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001話 落第生クラス

前書きって結局何書くのが正解なのか分からないよね。

しかも、1話目の前書きとなると尚更。

でもね、絶対に読んで欲しい!それだけは確かですな。

国立秀恋(しゅうれん)高校


国が近年の少子高齢化に対し、苦肉の策として用意した恋愛特化型の学校だ。

カリキュラムの中には、モテる為に必要なスキルや恋愛の壮絶な駆け引きを制するノウハウなどが含まれている。


創立された当初は頭の固い大人から批判の嵐が飛び交ったらしい。

中には羨ましいだの、妬ましいだの個人的な感情をぶつける者も少なくなかったっぽい。

ただ、それも長くは続かなかった。


理由は単純。

若者にめっちゃ人気だったから。

SNSで拡散され、あれよあれよという間に知名度を付け、気付けば毎年の入学希望者は10万人を超えていた。

やはり恋愛というジャンルは今も昔も人気らしい。


金がなる木だと分かれば、批判していた大人達も千切れんばかりの手のひら返しでスポンサーになるべく擦り寄る。

こうして、世界最大の恋愛育成機関は出来上がったのだ。


ここまで聞けば、楽しいラブコメの始まりみたいに聞こえるだろ?

だけど、そんな甘い話はどこにもなかった。

恋愛という響きで騙されている奴も多いが、要するに秀恋高校は、恋愛に飢えた獣の激しい戦場だ。


この物語は、そんな戦場の中で3()1()()の男女が恋を知るまでの話。


───


「ふあぁー、眠い。入学式とはいえ、気合い入れて早く家を出すぎたか?でも、仕方ないよな。まさか、友達と一緒に記念受験で受けた秀恋高校に受かるとはな」


桜舞い散る入学式当日。

晴れて高校生となった俺、天野(あまの) 天命(てんめい)は、あの人気殺到中の恋愛特化型の高校・秀恋高校の門を叩いていた。


受かる確率なんて0に等しい高校だ。

受かるはずもないと思っていたが、何の偶然か合格通知が届いていた。

始めて合格通知を見た時は、そりゃ手放しで喜んださ。


俺もモテモテにとか、甘酸っぱい青春がーとか。

でも、よくよく考えてみると無理な話に思えてくる。

それってイケメンとか陽キャの特権だろ?


顔は良く言って上の下、本音は中の上の俺がそんな上手いこといくかね。


おい、誰だ!文字にするだけなら何とでも言えるだろとか、強がるなよ下の下とか言った奴!

本当にそのくらいだから、もっと挿絵とか付けば納得してくれるレベルだから!


「ちょいちょいキミキミー!そんな所で何してるッスか?」


誰かに声を掛けられ振り向くと、


「そこには可憐なショートボブ青髪の少女が立っていた。背丈は150後半といったところか。特徴的な口調と……」

「地の分で説明するところ全部口から漏れ出てるッスよ」

「………、よしクラス分けでも見にいくか」

「無かった事にしたったッス。恥ずかしさのあまり無かった事にしたッス」


恥ずかしいー!

初対面から相手の評価を始める痛い分析キャラみたいで恥ずかしい!

最初の眠そうな部分からやり直すから無かった事にしてくれー。


「なんか面白そうな人がいて安心したッス。ウチ、狛町(こままち) 犬子(いぬこ)ッス。気軽にワンちゃんって呼んでも良いッスよ?」

「いや、呼ばないから。初対面の女子に対してハードル高すぎるあだ名だから。女の子の事を子猫ちゃんって呼ぶ痛いやつみたいじゃんかよ」

「キレキレのツッコミッスねー!んで?貴方は何者?」

「俺は天野天命」


名乗ったのに3秒くらいの変な間が生まれた。

言いたい事は分かるよ。

もっと他にはないのって事だよね。

テンプレの自己紹介なんてアイドルぐらいしか持ってないでしょ?


