表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛学校の落第生共よ、恋を知れ  作者: 風野唄


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/52

023話 日は偶に陰り

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

気持ちが暗く落ち込んだ時、人はどうするのかを考えた。

そうすれば、自ずと日纏の場所が分かるような気がして。


まず、人目の避けられる場所。これは間違いない。

零れ落ちそうになる涙を堪えはするが、気付かない間に落ちている事だってある。

それを人に見られるのは嫌だろう。誰しもが、自分の弱い部分は隠したいものだからな。


他に条件はないか?

例えば、ベンチがあるとか、景色があるとか。

何か感傷に浸る時、つい求めてしまいそうな場所。

地図を見ながら、日纏の通ったであろうルートを予想する。

すると、1つの場所が天からのお告げの様に目に入った。


「やっと見つけた」


全く人のいない公園で、力無くブランコを漕ぐ日纏を見つけた。

公園で落ち込むのは、漫画やアニメの定番だと思い来てみたが、読みが当たったみたいだ。


「……天野くん、追い掛けて来ちゃったんだ」


彼女の赤く腫れた目。

ここへ俺が来るまでに時間は掛からなかったはずなのに、相当泣いたのだろう。


「あはは……。なんか、ごめんねー!勝手に盛り上がって、勝手に怒っちゃってさー。いつもこうなんだよね、あーし」


もう完全に涙は止まっているのに、少しでも証拠は残さないようにと、背を向けて服の袖で目頭を拭う。


「隣、座っても良いか?」

「んー、……良いよ。あーしのじゃないし」


少し躊躇いが見えたのは、まだ1人でいたい気持ちだったから。

それでも断れなかったのは、わざわざここまで追い掛けて来た俺へ罪悪感があったから。

なんとなくそんな気がする。

それでも、放ってはおけないので付け入る様にもう1つ空いていたブランコに座った。


「ブランコなんて乗るのいつぶりだろうな。ガキの頃だって、まともに乗った記憶ねーや」

「そう?あーしは、結構ブランコ見るとついつい乗っちゃうけどね。あっ、もちろん小さい子がいない時にだよ?」

「いやー、どうだろうな。一緒に遊んでる方がイメージ出来るけど」

「うーん、確かにそうかも。あーし、走り回っちゃう系だからさ、小さい子とは相性良いし」


止まっていたブランコをゆっくりと漕ぎ始める。

俺も合わせて心地良いペースで漕ぐ。

もっと高く漕ぐことも出来るけど、はしゃいでいるみたいで恥ずかしい。

なので、これくらいが丁度良かった。


「あーしさ、親が教師なんだよね。どっちも」

「えっ、まじで?」

「あはは!驚いた?みんな、これ言うと驚くんだよね。あーし、こんな格好してるからさ、親もヤンチャしてそうってよく言われる」

「ヤンチャとまでは言わないけど、驚きはするよな」


親の性格は子供に影響する。

全く同じとは言わなくても多少なりとも似るものだ。

教師の親と言われて想像するのは厳格な親。

あくまでもイメージの範疇だけど。

そうでなくても、子の派手な髪に着崩した制服を咎めるくらいはしそうなものだが。


「親がめっっっちゃ厳しくて。門限は18時とか、ピアノの稽古に行けとか、女の子は字が綺麗でないと困るから書道を習えとか。息の詰まりそうな生活を強いられそうになったの」


彼女は語り出した。

ぽつりぽつりと出る言葉には、どこか親への憎しみが込められている様に感じる。


「でも、習い事なんてどうでも良かった。我慢して通えばいずれ終わりが来るから。1番許せなかったのは、あーしの将来を勝手に決めたこと。俺達の娘なんだから、当然教師になれって。嫌って言えば、大声で説教初めてさ」

「母親もそんな感じなのか?」

「お母さんは真逆。何も言ってこなかった。お父さんが怖いの、あの人。黙ってお父さんの半歩後ろを歩いて、お父さんの言う事を適当に頷くだけ」


語るだけでも、腹の底に眠る怒りが湧いて出るらしく、綺麗にメイクの施された眉を顰める。

それでも言葉に出してスッキリする為には、言葉を続けるしかない。

感情を一気に爆発させないよう、クールダウンを挟みながら、また話し出した。


「だから、仕返しとして派手な格好を始めたの。最初は全然慣れなくて、みんなからもどうしたのって聞かれまくったなー。でも、次第にそれが板について来て、最終的に雑誌の表紙を飾るレベルになったんだから」


どう?すごいでしょ?ってギャルピースを決めてアピール。

俺はあぁ、すごいなと返すしかない。

すごいには色々な意味が含まれている。

親に立ち向かう勇気も、それを継続する気力も、全て。


「あーし、かげちゃんが羨ましかった」

「羨ましい?」

「そう、羨ましい。かげちゃんって、ガチの忍者一族っぽいじゃん?それでさ、本人に聞いてみたの。将来が決まってるって嫌じゃないの?って。そしたら、笑って、何1つ嫌じゃないって言ったの。自分に与えられた運命だからって。あーしはこうやって逃げてばかりの人生なのに、かげちゃんは偉いよ。受け入れるだけじゃなくて、全うしようとするなんて。その姿勢?覚悟?が羨ましかった」


俺からすれば、日纏も信念を貫き通している様に思える。

相手は家族だ。毎日顔を合わせる存在に反発するは簡単じゃない。


「練習を誘ったのはどうしてなんだ?」

「それはね、一緒に練習すればあーしも忍術使えるかなと思ったから」

「忍者になりたいの?」

「違う違う!忍術が使える様になったらさ、無敵じゃん?そしたら、自信が付いてもっとちゃんとお父さんと戦えると思うんだよねー」

「お父さんに手裏剣とか投げるなよ?朝のニュースでクラスメイトの顔は見たくないから」

「あはは!それはちょっと約束できないね」


話をして、自分の思いを語れたからなのか彼女の顔は晴れ晴れとしていた。

ブランコから勢い良く飛び出して、付いているかも分からない砂埃を軽く叩く。


「帰ろっか。ちゃんとかげちゃんにも謝らないとだし」

「あぁ、その方が良いな。雨水も言いたい事あるだろうし」


偶にはこんな日もある。

それが友達という存在だから。

オレンジ色の夕焼けが映える空を見ながら、詩的にそんな事を思った。

ご覧いただきありがとうございました。

よければ評価、ブックマーク、いいねお願いいたします。めっちゃモチベーションに繋がりますのでどうか、どうか!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