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恋愛学校の落第生共よ、恋を知れ  作者: 風野唄


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015話 指鳴るところ、寝るところ

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

連絡先の交換は瞬きをするのと同じぐらい一瞬で終わった。

秀恋高校で初めて手に入れた連絡先がまさかの異性とは。

過去の自分が知ったら、あり得ないと言って信じてはくれないだろうな。


「寂しくなったらいつでも連絡して良いッスからね」

「同じ寮なんだからわざわざ連絡する必要ないだろ」

「ふむふむ、天命はメールや電話より直接会いたい派ってことッスね」

「そんなこと言ってないだろ!」

「ちょっとちょっとそんな大きな声出しちゃダメッスよー!みんなには秘密なんすから」

「大丈夫だろ。あっちは盛り上がって聞こえないだろうから」

「それもそうッスね。これだけ騒がしければ、聞こえるはずないッスよね。……ていうより、なんかうるさすぎやしないッスか?」


すりガラスになっているので、はっきりと向かう側がどうなっているのかは見えないけど、明らかに騒がしい。

漏れ出ている阿鼻叫喚の声、激しい足音を響かせながら何度も行き交う人の影。

どうなればこんな状況を生み出せるのか、逆に興味が湧いてくる。


2人で顔を見合わせて、ゆーっくりと開いた扉の隙間から中の様子を窺おうと試みる。


ドンッとホラー映画さながらに、目前に現れる彩の顔。

男でありながら情けなくも尻餅を付いて倒れ込む。


「ひっく……やっろみつけら〜!ひっく……」


コイツ、酔ってる。

何でか知らないけど、確実に酔ってる。

どうしてそうなったのか知る為に、覚悟を決めて扉を全開にする。


「あれ〜、かげちゃんがぶんしんしてる〜!できるなら、いっれよ〜!」

「違うでござる!拙者は影分身してるんじゃなくて酔ってるからでござる!く、苦しいから胸倉掴むのやめてー!」


日纏に胸倉を掴まれながら激しく揺さぶられている雨水。

顔色が悪くなっていて、今にも吐きそうだ。


「良いかい!雷々くん!風々くん!君達はもっと飲むべきだ!社会人になった時に上司が注いだ酒を飲まないなんて言語道断だからね!」

「「……うっぷ。もう飲めないからやめてー!」」


満導に説教をされながら永遠と飲み物を飲まされている双子姉妹の雷々と風々。

こちらも同様に吐きそうだ。


他の生徒も似たような感じで騒ぎまくり。

いくら寮母が黙認しているとは言え、限度というものがあるだろ。

俺1人ではどうしようもないけど、速やかに事態の収拾を図るべきだ。


目の前で進路を邪魔している彩をどうにか宥めながら、ローテーブルの近くまで移動する。

お酒を飲んでいるのだとしたら、必ずその証拠がテーブルに残っているはずだ。


食べ散らかされたピザやチキン、蓋の空いたジュースに、倒れた紙コップ。

そして、お酒ではないが、お酒によく似たシャンメリーが5本空っぽになっていた。


いやいやいや、まさかな。

シャンメリーってジュースだぜ?

アルコールは1%未満と定められているはずだ。

それを飲んだからと言って、こんな泥酔状態にはなると思えない。


「いやー、参ったねー。あははー」


笑いながら近付いてくる斉藤(さいとう)(かける)

あ、絶対コイツが犯人だ。

一目見た時にそれを察した。


「君達、2人がいない間に一発芸の奴再開しちゃってさ。僕の順番が回って来ちゃったんだよねー。それでさ、僕に出来ることって催眠術しかないからさー、シャンメリーを本当のアルコールだと錯覚させる催眠術を掛けた訳。そしたら、こんなことになるなんてね。いやー、参った参った」


犯人は爽やかに笑って見せる。

その顔に反省の色は全く見えない。

それどころか賑やかになったじゃないかと言わんばかりに誇らしげだ。


「催眠なら解けば元通りだよな?さっさと解いてやってくれよ」

「うん、無理だね。というより、正確には意味ないね。雰囲気で酔う人もいるっていうでしょ?プラシーボ効果に近いのかな?僕が掛けたのはアルコールだと錯覚させる催眠であって、酔わせる催眠じゃないんだよねー」

「つまり、酔いが覚めるのを待つしかないってことか?」

「大正解!あ、読者のみんなはくれぐれも未成年飲酒しないように…イデデデッ!」


何が大正解だ、馬鹿野郎。

童顔の癖してどギツイことやりやがって。

暴力は良くないが、お仕置きとして耳を軽く摘んでおいた。


目をウルウルとさせながら被害者ぶって斉藤は倒れ込む。

そんなことしている場合じゃないだろと怒りが込み上げて来た。

握った拳を反対の手で包み込み、脅し程度に指を鳴らす。

その音に即座に反応した斉藤は倒れ込んだ姿勢から正座に移り変わる。


「どうしましょう、天野のアニキ!僕に出来る事ならなんなりと!」

「なんで他力本願なんだよ。こっちが解決策を聞きたいくらいだ」

「あるよ、解決策なら」

「お前な、あるならさっさと言えよ」

「イデデデ!すぐに解決したら面白くないじゃないか!折角ならカオスな状況を楽しもうかイデデデ!やります!さっさとやります!」


本当に困った奴が多いな、落第生クラスというのは。


斉藤はソファーの上に登り、指を鳴らして注目を集める。

こんなうるさい中でも指の鳴らした音がはっきり聞こえるのは不思議だ。

相当練習でもしたのだろうか。


「良いかい、みんな。僕が今から3つ数える。そしたら、君達は数が増える毎に眠気が増して、3つ数え終えたら深い眠りつく。良いね?…3、…2、…1」


斉藤の催眠の導入を聞いていて、1つ気付いたことがある。

今、ここにいる全員が彼の話に耳を傾けているということだ。

それが何を意味するかって?


そんなの言わなくても………わか…る。


力が急に抜けていく。

ドサドサという音までは聞こえた所で眠りについた。

きっと他のみんなもそうだろう。

明日の朝、起きた時の考えると恐ろしくて仕方ないが、眠気には勝てない。

それほど、斉藤の腕は確かなのだろうな。

ご覧いただきありがとうございました。

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