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002話 ようこそ、最下層へ

貴方が2話目を読んでいるという事は、私は貴方の隣にいないでしょう。

なので最後のお願いをしようと思います。

……面白かったら高評価お願いします。

まずは1等級クラスから確認する。

自惚れている訳ではないが、万が一ってこともあるだろ?

自分の評価と他人の評価が違うんだしさ。

それにほら、隣にいる狛町も自分の名前が1等級クラスにないかと血眼になって探している。


「俺の名前は当然無いよな。そっちはどうだったんだ?狛町」

「……無かったッス。ま、まぁ、流石に1等級クラスは高望みし過ぎたッスよね。ほら、いくらウチが1億年の1人の美少女だからといって、よ、容姿で全て決まるって事もないッスもんね」


しどろもどろな受け答え。

顔からは汗がダラダラと垂れている。

さっきまでの高いテンションが一気に下がったみたいだ。


「めっちゃ動揺してんじゃねーか!どんだけ自信家なんだよ」

「だって、だって〜!モテたいッス!ウチだって1等級クラスに入ってモテモテになりたいッス!」

「意外だな。狛町って中学の時はモテなかったのか?」

「うーん、なんかモテないんすよねー。女として見れないとか、友達だと思ってたとか。ちょっとフランク過ぎるのが原因なんですかね」

「……強く生きろよ」


狛町の肩を掴んで、涙ながらに励ます。

今まで彼女の受けて来た扱いが容易に想像出来てしまう。

そして、この学校の目標がモテたいだけっていうのがより涙腺を刺激する。

顔だけはレベルが高いのに、願望がそこら辺の男子高校生となんら変わらないじゃないか。


「その励ましが逆に痛いッスよ。それにまだ諦めるのは早いッス!1等級がダメでも2等級があるッスから」

「大変ポジティブで良い事だな」


俺は5等級でなければ何でも良い。

狛町の説明を聞く限り、1等級以外は5等級を除き大差ないだろう。


2等級……2人とも名前は無い。

3等級……またしても2人とも名前が無い。


この辺りから緊張感が出始める。

残された4等級に入れなければ、晴れて落第生クラスの仲間入りだ。

華々しい高校生活のスタートダッシュをこんな序盤も序盤で失敗は出来ない。


お通夜並みの沈黙の中で狛町と目があった。

まだ落第生クラスと決まった訳でもないのに、目に大粒の涙を浮かべて青ざめている。

気持ちは分かるけど、泣くのはまだ早い。


不吉な予感が当たらないでくれと祈りながら4等級クラスの張り紙を確認する。


俺の苗字の頭文字は"あ"。

伊藤から始まった時点で落第生クラスが確定した。

周囲から底辺と謳われるクラスに決まったという事実が胸を締め付ける。

気分は落ち込んでしまっているが、それよりも気になることがあった。


狛町、せめて彼女だけでも4等級クラスに。


「ど、どうしよう。名前、無いッス。何度見ても無いッス」

「いや、まだ分からないだろ。5等級クラスに名前が無ければ、学校側の手違いって可能性も」

「もぉー、この世の終わりッスーー!明日から後ろ指指されてクスクス言われるッス。モテるどころか誰からも告白されずに3年間が終わるッス」


あ、ダメだコレ。

落ち込んだ空気に入った。

こうなれば戻ってくるのは難しい。


大声で泣き喚く狛町と隣にいる俺に視線が一気に集まる。

事情を知らない他者から見たら女の子を泣かせた最低野郎みたいだな。

ただでさえ5等級クラスなのに、入学式早々そんな噂まで出回ったら、今後の学校生活どうやって生きていけば良いんだ。


「……まぁ、今度なんか奢ってやるから元気出せよ」

「えっ?本当ッスか?やったー!奢りッス!タダ飯より美味いもんは無いッスからね!」


コイツ、あんなに落ち込んで奴が奢りってだけで立ち直りやがった。

変な振り付けの即興ダンスまで踊り始めてるぞ。

俺、騙された訳じゃ無いよね?

奢るという言葉を引き出す為の涙ではないよね?

