018話 周りに流されないのが大事
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雨水が選び終えるのを待つ。
シャーペンから何度も芯を出しては引っ込める意味のない作業を繰り返して時間を潰す。
先程までは勉強をしようと息巻いていたが、そんな気も失せた。
頭に入る気がしないからだ。
「決まったでござる!」
この自信満々な雨水の声色はどっちだ。
面白いボケが出来ました!なのか、めっちゃオシャレなのが選べました!なのか。
言葉が短すぎて真意が伝わらないのは日本人の悪い所だと思う。
現にこうやって困っているのだから。
扉を開け、大手を振って歩く雨水。
自信満々の雨水とは対照的に、クラスメイトは顔を手で覆っていた。
「どうでござるかな?結構、いつもより冒険してみたでござるけど」
闇に紛れやすいように黒く作られた上下の忍者服。
足元は音を立てない為に工夫された足袋を履いている。
小白に続いて雨水まで。
引くに引けなくなって、次の奴までファッション大喜利始めたらどうしてくれるつもりだ。
「ふざけんなクソ忍者!この期に及んでボケてんじゃねーよ!」
「真面目にやれ!大喜利すんな!」
「ボケるならもっと分かりやすいボケにしろー!忍者がそれ着るとボケか分かりにくいだろー!」
飛び交うブーイング。
最後のに至ってはボケの指導まで。
小白の時はみんな何も言わなかったのに、いじれる奴だと判断した途端にこれだ。
雨水、お前不憫な奴だな。
まぁ、俺もその服は許せないけど。
「違うでござる!これ、ちゃんと私服でござるよ!しかも、この服顔が出てるでござる!こんなオシャレを里の者に見られたら失神されちゃう!」
「うーん、雨水はちゃんとファッション雑誌を読むように。伝統的な服装なのかも知れないけど、彼女の隣それで歩いたら彼女泣いちゃうから。それと顔出しするだけはオシャレとは言わんぞ」
「なっ!?嘘だ、これはオシャレでござる……。母上だって、父上とお忍びデートする時は顔出ししてたでござ……」
膝から崩れ落ちた雨水は、目から滝のように涙を流して絶望していた。
少し考えれば分かりそうな事だろ。
道行く人間は誰1人としてそんな格好してなかったのを見てないのか?
忍術とか使って、人のいない空から登校してんのか?
「どんまい、かげちゃん」
唯一、みんなに優しいギャル日纏が、落ち込む雨水の背中を撫でた。
人間の温かさに触れた雨水は、鼻水を啜りながらもようやく泣き止み、肩を落としながら自分の席に戻る。
それが男子の心を逆撫でしているということに、彼はまだ気付いていない。
「気を取り直して、次は──」
それでは、ここからコスプレショーとなってしまった授業をダイジェストでお送りさせていただこうと思います。
二階堂:猪八戒
鳳凰院:三国志の将軍
斉藤:怪しいローブ
満導:スーツ
犬子:チャイナ服
彩:ナース服
日纏:キョンシー
雷々&風々:シマリスの着ぐるみパジャマ……etc.
ここまで1人も真面目に取り組んでいないのが、落第生クラスたる所以ではなかろうか。
あんなに俺達へ寄り添ってくれている丹波先生でさえ、呆れた顔して何も言えなくなっている。
ごめんね、先生。
一度悪ノリが始まると止められなくなる病気みたい。
「もう良い、最後に天野さっさと終わらせてくれ」
先生は俺までボケるのではないかと思って、早く終わらせるようにと促す。
失礼しちゃうな。
俺はこの空気に流されない男。
最後の最後までコスプレばかり着ていたクラスメイトと違って、本気のファッション選びをしてやるんだ。
でなければ、大量の服を用意した丹波先生が報われないだろ。
廊下へ出るとやはり並べられた服の量に圧倒される。
コスプレには目を向けるなよと心の中で唱えながら、まずはシャツから選ぶ。
「今は春先だし、少し風通しの良さそうで尚且つ寒くは無さそうな丈感が良いよな。うん、そうだそうだ。きっとそう」
不安すぎてぶつくさと言葉にしながら選ばないと落ち着かない。
だって、何回も言うようだけど服とかいつも適当だしさ。
いざ、これが俺の本気のファッションですってみんなの前に立つとなると緊張するじゃん?
ダサっとか言われたら一生立ち直れない自信ある。
しょうがないよな、そういうお年頃だから。
少しサイズ感の大きめな黒のTシャツとゆとりのある白のワイドパンツ。ネックレスなんかも付けてみて。
靴も合わせて白のスニーカーを選んだ。
ど、どうだろうか。我ながら悪くないと思うんだけど。
「出来ましたー」
「さっさと入って来ーい」
全く期待してないじゃん、丹波先生。
扉を挟んだ向こう側で、既にやる気を失っているのがよく分かる。
俺だけは真面目に選んだんだから、そんなに肩を落とさないでくださいよ。
「で、天野はどんなコスプレだ。んんー、一般人のコスプレか?なんだか、他の生徒よりも普通に見えるが」
「いや、丹波先生ふざけてないですから俺。なんなら、唯一真面目に選んで来ましたから」
「あ、天野。君って奴は!本当に優秀な生徒だ君は!服装は65点だが、最後の最後に君の番でちゃんと授業に取り組む姿勢を見せてくれた!良かった、本当に良かった」
ただ指示された通りに服を選んだだけなのに、こんなに喜ばれるとは。
しかも、美人教師が至近距離で握手をしてくれる特典付き。
距離が近すぎて視線が別の箇所に吸い込まれそうになる前に、そっと手を離して距離を取った。
席に戻る途中、クラスメイト(特に男子)から裏切ったなという圧を感じる。
そんな目でこっちを見るな。
そもそも変な流れに逆らえなかったお前らが悪い。
俺よりも前に1人でも真面目にやっていれば、クールキャラの代名詞みたいな丹波先生の脳みそが破壊されて、この世の終わりみたいな表情を見せることも無かった。
見てみろ、あの嬉しそうな顔。
これから先も見れるどうか分からない表情だぞ。
あれ、俺のおかげです。
どうぞ、見納めておいてください。
「本当にどうなるかと思ったよ。この授業で選んだ服装は学校側に提出して、恋愛祭で使う事になる。1年生の1学期の恋愛祭は、毎年運動量の多いものと相場が決まっているんだ。全員がコスプレでは動きにくいだろ?何人かは動きやすい服装でないと」
……恋愛祭?何それ?
先生、今大事なことをサラッと言いませんでしたか?
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