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狐猫の重奏唄  作者: わんころ餅
入学編
8/66

部活を発足する!

 一夜が明け、レンはいつものように早朝から訓練所に向かう。

 すると、ポチおの姿があった。

 魔道具を使わず、武器も使用しない彼のスタイルは洗練された徒手空拳で打ち込み、砂袋に殴打を加えていく。

 リズムよく殴打を繰り出し、一撃一撃が重たい攻撃なのだろう。

 砂袋が大きく揺れ、狙いが定まり難い状況でも的確に当てていく。

 そして、最後の重たい一撃を打ち込むと一息つく。

 よほど強い一撃だったのだろう、砂袋は小刻みに揺れ、それを支える支柱が悲鳴のような音を立てる。

 ふと視線を感じ振り返ると目を輝かせて見ていたレンの姿が目に入る。


「おや、今日も訓練しているんだね。いい事だ」


「ポチおさんは調査隊じゃなくなっても訓練するのですね……」


「ん〜……まあ、そうだね。もしかしたらまた呼ばれるかもしれないし、それに材料調達もやらないといけないしね」


 レンは昨日の講義の事を思い出し、納得する。

 筋肉が固まってしまう前にストレッチをするポチおにレンは気になる事を聞いた。


「ポチおさん。魔道具の作り方を教えて欲しいです!オレ……自分に合った魔道具を作って、何としても調査隊に入りたいんです!」


「うーん……魔道具の作り方自体は学園の図書館に行くといいよ?オイラの作り方は全くと言っていいくらいアテにならないからね」


「そ、そうなんですか……。図書館行ってみます!」


「あ、そうそう。昨日サムさんに話しといたから学園であったら詳しい話を聞いてごらん」


「え?それはどう――あれ?」


 目を離した時には既にポチおの姿はなかった。

 一瞬で姿を消す辺り、ポチおは只者ではないのだと感じるのだった。


 食事を済ませ、教室に着くとサムがいつものように授業の準備をしていた。


「先生おはようございますっ!」


「おお、レンか。おはよう」


 いつものようにサムの手伝いをするレン。

 するとサムは腕を組みながらレンに声をかける。


「レン。お前は部活動に入るか?」


「部活動?」


「そう。学園の授業だけでなくて一分野に特化した部活動なんだが、興味はあるか?」


 今朝、訓練所でポチおが言っていたのはこの事かと確信する。

 レンがしたい事は一つ。

 

「……魔道具を作る部活動はありますか?」


 その問いにサムは困ったような顔をしており、申し訳なさそうに口を開く。


「残念だが、無いんだ。昔はあったんだが、やはり難しい技術でポチおのように上手くはいかないみたいだったな。あ、魔道具じゃないが、魔法で作る工作の部活動ならあるぞ?」


「いや、それは……」


「察しが悪いぞ?サム」


 ふと教室の入り口から女性が声をかけてきた。

 二人は顔を向けると保健室の教師、メリルだった。

 メリルは腰に手を当て、ため息を吐きながらサムの方を向く。


「ポチおはお前に部活動の顧問をしろって言ってるんだ。それも、魔道具のな」


「いやいや!無理でしょ!俺、作った事一度も無いし!それに格闘部の顧問だし……」

 

「情けない……。レンといったか?今聞いてもらったとおり、魔道具を制作するための部活動は無い。新たに興すのであれば、部員を見つけて欲しい。今は私が仮に顧問をするが、正直なところ魔道具はわからない。適任者がいれば打診をする。それでもいいかな?」


 レンにとってこれ以上にないチャンスであり断る理由はなかった。

 メリルに深々と頭を下げ、右手を出す。

 メリルはそれを見たとき、少し顔を赤らめ咳払いをする。


「レン。頭を下げて手を差し出すというのは、パートナーになってほしいという意味になるのだ。……まぁ、まだ未成年だししょうがないのではあるが……。気をつけるように」


 レンはその意味を瞬時に理解し、手を引く。

 照れているメリルにサムがニヤニヤと笑う。


「生徒にモテモテじゃないか、めえさん?」


「……サム、後で覚えておく事だな……!」


「え、そんな……怒らないでって!」


 慌てて謝罪するサムを他所にメリルはレンに対し、課題を出す。


「レン。顧問の件は先ほども言ったように私に任せてくれ。こればかりは私の仕事だからな。お前には部員を最低一人は集めて欲しい。魔道具というかなり難しい課題だからヒトは集まらないだろう。学園の部活動には必ず卒業前に成果発表をしてもらう場があるんだ。それを行うのには一人では正直言って不可能だ。だから、一人は入れて欲しい。部活中に事故があっても問題だしな……」


 メリルの心配はレンにもよく分かり、心当たりを当たってみようと思った、

 すると授業の時間が近づいたのか、クラスメイトがゾロゾロと入り始める。

 メリルはレンの肩をポンポンと叩き耳元で呟く。


「お前の活躍に期待しているぞ」


「は、はいっ!」


 レンは嬉しくなり、深々と頭を下げるのだった。

 異様な光景を見たクラスメイトは揃って首を傾げ、ハウルは面白く無いといった表情を浮かべていた。

 講義が終わり、レンは保健室へと向かう。

 ハウルが一度も突っかかって来なかったことに違和感を感じたが、今日のレンはハウルの事はどうでも良かった。

 保健室の扉を開き、中を確認するとメリルが作業をしていた。


「先生!来ました!」


 呼ばれたメリルはレンの姿を確認し、学園の地図を持つ。

 

「あぁ、レンか。それじゃあ部室の方を決めていこうか?余っている部室は……ふむ、ここなら大丈夫そうだな。付いてくるといい」


 学園は広いため、地図が必須なのだろうとレンは思い、メリルの後をついていく。

 しばらくすると屋外競技場が視界に飛び込んできて、魔法を使用した競技の練習をしている部活動があった。

 元素魔法を放つ者や速度を上げる魔法などを使い、的を倒していく競技だった。

 よく目を凝らして見るとハウルが待機場所にいた。

 思わず半分身を隠して眺めていると、メリルが指でレンの頭を刺す。


「早くいくぞ?」


「は、はい!」


 出来るだけハウルに見つからないようにコソコソと足早に部室棟へと入るのだった。

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