そうだったとしたら何も信じられないんだけど。


「あっ、落ち込んでたのは事実ッスよ?でもでも、天命と一緒のクラスならそれはそれで良いかなって思ったッス」


彼女がニカッと笑った。

……しかーし!俺は狼狽えんぞ!

隙を与えれば、さっきみたいに揶揄われるのが落ちだ。

天野天命は学習する男。

ここは表情1つ変えずに能面と化す。

掛かってこい、狛町犬子!

今の俺に死角など無い!


「それとも、ウチと一緒は……嫌ッスか?」


ブレザーの袖を摘んで上目遣いで一言だと。

恐るべし、この破壊力。

You lose、そんな画面が目の前に出て来そうなくらい完璧な敗北をまたしても味わうことになるとは。


「きゃはは!また騙されてるッス!流石は"落第生クラス"ッスね!」

「いや、お前も同じだから!それでさっきまで泣いてたからな!」

「な、泣いてないッス!え、演技ッスよ。女の子は漏れなくどんな時にでも泣ける訓練が施されてるッスから」


どんな訓練だよ!

確かに男は女の涙に弱いとされているけど!

いつでも泣けるって聞いてしまうと本当の涙なのか疑いたくなるからやめてくれ。

えっ?違うよね?あれ演技じゃ無いよね?不安になって来た。


「ぐわぁーーーー!!!わ、ワイが落第生クラスだった件について!!!」

「びっくりしたー。な、何だ?」


横で小太りの眼鏡を掛けた男子生徒が地面に膝を付いて絶望していた。

どうやら、彼もまた落第生クラスに決まったらしい。

この世の終わりみたいな反応をしている。


彼だけではない。

続々と5等級クラスの張り紙の前へと人が集まり出す。

声にこそ出さない生徒が多いけれど、大半は絶望の表情を浮かべていた。


明らかに見た目が幼い少女。

ホストみたいな身なりの男。

双子の姉妹に、仮面を付けた男子生徒……etc.

パッと見ただけでも個性的なクラスであるのが分かる。


「ねぇ、見てよ。あれが落第生クラスの生徒よ」

「うげー、変な奴らばっかりだぜ」

「良かったー、あんな奴らと同じクラスじゃなくて」


聞こえないと思っているのか、聞こえるように言っているのか。

寄ってたかって落第生クラスの悪口を言い出す新入生。

それが同じ学校で同じ学年の生徒に向けて放つ言葉かよ。


「おい、悪口言うならせめて聞こえないところで言えよ。俺達だって、なりたくて5等級クラスになった訳じゃねーんだから」


我慢出来ずに思わず、口を出してしまった。

相手もまさか指摘されるとは思っていなかったのか、動揺が隠せていない。


「き、金髪癖毛で吊り目、それに額の傷!ま、まさか、"暴れ鬼の天命"!」

「……いつの話してんだよ」

「ひっ、く、来るなよ!化け物!」


思い出したくない過去を掘り返した挙句に、人を化け物呼ばわりとは、良く出来た教育を受けて来たんだな。

育ちが良いと俺みたい奴とは出会わないらしく、尻餅付いて震えている。

その光景が可哀想だったので、しゃがんであげて同じ目線で話し掛けた。


「大丈夫か?」

「クソッ!近寄んな!」


そのまま慌てて立ち去っていく悪口を言っていた生徒達。

聞こえる範囲での悪口は確かに無くなったが、今度は俺を見る視線が痛い。


「カッコいいところもあるんすね。ちょっと見直したッス」

「ちょっとは余計だ。もっと見直せ」

「それは今後に期待ッスね!暴れ鬼さん!」

「あっ、おい!それは言うなっての!」


励ましに来たと思えば、変な二つ名に触れて逃げ出した狛町。

跡を追うようにその場を去った。

気付けば軽い足取りの中で。

俺も昔は天命と同じでやんちゃしてたんだぜ?

ペットボトルを潰さずに捨てたり、トイレットペーパーを多めに使ったり。

おやっさんにはよく怒られたもんだぜ。

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