017話 服装自由は実は不自由
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「これから1限目を始めようと思うのだけど……、君達はどうしてそんなに疲れているんだ」
まだ授業が始まったばかり。
しかし、6限目の終わりかのような疲れ具合だった。
机に項垂れず背筋を伸ばしている生徒が何人いるかは、片手を使えば数え切れるくらいだ。
みんな朝から遅刻寸前まで片付けをして、急いで寮を飛び出したのだから当然と言えば当然か。
「思い出しくないから何も言わないで欲しいッス。なのちゃん先生」
「丹波先生な。まぁ、深くは追求しないでおくが目立つ行いは避けた方が良いだろう。ただでさえ、君達への風当たりが強い学校だ。少しの緩みを突かれるってこともある」
今はまだ学校が始まったばかりで、丹波先生の言う風当たりの強さというものをあまり体感出来ていない。
だけど、俺達5等級クラスは落第生クラスと呼ばれるくらい忌み嫌われているクラスだ。
生徒からだけでなく、教師からも存外な扱いを受けるのは想像するに容易い。
だったら、そんなクラス作るなよと言いたい所だが、反面教師としては効果があるのかもな。
人は下を見て安心する性質がある。
そして、こうはなるものかと思うのだ。
その役割を担うのが俺達。
担任であるよしみから丹波先生はこうやって忠告してくれる。
今はそんな教師が1人でもいる事を、有難いと思うことにしよう。
「それじゃあ、授業に戻ろう。1限目の授業は、恋愛技術だ」
恋愛技術?
恋愛において必須なスキルという意味だろうか。
それでいうと昨日行った料理の指導は、恋愛技術に分類させるのかもな。
「今日のテーマはこれだ」
チョークを持った丹波先生は、小気味好いリズムで黒板に文字を書き連ねる。
最後にトンッと締まりの良い音を鳴らしてこちらへ振り返った。
「ファッションセンス。君達には、これを身に付けてもらおう」
「はいはーい、なのちゃん先生質問ッス。ファッションセンスって人それぞれあると思うんすけど、それを学ぶのって、難しくないッスか?」
「狛町の言うことも一理ある。人には好みというものがあって、ここで学ぶことが万人に当てはまる事はない。しかし、全てとは言わずとも大抵の人間に受けるファッションというのはやはり存在する。大袈裟に言ってみれば、デートでふんどし一丁で来る男よりはTシャツにズボンを履いている男の方がモテるという理屈だ」
うわー、俺の1番自信のない分野だ。
無難に無地の上下を着ている俺にとって、ファッションセンスは対極の存在。
流行りに乗り遅れないようにとは思っている。
だけど、情報を自ら仕入れようとまでは思えない。
街行く人々の格好をたまに見ては、あれが流行っているのかなと想像するくらいだ。
「では、まず君達には自由に服を選んでもらいファッションセンスを見せてもらおうか」
「服を選ぶ?どうやってですか?ここには何も無いように見えますけど」
「廊下に出てみろ」
「廊下……ですか?」
言われた通りに廊下へ出ると端から端までずらりと服が並べられていた。
その数は圧巻で、下手な店より種類が多い。
左右でメンズとレディースに分かれているようだ。
普段は服に興味のない俺でも、この量には流石にテンションが上がって来た。
俺でさえテンションが上がるのだから、クラスの女子はというと、
「きゃー!!!可愛い!この服とかあのブランドの新作じゃない?」
「見てみて!こっちは女優のあの人が着てたやつだよ!」
「うわー!これも着てみたかったんだよなー!」
はしゃぎ様がすごい。
あれやこれやと手に取っては、目をキラキラと輝かせて自分の体に服を宛てがう。
歳相応の反応とも取れるが、一応今は授業中だ。
放課後のショッピングじゃあるまいし、勝手に動き回って既に物色を始めるのはいかがなものか。
「君達、あくまでも授業であることを忘れないように。それじゃあ、順番はこちらで適当に割り振ってあるから各自でしっかり選ぶように。最初は小冬、君からだ」
トップバッターは小白。
まだ昨日の疲れが残っているのか欠伸をしながら、気怠そうに服を選び始めた。
部屋着はモコモコとしたら可愛らしい物だったけど、外着はどんな感じなのだろうか。
やる気の無さそうな感じを見るに興味があるとは思えないが、意外なセンスでみんなをあっと驚かせるという線を捨てきれない。
1人が服を選んでいる間は教室内に戻って待機。
基本的に大声を出さなければ、何もしていても良いらしいから楽なもんだ。
ちなみ、恋愛学校であるけれど一般的な授業もカリキュラムの中に含まれている。
授業の割合こそ他の学校と違って少ないが、だからこそテストの点数が大きく影響するだろう。
つまりは、この時間は未来の自分が困らない為に、投資として勉強しておくのが吉と見た。
「着替え終わった」
扉の外から小白の声が聞こえた。
みんなそれぞれの動きを止め、扉に注目。
「中に入って来て良いぞ」
先生の言葉を聞いて、小白が中に入る。
そして、教卓の前に立ち、どんな服装か見せた。
「どうかな?」
サスペンダーの付いたスカートにポロシャツ。
赤いランドセルを背負って、黄色の帽子を被っている。
完全に小学生の見た目だ。
ボ、ボケてきたー。
クラスメイトは口に出さないだけで、そう思っている。
こんなの着ても喜ぶのは、小学校に入学した子供を見た時の両親か、ロリコンくらいだろう。
ただ、きっと小白は真剣に選んでこれになったのだ。
俺の直感がそう言っている。
「服とか分からないけど、これが良いってネットで見た」
どこの記事かは分からないけど、偶々目に入った記事を鵜呑みにするからこんな事になるんだ。
良い子のみんなはネットリテラシーというものをちゃんと持ってインターネットに触るんだぞ?
「こ、これは……。可愛い過ぎて死ぬぅ!ワイ、ロリではないと自負しているが、これは流石にキュンですぞ」
「二階堂、キモい」
「グハッ!ロリの暴言、それもまた……ご褒美」
二階堂の要らぬボケによって、焦りが募る。
このクラスはボケたがりの生徒、もしくは天然すぎてボケに転じる生徒が多い。
昨日の一発芸大会を思い出せば、それが明らかだ。
あれだけ嫌な思いをしたのだから、同じ轍は踏むわけにはいかない。
ここは次の生徒に速やかな軌道修正をして欲しい。
「一定の層には受けるかも知れないが、かなりコアな層向けだ。今後の学習で改善するように。次はー、えーっ、雨水。君の番だ」
……雨水、お前に掛かってるからな。
脅しにも近い睨みを廊下へ向かう雨水の背中に送った。
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