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恋愛学校の落第生共よ、恋を知れ  作者: 風野唄


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24/52

024話 師曰く

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

「待って!待って!待って!やばいかも!ちょっと無理かもー!緊張してきたー!だってさ、だってさ。どんな顔してかげちゃんに会えば良いわけ?絶対、顔見れないよ」

「だぁー、もう!ここまで来て、やっぱり無理は無しだろ!同じ寮で生活してんだぞ?どうやって今後過ごすつもりなんだよ」

「うっ、それはそうなんだけどさー」


寮に着いたというのに、今更怖気付く日纏へ喝を入れる。

喧嘩するのは結構だが、仲直りをしないままというのは良くない。

クサイことを言うが、出会いは一生物だ。

何にも変え難い価値があると、俺はあの日以来常々思う。


「ふざけんなよ、キャラ付けだけ濃くした陰キャ野郎!いつまでウジウジしてんだ!」


まだ室内に入っていないのに、聞こえる怒号。

声から考えるに怒鳴っているのは斉藤か?

となると怒られているのは雨水ということになる。

俺が寮を出る前は、任せておけば雨水の方は何とかするから的な雰囲気を醸し出していたのに。


玄関の扉を乱暴に開けて、靴を脱ぎ捨てる。

日纏だって同じようにそうした。

俺達のいない間に何が起こったのか。

その目で確かめるしかないと思ったから。


同じく乱暴にリビングへと繋がる扉を開けると、強烈な光景が広がっていた。

カーペットの引かれた床で、取っ組み合いの喧嘩をしている雨水と斉藤。

服は乱れ、髪はぐしゃぐしゃ、そしてお互い一歩も譲らずに、上下が入れ替わりながらマウントを取り合う。

マウントの取り合い、物理的な意味で見たの久しぶりなんだけど。


「お前が思ってる事言わないから、日纏ちゃんが愛想尽かしたんだろ!」

「拙者だって、ホントは言いたいござ!言いたいけど、言えないでござる!」

「ええい、まどろっこしい!こうなれば奥の手だ!催眠術、発動!」


指をパチンと鳴らす。

これが彼の催眠術の合図だ。

どんな催眠術を掛けたのかは、見ていれば分かる。


「あ、あの!日纏さん!さっきはごめんでござる!」


さっきまでの喧嘩はどこへやら。

いきなり立ち上がって、ピシッと背筋を正し、仰々しくも言葉を紡ぐ。

俺は邪魔になるので、そっと場所を移して静かに2人の行末を見守る。


「良いねー、素直になる催眠術。今の彼にはピッタリなんじゃない?」


やる事はやったと言わんばかりの満足気な表情で、俺の隣へやって来た。

何があったのか聞きたい所だが、この状況、言葉を発することは躊躇われる。

なので後でゆっくりと問い詰めることにしよう。


「バカ……なんでかげちゃんが謝んの」

「拙者、弱音を吐いちゃったでござる。あんなに応援してくれて、背中押してくれたのに。本当に……情けないでござる」

「ううん、かげちゃんはカッコいいよ。あーし、まじで尊敬してる。だから、応援しようって思ったの。まぁ、ちょっとだけ、忍術も使ってみたいのもあったけど」


俺の方をチラッと見て、恥ずかしそうに笑う。

俺も思わず笑ってしまいながら、さっさと雨水の方を向いてやれとジェスチャーを送る。


「あーしもごめんね。でも、謝るのはこれで終わりにしよ?謝るより、もっといっぱいのありがとうを言いたい。かげちゃんと、このクラスとそんな思い出を作りたい」

「うぅ、拙者、頑張るでござるから!恋愛祭、絶対に勝って日纏殿にありがとうって言わせて見せるでござるから!」

「うん、……待ってる」


沢山、泣いている雨水の背中を摩る日纏。

2人で笑いながら泣いて。

本当に忙しい奴らだな。

こんだけ人騒がせなことしておいてな。

でも、こんな光景をきっと青春と呼ぶのだと思う。


「さてと、あっちは済んだみたいだから。ちゃんと話を聞かせてもらおうか?斉藤」

「天野のアニキも酷いな。僕が何かしたみたいじゃないか」

「あんな嘘くさい演技の喧嘩しててよく言うぜ」

「演技?なんのことかな?」


このとぼけた表情が絶妙にうざい。


「見てれば分かる。服が着崩れる程に暴れていたのに、体のどこにも傷がない。殴られたり、蹴られたりした形跡も。ただ、服だけを着崩したって感じだ。カーペットだって、シワひとつないぞ」

「流石、暴れ鬼の天命。喧嘩のことならスペシャリストってとこかな?」

「それだけじゃねーよ。催眠術、前回と違って雨水が勝手に掛かってんじゃんかよ」

「言葉を発さずに催眠を掛けることくらい出来るよ」

「催眠術も演技なんだろ。きっかけを与える為の演技。俺達が帰って来たのを協力者の誰かが伝えて、タイミングよく喧嘩を始めた。雨水は催眠術なんて、最初からこれっぽっちも掛かっちゃいない」


協力者ってのも、階段からコソコソとこちらの様子を窺っている犬子だろうな。

俺が慌てて寮から出てきたものだから、中に残っていた2人に事情を聞いたのだろう。

そこで3人で知恵を振り絞って考えた。

誰がこの案を提案したのかは分からないが、割と良い案だと思う。

やはり、三人寄れば文殊の知恵というのはあながち間違いではないらしい。


「師曰く、催眠術に掛かっているかどうかは術者にも分からない。何故なら、人の心は見えないから。だから、見せなければならないと。難しい話は分からないけども、雨水くんが催眠に掛かっていたかは、僕の知り得るところじゃないよ」

「いや、子曰くって、その漢字じゃないから。これだから。もっと言えば、子が指すのは師匠じゃなくて孔子先生だから」

「イシシシッ!そうだったかもね」


深くは聞かないことにした。

答えがどちらにせよ、雨水と日纏の関係性が壊れなかったことが正解だから。

そして、その立役者である斉藤を問い詰めるのも酷な話だと思う。


「何となく良い雰囲気じゃない、あの2人」


斉藤の言葉を聞いて確かにと思う。

俺達がいるのも忘れて、2人仲良くずっと笑い合ってる。

なので、足音を殺して階段を上がり、それぞれの部屋へと戻った。

ご覧いただきありがとうございました。

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