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異形の怪物

「そろそろ戻ろうか?」


「そうですね。それが良いかもしれま――」


 雷が落ちたような炸裂音と爆発音が縁祭りの会場に鳴り響き、爆風がレンたちのいる広場にまで到達する。


「な、何事……!?」


「事故……でしょうか?」


 レンたちは祭りの会場に走って向かおうとした瞬間、目の前に異形の怪物が現れる。

 ニンゲンの顔、昆虫の胴体、腕はカラス、脚はタコのように八本あり、くるぶしから先は獅子の足先をしていた。

 ヒトではない。

 リコは怪物から発せられる悍ましい魔力を察知し、魔力を全身から発し、警戒レベルを最上位まで引き上げる。

 魔道具を取り出し、リコは空中に紋章を描いていく。

 リコの紋章を描く速さは非常に速く、並のヒトでは到底追いつけない速さである。

 しかし、それを以てしてもリコより速いスピードで怪物は迫り、八本の脚による多角的な蹴り技を繰り出す。

 リコは死を覚悟した瞬間――


「『数多の魔法の根源よ、重ね合わせた大地の牙で突き上げろ!』」


 怪物の攻撃がリコに当たる前に地面から岩の槍が複数現れ、全てが怪物の腹部に目掛けて直撃する。

 上空に打ち上げられた怪物を眺め、レンは悔しそうな顔をする。

 ――まだ威力が足りない……!オクトさんの時はもっと強い力だった!リコさんに守られてばかりじゃないんだ……!今度はオレがリコさんを守るんだっ!

 レンがそう誓った瞬間、腹部の左側が弾けたような感覚に陥る。

 すると、今までにない膨大な魔力がレンの体を包み込んだ。

 今まで堰き止められていた魔力が解放された瞬間だった。

 レンの魔法の制約『リコのために魔法を使う』というものがリコとパートナーになった事でより重くなる。

 重い枷を提げているレンの魔法が弱いはずがなかった。

 そして、レンは『リコを守る』という誓いを立てた。

 制約に対して誓いを立てるという事はリスクが非常に大きく、成獣ですらそのような事はしない。

 しかし、レンはそのおかげか非常に高い魔力――本来の魔力を手にした。

 ――こ、こんな魔力が……!?リコさんと殆ど同じじゃないか……!これなら……いけるっ!アイツを倒してやるっ!

 そう意気込んだ瞬間、レンの魔力が霧散して消えていく。


「あ、あれ……!?なんで……!?――わっと!」


 辛うじて怪物の攻撃を避け、リコの隣まで退避する。

 リコに匹敵する魔力を誇っていたはずが、いきなり空っぽになり、レンは戸惑う。

 すると、レンの右手をリコが握る。


「きっと、私とパートナーになった事で魔法が少し変質しているかもしれません……。私がレン君の魔法の鍵だとすると、恐らくですが私以外に魔法を使うのが許されていない可能性があります……。ごめんなさい」


 レンはリコの言葉を聴き思い当たる節があった。

 リコを守ると誓い、魔力を解放させた。

 魔物を倒すために魔法を使おうとすると魔力が霧散する。

 そこでレンは理解する。


「リコさんを守るための攻撃しか許されていない……て事かな……?」


「きっと……」


「今までの紋章魔法にも適用されているかもしれない……。なら、リコさんにこの魔道具を渡す。リコさんが魔法を放つ時、オレの魔法でリコさんの魔法を連鎖させる。これなら出来るはず!」


「わ、わかりました!」


「それじゃ……仕切り直しだ!」


 霧散していった魔力が再びレンの元に集まり、活性化状態になる。

 リコは杖に魔力を込めて紋章を起動させる。

 レンはそれに手を翳し詠唱を始める。


「『数多の魔法の根源よ、我の誓い主の魔法を重ね合わせ、より強大な魔法を与えよ!』」


 ――数は……二十連鎖!

 レンはリコの魔道具の紋章を怪物に対し、一列に繋げる。


「レン君……これは……!?」


「オレの魔法。本来は【連鎖】の魔法で、同じ魔法を発動時間内に繋げる事で威力をねずみ算的に上昇させる……みたいなものなんだ」


「ですが……」


「そう。それは父さんの魔法で、オレの魔法は魔法を発動していない紋章の段階で一度に連鎖を出すことが出来る。だけど、これだけじゃ威力が足らないかもしれないから、もう一つの特性を使うよ!」


 リコの答えを待たず、レンは次の段階へと繋いでいく。

 一列に並べた紋章を組み合わせていく。

 一連鎖目を中心にし、時計回りに並べていく。

 六角形を作り、さらに外側に六角形を作る。

 三つの六角形が作られた十九連鎖目までの上に二十連鎖目を重ね合わせる。

 すると大きな一つの紋章に変化した。


「これは……風の最上級魔法……!?」


 リコは初めて見る紋章に狼狽えていると、隣で魔法を組んでいたレンは膝をつく。

 幾ら【連鎖】の魔法が燃費が良いとはいえ、紋章の書き換えは普通の魔法の領分を遥かに超えており、レンの負担が重くのしかかる。


「レン君……!大丈夫ですか……!?」


「……っ!リコ……さん!これを使って……!」


 レンの表情を見たリコはしっかりと頷き、詠唱に入る。

 先程と違い、この紋章には防壁の機能がついており、溢れる暴風が怪物の足を止めていた。

 それを見たリコは安心して詠唱に集中することができた。

 ――レン君……ありがとう。貴方はいつも私の事を気遣ってくれます……。私も貴方に尽くして、相応しい番になります……!


「『鎮まることを知らない烈風よ、そなたは万物を容易く切り刻む刃を微風のように放つ。我が敵に怒濤の如く刃を向け、跡形もなく現世から消し去れ』」


 レンの右手をしっかりと握り返し、リコは右手を相手に向けて突き出した。

 一瞬だった。

 怪物の身体は一瞬のうちに消し飛び、川の水を巻き上げ、岩山を破壊しながら突き進んだ。

 明らかに過剰な威力であり、二人は呆然として見ていた。

 

「す……凄い威力だ……!」


「下級魔法を出鱈目に強くしたものとは、全然別物ですね……!」


「でも、さすがリコさんだ。オレがキミのために紋章を用意できればどんな魔法だって打てるかもしれないね!これから、もっと応えられるように頑張るよ!」


 レンは嬉しそうな表情をリコに向けると、いつになく表情が柔らかくなったリコはしっかりと頷くのだった。

 仲の良い二人の背後には、どす黒く染まった結晶が宙に浮いてクルクルと回転していたのである。

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