023話 日は偶に陰り
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気持ちが暗く落ち込んだ時、人はどうするのかを考えた。
そうすれば、自ずと日纏の場所が分かるような気がして。
まず、人目の避けられる場所。これは間違いない。
零れ落ちそうになる涙を堪えはするが、気付かない間に落ちている事だってある。
それを人に見られるのは嫌だろう。誰しもが、自分の弱い部分は隠したいものだからな。
他に条件はないか?
例えば、ベンチがあるとか、景色があるとか。
何か感傷に浸る時、つい求めてしまいそうな場所。
地図を見ながら、日纏の通ったであろうルートを予想する。
すると、1つの場所が天からのお告げの様に目に入った。
「やっと見つけた」
全く人のいない公園で、力無くブランコを漕ぐ日纏を見つけた。
公園で落ち込むのは、漫画やアニメの定番だと思い来てみたが、読みが当たったみたいだ。
「……天野くん、追い掛けて来ちゃったんだ」
彼女の赤く腫れた目。
ここへ俺が来るまでに時間は掛からなかったはずなのに、相当泣いたのだろう。
「あはは……。なんか、ごめんねー!勝手に盛り上がって、勝手に怒っちゃってさー。いつもこうなんだよね、あーし」
もう完全に涙は止まっているのに、少しでも証拠は残さないようにと、背を向けて服の袖で目頭を拭う。
「隣、座っても良いか?」
「んー、……良いよ。あーしのじゃないし」
少し躊躇いが見えたのは、まだ1人でいたい気持ちだったから。
それでも断れなかったのは、わざわざここまで追い掛けて来た俺へ罪悪感があったから。
なんとなくそんな気がする。
それでも、放ってはおけないので付け入る様にもう1つ空いていたブランコに座った。
「ブランコなんて乗るのいつぶりだろうな。ガキの頃だって、まともに乗った記憶ねーや」
「そう?あーしは、結構ブランコ見るとついつい乗っちゃうけどね。あっ、もちろん小さい子がいない時にだよ?」
「いやー、どうだろうな。一緒に遊んでる方がイメージ出来るけど」
「うーん、確かにそうかも。あーし、走り回っちゃう系だからさ、小さい子とは相性良いし」
止まっていたブランコをゆっくりと漕ぎ始める。
俺も合わせて心地良いペースで漕ぐ。
もっと高く漕ぐことも出来るけど、はしゃいでいるみたいで恥ずかしい。
なので、これくらいが丁度良かった。
「あーしさ、親が教師なんだよね。どっちも」
「えっ、まじで?」
「あはは!驚いた?みんな、これ言うと驚くんだよね。あーし、こんな格好してるからさ、親もヤンチャしてそうってよく言われる」
「ヤンチャとまでは言わないけど、驚きはするよな」
親の性格は子供に影響する。
全く同じとは言わなくても多少なりとも似るものだ。
教師の親と言われて想像するのは厳格な親。
あくまでもイメージの範疇だけど。
そうでなくても、子の派手な髪に着崩した制服を咎めるくらいはしそうなものだが。
「親がめっっっちゃ厳しくて。門限は18時とか、ピアノの稽古に行けとか、女の子は字が綺麗でないと困るから書道を習えとか。息の詰まりそうな生活を強いられそうになったの」
彼女は語り出した。
ぽつりぽつりと出る言葉には、どこか親への憎しみが込められている様に感じる。
「でも、習い事なんてどうでも良かった。我慢して通えばいずれ終わりが来るから。1番許せなかったのは、あーしの将来を勝手に決めたこと。俺達の娘なんだから、当然教師になれって。嫌って言えば、大声で説教初めてさ」
「母親もそんな感じなのか?」
「お母さんは真逆。何も言ってこなかった。お父さんが怖いの、あの人。黙ってお父さんの半歩後ろを歩いて、お父さんの言う事を適当に頷くだけ」
語るだけでも、腹の底に眠る怒りが湧いて出るらしく、綺麗にメイクの施された眉を顰める。
それでも言葉に出してスッキリする為には、言葉を続けるしかない。
感情を一気に爆発させないよう、クールダウンを挟みながら、また話し出した。
「だから、仕返しとして派手な格好を始めたの。最初は全然慣れなくて、みんなからもどうしたのって聞かれまくったなー。でも、次第にそれが板について来て、最終的に雑誌の表紙を飾るレベルになったんだから」
どう?すごいでしょ?ってギャルピースを決めてアピール。
俺はあぁ、すごいなと返すしかない。
すごいには色々な意味が含まれている。
親に立ち向かう勇気も、それを継続する気力も、全て。
「あーし、かげちゃんが羨ましかった」
「羨ましい?」
「そう、羨ましい。かげちゃんって、ガチの忍者一族っぽいじゃん?それでさ、本人に聞いてみたの。将来が決まってるって嫌じゃないの?って。そしたら、笑って、何1つ嫌じゃないって言ったの。自分に与えられた運命だからって。あーしはこうやって逃げてばかりの人生なのに、かげちゃんは偉いよ。受け入れるだけじゃなくて、全うしようとするなんて。その姿勢?覚悟?が羨ましかった」
俺からすれば、日纏も信念を貫き通している様に思える。
相手は家族だ。毎日顔を合わせる存在に反発するは簡単じゃない。
「練習を誘ったのはどうしてなんだ?」
「それはね、一緒に練習すればあーしも忍術使えるかなと思ったから」
「忍者になりたいの?」
「違う違う!忍術が使える様になったらさ、無敵じゃん?そしたら、自信が付いてもっとちゃんとお父さんと戦えると思うんだよねー」
「お父さんに手裏剣とか投げるなよ?朝のニュースでクラスメイトの顔は見たくないから」
「あはは!それはちょっと約束できないね」
話をして、自分の思いを語れたからなのか彼女の顔は晴れ晴れとしていた。
ブランコから勢い良く飛び出して、付いているかも分からない砂埃を軽く叩く。
「帰ろっか。ちゃんとかげちゃんにも謝らないとだし」
「あぁ、その方が良いな。雨水も言いたい事あるだろうし」
偶にはこんな日もある。
それが友達という存在だから。
オレンジ色の夕焼けが映える空を見ながら、詩的にそんな事を思った。
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