか!」
「うん?あぁ、いや、俺もよく迷子になったからさ。あの子の親と違って、俺は何度も怒られたけどな」
「そうだったんですね。ちょっとだけ想像出来ます」
「あっ、でも1回だけ怒られなかった時があったな」
確か、あの時も今日の様に迷子の女の子を見つけたんだ。
自分も迷子になってる癖に、格好付けてその子の手を引いて一緒に親を探したんだっけ。
その時だけは親から良くやった、お前は男としての義務を果たしたんだって褒められたんだよな。
「そうですか。もしかして、自分も迷子なのに迷子の子を助けたとかですか?」
「えっ?そうだけど、何でそれを?」
ぼんやりとした幼少期の記憶の中で、女の子の顔が徐々に鮮明になっていく。
「まさか!あの時の迷子って彩だったのか!?」
「もぉー、遅いですよ、天命様。思い出していただけないかと思いました」
「いや、大分昔だったからな。それに彩だって大分成長してるし」
「ふふっ、魅力的な女性になったと思いませんか?」
「……一般的にはそう見えるんじゃないか?」
直接褒めるのは恥ずかしく言葉を濁す。
彩もよくそんな昔の事覚えてたな。
それにたったそれだけの事が惚れる理由になるのか?
迷子になったのを助けて十数年恋焦がれるって、大分一途なんだな。
(きっと天命様はこれだけって思ってるかも知れませんね。でもね、それだけじゃないんですよ?本当に好きになったのは2度目の出会い。私に、運命というものが存在するのだと教えてくれた、あの時……)
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