010話 ……ずるいです
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!
「どういう事か説明してくれますよね、……天命様?」
「いやだから!これは俺からって訳じゃなくて!」
「そんな言い訳通用しないですよ!私が他のご学友と下校している間に、こんなに親密そうになってるなんて!浮気ですよ!う・わ・き!」
「そもそも付き合ってねーだろ!って、おい!何だ、その殺気は!やめろ!俺は事実を述べたまでだー!!!」
───遡る事10分前
「ここが寮か」
白を基調としたオシャレなデザインの建物があった。
てっきり落第生クラスの俺達は、ボロ屋に肩を並べて寝泊まりしなければならないと思っていたが、流石にそんな事はないらしい。
広さも30人の生徒が生活出来るようにしているだけあって、相当な広さだ。
この寮で今後生活出来るのかと思うと少しワクワクするな。
「見て見て!すごいッスよ!天命!広いッス!庭もあるッス!最高ッスー!」
「はしゃぎ過ぎんなよー、犬子。クラスメイトにそんな姿見られたら恥ずかしいぞ」
素早い身のこなしで建物の周りをあっちこっち見て回る。
元気があり過ぎて、本物の犬にしか見えない。
はち切れんばかりの尻尾が見えて来たのは俺だけじゃないはずだ。
でも、まだ中にも入れていないのにこのテンションだと、内装を見たら興奮し過ぎて死ぬんじゃないか?
「みんなでここに住むの?まだ想像出来ない」
「何だよ、小白。緊張してるのか?」
「そうかも。今まで身の回りのこととか、全部親がしてくれたから緊張と不安が」
「大丈夫だって、料理は寮母さんがしてくれるんだし、洗濯と部屋の掃除が出来れば概ね問題ないだろ」
「……どうしよう、洗濯の仕方分からない。部屋の掃除も」
俺は余計な事を言ってしまったかも知れない。
適当に羅列した家事は、彼女をどうしよもなく不安させた。
家の手伝いとかしないと洗濯機は未知との遭遇だしな。
不安にさせてしまった俺が責任を取って教えてやるのが筋だろう。
「俺で良ければ、洗濯ぐらい教えてあげるけど」
「良いの?ありがとう」
………いや、良いのか?
思い付きで教えると言ってしまったが、よくよく考えると洗濯する場に立ち会うんだよな。
決してやましい気持ちがある訳ではないが、見えてしまわないだろうか。
……その、ねっ?……お下着がさ。
見るつもりはない!見るつもりはないから!
でも、事故で見えてしまうって可能性も捨て切れんだろ。
そもそもその事に小白は気付いているのか?
気付いてもいなくても、ちょっと異性に対する警戒度を心配してしまう。
そんな事を誰彼構わずやっていたら勘違いしちゃう系男子増量キャンペーンだろ。
「やっぱり洗濯は犬子か一宮に教えてもらってくれ。ほら、俺男子だしさ。色々と問題あるだろ?」
「なんで?男だと何が問題?」
「ほら、あれだよ。あのー、不慮の事故でし、下着とか見えたら大変だろ?」
「小白は気にしない。パンツくらい天命になら見られても問題ない。なんなら今、見る?」
「俺が問題あるの!健全で健康な思春期舐めんなッ!」
チェックのプリーツスカートの裾をがっしり掴んで大胆にも捲り上げようとする。
そんな小白の行動に思わず身体が反応した。
あ、もちろん変な意味じゃないぞ?
捲り上げようとする手を掴んで止めたって話だからな。
「ほら、やっぱり天命は良い人」
口角を少し上げながら笑って小白が言った。
最初から俺が止めると分かっていたようだ。
だからってそんな危険な賭けに出なくても良いだろ。
見てるこっちがヒヤヒヤした。
「良いか?小白。ここは共同生活の場なんだぞ?男女関係なく寮を彷徨いているんだ。男ってのは危険な生き物なんだから気を付けないと」
「うんうん、そうッスよ。例えば、目の前にいる天命だってそうッス。口ではこう言ってるッスけど、さっきがっつりコハクッチのパンツ見てたッス。そういう生き物ッスよ、男ってのは」
「……否定出来ないのが痛いところだ。とにかく、身の回りの事は女子生徒に教えてもらえ。これもコミュニケーションを上手く取るための練習だと思ってさ」
「嫌だ!天命じゃないと嫌!」
「ちょっ……!おい!」
不意に勢い良く抱きつくものだから、体勢を崩して倒れていく。
幸い、頭を強打することはなかったが、地面に打ちつけられた身体は所々痛む。
小白は怪我をしていないか心配になり、視線をお腹に向けると俺の上で馬乗りになっていた。
見た感じ怪我はしていなさそうなので安心だ。
「危ないだろ、小白」
「ごめんない……」
「とりあえず、俺の上から退いてくれ。この状況を他のクラスメイトに見られたら───」
言葉を遮るように聞こえたボトッと落ちる鞄の音。
その音が気になって見てみると、良く見覚えのある女子生徒が立っている。
自分の中に備わっている危機感知が警報を鳴らしていることに気付き、逃げ出そうとした頃には遅かった。
────
こうして俺はあのシーンへと戻っていくのだ。
「話せば分かる!まじで話せば分かるから!」
後ろに見えるご学友とやらの視線が痛い。
まじの修羅場に遭遇したみたいな顔してる。
いや、どっちとも付き合ってないんです!
まだ誰のものでもないんです、俺!
「見てないで助けてくれよ!小白、犬子!」
「……コハク?イヌコ?天命様、今、お二方を下のお名前で呼びましたか?」
あっ……まずった。
一宮はまだ下の名前で2人を呼んでいる事を知らなかったな。
このままだとまた腕の1本を折られかねない。
「……ずるいです」
ぷくーっと頬を膨らせて怒っているアピールをする一宮。
不覚にも可愛いと思ってしまった自分がいる。
「私も彩とお呼びください」
「わ、分かったよ。彩」
「足りないです」
「うっ、彩」
「ふふ、満足しました」
良かった、これで小白とのことも忘れてくれるよな。
さてと、こんなの懲り懲りだからさっさと中に入って……ん?
振り返った瞬間に肩をがっしりと掴まれる。
どれだけ足を進めようと抵抗しても無駄だった。
「話……まだですよ?」
声にならない悲鳴が心の中だけにこだました。
ご覧いただきありがとうございました。
よければ評価、ブックマーク、いいねお願いいたします。めっちゃモチベーションに繋がりますのでどうか、どうか!!!




