019話 恋愛祭、即ち青春
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恋愛祭……響きだけ聞けば甘美な青春を彩る行事の1つにしか思えない。
だけど、丹波先生の話をよくよく思い返してみると、嫌な予感がしてならない。
『──1年生の1学期の恋愛祭は、毎年運動量の多いものと相場が決まっているんだ』
運動量が多い恋愛祭ってなんだよ。
揉みくちゃになりながら、意中の男女を取り合うとかそう言うことか?
もしそうであるなら、想像するのも躊躇われるくらい恐ろしい行事だな。
死人とか出ていると言われたら信じてしまうそう。
「丹波先生、質問がございます。その恋愛祭というのはどのような行事なのでしょうか?」
ピシッと挙手をして質問する満導。
この場にいる全員の気持ちを代弁してくれた良い質問に、思わず少しだけ見直してしまいそうになる。
「ん?君達、恋愛祭を知らないのか?ネットとかではその様子が公開されているからてっきり知ってるものかと」
ほらと言わんばかりに自身の携帯の検索画面を見せる。
そこには秀恋高校のホームページがあり、学校行事等が記載されていた。
その一部として恋愛祭についても書いてあるようだ。
「各学期毎に行われる行事で、同学年同士の対決をするんだ。去年の1年生の1学期は、サバイバル宝探しゲームだったな。私は教師という立場で監視しているだけだったが、見てるだけでも大変そうだった」
「サバイバル宝探しゲーム?思ってたのとは全く違うッスね。文化祭的なノリのものを想像してたッスよ」
「あくまでこれは一例だ。ヒントを与え過ぎても良くないのだが、2学期は頭脳を使う内容であるのも毎年変わらずだな。体裁としては内容はランダムとなっているが、今年もおおよそ法則に則っていると思って良い」
そんな大事な事は先に言った方が良いですよ、丹波先生。
みんなふざけ終えた後なんですから。
「あのー、この服って選び直す事は出来ないんですか?」
「一宮、それは無理だ。種明かしされた後にもう一度というのは、公平性に欠けるだろ?」
「それはそうですが、このままでは……」
「負けてしまうと言いたいのか?それもまた仕方ない事だ。恋愛祭において、5等級クラスが勝ったことは一度もない。それでも皆驚かない。ここまで敢えてそう呼ばなかったが、君達は"落第生クラス"、何事においても始めから期待などされていないのさ」
事実を述べるだけの物言い。
感情に任せた怒りでも、差別的な感情から来る嫌悪でもない。
ただ俺達が置かれた現場を突きつける。
冷たい言葉の刃物が心臓を撫でた。
当然、痛みと苦しみを感じるべきだった。
それでも平然としていられる程に感覚が麻痺していた。
他のみんなが丹波先生の言葉をどう受け止めているかは分からない。
でも、きっと俺と同じだと思う。
人生は大半の人間が通る道がある。
目を瞑ってでも歩けるくらいに真っ直ぐな道。
良い意味か、悪い意味かは別として、その道から外れる人間が偶にいる。
このクラスはそんな人間の集まりなのだろう。
道を外れた人間は良く思われない。
マイノリティとして排除され、一線を引かれる。
そして、その線は決して跨ぐことは許されない。
そんな理不尽が人生だ。
だけど、いずれ慣れる。
長い道のりの中で傷付くということが当たり前になっていく。
そうでなければ生きてなどいけない。
「……なのちゃん先生も同じッスか?」
「同じというのは?」
「なのちゃん先生も最初から期待なんかしてないッスか?ウチらのクラスの担任になって、貧乏くじ引いたって思ってるッスか?」
「私の話か……まぁ、そうだな。今年は落第生クラスの担任と言われた時は血の気が引いたよ。それが何を意味するのかは言わなくても分かるからな」
厄介事を押し付けられた、そう思うのが当然だ。
丹波先生はまだ若い。
そういう役回りが回ってくることも少なくないのだろう。
「大事なのは私がどう思うか……なのか?君達はこう言われてどう思う、どうしたい。良いのか?私に言われっぱなしで」
俺達は変わり者だけど、丹波先生も大概だな。
嫌われ役に徹してでも、このクラスにやる気を出させようとしているのが見え見えだ。
狙いは分かっている。
今まで1度も恋愛祭という行事で、良い成果を残せていない落第生クラス。
そんなクラスが見せる逆転劇は、周囲の評価を変える可能性がある。
だから、俺達が少しでも認めてもらえるように、担任として動いているだろう。
「大丈夫、心配はいりません。俺達は勝ちますよ、先生」
俺は強くそう答えた。
「この世は結果が全てだ。口では何とでも言えるからな。でも、何故だか不思議と本当に勝ってしまいそうだから君達は面白い」
授業の終わりを告げる鐘の音が鳴る。
「ちなみに、恋愛祭で勝利したクラスには、学校側で叶えられる範囲の願いを何でも聞いてもらえる権利が与えられる。せいぜい、こんな意地悪な担任を変えてもらえるように頑張りたまえ。それでは授業はここまで。満導、号令」
いつの間にか学級委員長の座を手にしていた満導が、号令を掛ける。
統率のなっていない俺達は、バラバラのタイミングでぐだぐだと立ち上がる。
これには俺も丹波先生も頭を抱えるしかない。
みんな見てた?俺と先生の熱いやりとり。
アニメとかなら、ここから音楽が流れてピシッと閉めて、高まる熱気のままエンディングへ。
そして、次回から逆転劇が始まる流れじゃん。
……丹波先生、やっぱり勝つのは無理そうです。
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