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お肉がいっぱい!

 初めて外で食べた魔獣の肉は非常に美味しいものだった。

 最初こそ魔獣という事で疑っていたものの、肉を焼いた瞬間それは吹き飛ぶ。

 程よく脂が乗った肉は若いケモノである彼らにとってご馳走であり、みるみる減っていく。

 その食べっぷりは離れて見張りをしていたレプレが目を見開いて引くほどだった。

 満腹になった三人はその場で仰向けになって倒れる。


「もう、食べられない……!」


「久しぶりに満腹になりました……!」


「アタシももうダメ……!」


 満腹になるまで食べることは彼らはあまりない。

 それは度重なる襲撃の経験により、いつでも戦う準備をしておく必要があり、満腹になると戦闘に支障をきたす。

 また、少し空腹だと飢餓感を感じる為、生存本能から戦闘能力に上昇が見られる。

 その為、彼らはいつも空腹感を感じていた。

 本来は国外を回る時には食料を節約する目的もあるが、国内にいるときよりも空腹でいる事が多いのがセオリーだが、三人は満腹になってしまっていた。

 それは、レプレという絶対王者がいる事で安心しきっていた。

 暫くすると焚き火の火が途絶え、レプレは様子を確認するために戻ると、三人は火のあった場所の周りで大の字になって眠っていた。


「あらら。外の世界だっていうのに随分と無防備な……。でも、それだけウチを信頼してくれているのかしらね……」


 レプレはサクラとリコを横穴へと運び、魔獣の毛皮の上に寝かせる。

 幼さが見える二人を見てクスリと笑うとレンを回収しにいく。

 満足そうに眠る彼を見て、カバンからマントのようなものを取り出し、レンにかける。


「故郷か……。キミもお父さんとお母さん、魔物に殺されたんだね……。辛かっただろうに……」


 レンの頭を優しく撫で、空を見上げる。

 こうして長い旅の初日が終わったのであった。


 §


 レンが目覚めると、まだ夜は明けていなかった。

 ふと、鼻歌が聞こえたため、歌の主の所へ歩くと、高台で足をぶらぶらと振りながら鼻歌を歌うレプレの姿があった。


「おはようございます!」


「およ?早いね」


「オレ、猫だからいつもこの時間に起きるんです。それよりもコレ、ありがとうございました」


 レンはレプレにマントを返すと、雑に頭を撫でられた。


「ひとつ聞きたいのだけど、あなたのご両親って魔法技術士だったの?」


「分からないんです。覚えているのは父さんと母さんの殺される姿と魔獣のような見た目をした【何か】だけで……」


「それなら別に良いの。ほら、あんまりプライベートを根掘り葉掘り訊くのはマナー違反かな?って思ったの」


「オレ、あんまり気にしてないんで大丈夫です」


 レンは気にしていないのだったが、レプレは気にする性格だったようだ。

 レプレの気遣いにレンは気付かないまま、高台から降りる。


「そろそろ準備しなくちゃ、ですよね?」


「そうだね。女の子たちも起こしてあげなくちゃ」


 二人はリコとサクラを起こすために横穴へと戻ると、既に二人は起きていた。

 朝から二人は一触即発ムードであり、レプレが間に入って二人を引き離す。

 まだ、始まったばかりの旅であるため、一行は先を急ぐのであった。



 【太陽】が朝を告げ、岩石地帯を歩いていく。

 すると、リコの足取りがだんだんと悪くなっていく。

 レンは遅れているリコを見てすぐに駆け寄ると、ひどく緊張をしているようだった。


「リコさん、大丈夫?」


「あ……はい……」


「魔力ばかりで運動しないからじゃないの〜」


「サクラさんっ!」


「じょーだんじゃん……。ちぇ……」


 レンに叱られ拗ねるサクラにレプレは側に寄る。


「仲違いは今するべきじゃないよ?それは学園に帰ってからする事。それはそうと、リコちゃんは気づいているようだね」


 リコの緊張が更に強くなり、動きがぎこちなくなってくる。

 レンとサクラはどういう状況か分からず、互いに顔を見合わせて首を傾げる。

 するとレプレはまるで悪戯をするような笑みを浮かべて人差し指を二人に向けて振る。


「リコちゃんも含めて、見てのお楽しみだよ」


 レンとサクラは何が見られるのか楽しみに、リコは嫌がる身体を奮い立たせ、岩山を登る。

 暫く登っているとリコは完全に止まってしまう。

 歯をガチガチと鳴らし、自分の身体を抱きしめるように丸くなってしゃがみ込む。

 完全に恐れている事が見てわかるとレンはリコの身体を覆うように抱きしめる。


「レプレさん!リコが!」


「やっぱり難しかったかぁ……。じゃあ、ちょっとだけ待ってて?」


 レプレは岩山にある道を完全に無視し、ピョンピョンと跳ねながら頂上へと一気に登っていく。

 取り残された三人はレプレの予想外の行動に驚いていると、レンは臨戦態勢に入る。

 ――リコさんが動けない今は、オレがなんとかしなくちゃ……!でも、魔力が学園内最高の量を持っているリコさんですら恐怖するって……。

 レンは毛を逆立てて耳をたたみ、尻尾の毛を膨らませる。

 この行動は意識的に行われておらず、レンはそれの意味を知っていた。


 命の危険。


「サクラさんっ!すぐに戦いの準備を――」


 レンの背後に鈍い音と衝撃、風圧が襲いかかり、思考が停止する。

 サクラはその姿を見た瞬間、戦意を喪失させ、へたり込む。

 レンは恐る恐る振り返ると昨日の魔獣ほどの体躯を持ち、全身が堅牢な鱗に包まれ、両腕が翼と一体化したトカゲのような姿をしていた。


「ど……ドラ……ゴン……!?」


 レンは素早く振り返り、杖を振るう。


「『吹き荒れる砂塵よ、我に仇なすものの視界を奪えっ!』」


 ドラゴンの目に目掛けて砂が勢いよく飛び掛かる。

 完全に嫌がらせ用の魔法だが、白兵戦では初撃の速さから非常に有効な手段だったため、使用する。

 しかし、ドラゴンには透明な目蓋が存在する。

 レンの嫌がらせの魔法は意味を成さず、パラパラと砂が落ちていく。

 それは陽動。

 砂の目隠しをしている最中に、レンはドラゴンの懐に潜り込んでおり、ツルハシの魔道具を展開していた。


「『我が両腕に剛力を与えよ!』」


 レンは【強化】の魔法で力を底上げし、【魔力凝縮】でツルハシの強度も上げていく。

 ハンター投げの要領で二回転ツルハシを振り回し、速度が乗ったところに強烈なアッパースイングがドラゴンの腹部に向かって振り上げられたのだった。

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