「終わり?」

「終わり」

「ギャハハッ!クソつまんないッスね!」


恐らく新しいであろう制服で地面に転がり笑う狛町。

そんなに面白いかね、人の自己紹介が。

あー、こうなるくらいなら考えておくんだった。

どうせクラスでも自己紹介するし。


「もう良い、俺は先行くからな」

「怒らないで欲しいッス。悪かった!悪かったッスから〜!1人にしないで〜!」


1人歩き始めた俺の後ろを涙目になりながら追いかける狛町。

何とも騒がしい1日になりそうだ。


学校到着早々、隣を歩くのは元気過ぎる残念美女。

喜ぶべきか、悲しむべきか。


悟られぬようにチラッと横を見る。

ぱっちりとしたまつ毛や真っ白で綺麗な肌、常にぽわぽわとした明るいオーラを身に纏う。

うーん、黙っていると可愛いけど、さっきの感じを知ると実に勿体無い気がする。

料理下手な奴に高級食材を渡しているが如く、素材の味を全く活かし切れていない。


「失礼な事考えてないッスか、テンテン」

「……テンテンって俺のあだ名?」

「誤魔化したッス。そうスッよ?名前に2つも"天"が入ってるんだから、テンテンッス」

「やめろよ、そのあだ名。忍者愛好家から怒られそうだから、色んな道具で戦うタイプの忍者に間違われそうだから」

「じゃあ、なんて呼べば良いッスか?あっ、分かった。て・ん・め・いッスね!」

「なぁっ!?」


初対面から下の名前呼びだとっ!

こ、コイツ恋愛戦闘力高めなのか。

そんな高等テクニックを使えば、耐性の無い男(俺含む)はイチコロだぞ。

やはり恋愛特化の高校。

こんな奴らがウジャウジャいるのか?


赤い顔を隠す為に下を向いて黙り込んだ俺。

狛町はそんな俺の顔を覗き見る。

そして、アイドルにも負けない笑顔を浮かべて、


「ぷっ、くはは!顔真っ赤にしてダサいッス!これじゃあ、5等級クラス確定ッスね!」


騙されるギリギリで正気に戻って来れた。

このボケたがりはいつまで経っても残念だ。


「失礼だな、ダサいは言い過ぎだろ。まぁ、良いけどさ。それより、5等級クラスってなんだ?クラスって等級分けされてんの?」

「入学者に配られるパンフレット読んでないッスか?書いてあったのに」


パンフレット……あぁー、あったような気もするな。

男女2人が校舎をバックに嘘くさい笑顔浮かべて立っている表紙の。

あれ読み込む人いるのか?

重要書類でないと認識した時点で、雑多な物として引き出しという名のブラックホールに放り込んでやったぞ。


後で読み返そうにも今日から寮生活。

寮の荷物には当然入れていないので確認のしようもないな。


「ふっふっふっ、仕方ないッスね。3回回ってワンと言えば教えてあげないこともないッスよ?」

「それだと俺の方が犬みたいじゃねーか」

「いや、ウチも犬じゃないッスから!もうしょうがないスッねー。ワンは聞けなかったけど、栄えある友達1号の天命に教えてやるッスよ」


両手を腰に当ててえへんと威張りながら説明が始まった。

内心、自分が説明したいだけだろとは思ったが口にしなかった俺は偉いと思う。


「クラスの等級は、恋愛に関する総合力によって分けられるッス。1等級は神にも匹敵する恋愛能力。街を歩けば、男女問わず振り返ってしまうレベルッス。逆に5等級は雑魚も雑魚ッスね。色々問題を抱えている生徒が多くて、いくら顔が良くても売れ残ってしまうレベルの問題児の集まり。人呼んで、"落第生(フェイル)クラス"ッス」

「恐ろしっ!えっ?この学校入ったら楽しいだけなのかと思ったら、そんなシステムあんの!?怖くなって来た。俺、本当に5等級クラスかも」

「ビビり過ぎッスよ。あっ、ほら、クラス分けが張り出されてるッス。確認しに行くッスよ!」


校門を少し進んだ辺りで人が一気に増え出す。

皆、食い入る様に、祈る様にクラス分けの張り紙を眺めていた。

1から4等級までは人集りが出来ているのに、5等級だけは1人も見ようとしていない。

絶対にあそこだけは嫌だ、入りたくないという意思を肌で感じた。

どうどうどう?面白かった?まだ1話目だけど今後の展開気になるんじゃなーい?

そんな君の感想を待っているぞ!

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