011話 微睡は突然に
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寮の中に入ると広々とした玄関が出迎えてくれる。
外見だけの見掛け倒しなどではなく、内装もしっかりとしているみたいだ。
俺では到底思い付かないオシャレな仕上がりになっている。
これだけの寮を作ろうとすればいくら掛かるのか、そんな下世話な想像が働いてしまう。
何千万と掛かりそうだが、ネットでバズりまくりの学校だ。
お金の方は湯水のように沸いて出てくるのかもな。
「テンション上がるどころか緊張して来たッス。埃とか落としたらやばいッスかね?」
新築ではないはずなのに、全く汚れなど見えない室内に恐れをなして行動が慎重になる。
気持ちはめっちゃ分かる。
例えるなら、新品のノートを使った時に、何も書かれていない真っ白さを見て綺麗に使うような感じだ。
新しさをどうにか維持できないか考えてしまうのは、人間の性というもの。
「騒がしいね。やっと次の生徒が来たのかい?」
奥の扉が開くと、同級生とは明らかに年齢の違う女性が顔を覗かせている。
きっと彼女が寮母なのだろう。
「こ、こんにちはッス。今日からこの寮に入る事になった者なんですけど」
「ったく、毎年落第生クラスの一年坊見てるけど、今年も例に漏れず個性的だね」
「あははっ、どうも」
「褒めてないだろ。どう見たって貶してるって」
「いや、褒めてんだよ。あの学校は恋だ愛だと謳って、生徒をみーんな似たり寄ったりのロボットに変えちまうからね。アタシはアンタらみたいな馬鹿を見てる方が好きなのさ」
「えへへー、どうもどうも」
貴方の言うとおり、隣にいる犬はおつむが弱いみたいです。
完全に貶されているのに気付いていない。
脳天気にも自分の頭を撫でながら照れる姿は、実に滑稽だ。
「良いからリビングまで来な。部屋の割り振りくらいは軽く説明するから。それ以降は全体説明の17時まで好きに過ごしな」
そういってリビングへと案内される。
女子3人と男子1人の生徒が奥に置かれたかなり大きめのローテーブルでくつろいでいるのが最初に目に入った。
彼女達は先に着いてたようで、制服ではなく部屋着に着替えていた。
クラスメイトとはいえ、まだ話した事すらない相手。
少しだけ気まずい雰囲気が流れる。
それでも目を向けてしまうのは、着ている服が全員オシャレだからだ。
あれ、部屋着なんだよね?
外に着ますよって言われてもギリ信じてしまうそうな格好なんだけど。
意識とかしちゃってるんだよな?
クラスメイトがいるからちょっと頑張ってオシャレな服着てみようみたいな事だよな?
服屋探さないとまずいかもしれない。
俺の心配を他所に、6脚の椅子が並べられたダイニングテーブルの方へ誘導された。
5分も満たない間、寮内の設備について説明がある。
大体は、聞き流しても問題ない話なので少し退屈だ。
「───、って事だから。質問は?特にないなら、以上だよ」
まだ何も言っていないのに言葉を待たずして、どこかへと消えて行く寮母さん。
こちらとしても特段聞くようなこともなかったので良いんだけど、ちゃんと仕事をしてくれるのかは気になるところだ。
この後、どうするか迷ったが、待ち時間は長い。
それぞれ受け取った部屋の鍵を手に、一旦解散することに。
「これが俺の部屋か……」
自室である2階の奥へ行くと、天野と書かれたネームプレートが飾られている部屋に辿り着く。
当たり前だが、扉を見ただけではまだ実感が湧いて来ない。
いつか慣れる日が来るのかと想像しながら、レバー式のドアノブをゆっくり下げる。
「おぉ、結構広いな」
中に入ると、8畳の広さの部屋に、5つ積み重ねられたダンボールと既にセットされているベッド、勉強机が置かれていた。
ダンボールの中を確認する事もなく、鞄を下ろすと吸い込まれる様にベッドの上にダイブ。
スプリングが押し返してくる感覚を全面に受けながら、マットの厚みを感じる。
荷解きをしなければならないのはわかっているが、どうしても体が動かない。
言う程体力を使った訳でもないのに、疲労が押し寄せるのはやはり入学式という特別なイベントの気疲れだろう。
天上の方へ振り向き直して、ぼーっと一点を眺める。
次第に瞼は重く、視界が定まらなくなっていく。
やばいな、まだやらないといけないことあるのに───。
逆らえない睡魔が甘い誘惑と共に眠りへと誘う。
一心に受け止めて、白いカーテンから薄らと入る日の光と共に完全に瞼を閉じた。
「──ろ!起きろ!ったく、起きろって言ってるだろ、天野」
「全然起きなくて草。これじゃあ、ワイが怒れる。しょうがない、ここはワイの右腕に封印された黒き漆黒のブラックドラゴンを解放するしか」
いる、絶対に俺の部屋に二階堂と鳳凰院がいる。
もう起きてはいるけど、目を開けてしまったら2人のツッコミ役に徹することになるだろう。
諦めて2人が出ていくまで待つしかない。
「起きろって言ってるだろ!」
ふわっと身体が浮き上がる感覚。
それを感じた時には目の前に壁が迫っていた。
「止まれ!止まれ!止まれーーー!!!」
ドゴッ
空中で動きを制御できるはずもなく、派手に壁とぶつかった。
「何してんだお前ら!ふざけんなよ!」
痛みよりも先に、怒りが勝る。
寝たふりをしている人間を投げ飛ばした事もそうだが、何よりも勝手に人の部屋へ入っていることが腹立つ。
鍵はちゃんと掛けたはずなのにどうやって入ったんだ、コイツらは。
いや、鍵がどうにかなったとしてもダメだけどな?
「お前の部屋には時計を置いてないのか?だったら、目覚まし時計を買う事を強く勧める。寝過ぎだ、説明会が始まってるぞ」
明るかったはずの光がオレンジへと色を変えている。
それだけで自分が眠り過ぎたのだと察した。
「まじか!?そんなに寝てたのか、俺。……てか、なんで起こしに来るのかお前らなんだよ。もっと他にいなかったのか?」
「ワイら、ベストフレンドフォーエバーじゃんか。そんな友を起こすのに理由なんていらないだろ?」
「いつから、そんな関係になったんだ」
「酷過ぎて草しか生えん」
「知らん。コイツの戯言にいちいち耳を貸すな。それよりも起こしてもらっておいて礼の1つも言えないなんて大問題だろ。お前、モテないぞ?」
……正論過ぎて何も言えねー。
悪いのは全面的に俺だからな。
にしても、モテないは言い過ぎだ。
真実は時として人を傷付けると心に刻め。
イケメンだからって何言っても良いわけじゃないぞ。
2人の手を煩わせてしまったのは事実だ。
これ以上迷惑を掛けない為にも急いで1階へ降りた。
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