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奥義?を学ぶ

 砂埃が晴れ、視界が良好になるとレンは驚愕した。

 至近距離から風の魔法を直撃させたにも関わらず、カレンは無傷だった。


「な、なんで……!?」


「いやぁ……短時間でここまで出来るようになるとは思いもしなかったよ!君は訓練をしっかりとこなせば良い戦士になれる素質があるよ!」


 鎧に付いた砂埃を手で振り払う彼女にレンは納得がいかなかった。

 それは至近距離かつ、自身の最大限に込めた魔法が効かず、埃をつけた程度しか無かったことに。

 

「……それよりも、どうして攻撃が効かないんですか!?」


「君がウチの魔力を突破できなかった。それだけだよ?少なくともウチの魔力はあっちにいる女の子たちよりも数倍持ってるもの。君の魔法の干渉力が弱かっただけだよ」


 レンは圧倒的な実力差を目の当たりにして俯く。

 分かっていた事であったが、事実を突きつけられるのは思春期真っ只中の彼には中々のダメージである。

 そして、魔法では彼女に勝てないことを悟り、構えを解いた。


「……オレが、調査隊を目指しても、意味ないじゃないか……!」


「どうして?」


「魔力が弱くて魔法が効かない敵が出たらオレは隅っこに隠れるしかできないじゃないか!魔道具を作ってサポートが出来る……そんなの強い奴なんか魔道具がそもそもいらないじゃん……」


 完全にいじけてしまったレンを見て、カレンは顔に手を当てて考える。

 ――あちゃー……やり過ぎちゃった……。実際、魔道具班は要るんだけどなぁ……。今、この子に言っても伝わらないだろうし……。うーん……【アレ】教える……?メリル様に怒られたら嫌だけど……しょーがないっ!

 カレンは木剣を地面に突き刺して立てる。


「よーく聞くんだよ?今から教えるのは【奥義:魔力凝縮】って技。これを使えば大体の魔力差を覆すことが出来る強力な一撃を繰り出せる技。興味ある?」


 カレンが【奥義】と言った事に反応し、表情が明るくなる。

 しかし、この技術は特別な奥義ですらない。

 魔力纏いの応用であり、局所的に魔力を集める技術だ。

 魔力のコントロールができるようになると、さほど難しい技術ですらない。

 半ばネーミングによって騙されている形だが、レンは食いついた。

 嘘はついていない。


「この技術は戦士、剣士、魔法使いのどれにも関わらず使いこなす技術。魔法の威力を上げることもできるし、何より魔力の壁を突破するにはこれが一番簡単なんだよね。だから、君が身につける技術はこれが最適だね」


「教えてください……!このまま、弱いのは嫌なんです!見返したいヒトも……守りたいヒトもいるんです!」


「ええっ!ねえ!君は恋してるの!?わあぁぁ……お姉さん、キュンキュンしちゃう……!」


 恋する思春期男児を見て聖騎士かつ近衛師団長という肩書きを持つにも関わらず、初心な感情を目の当たりにしてときめく。

 そんなカレンを見てレンは少し距離を置いてしまっていた。


「……よしっ!二肌目脱ぎますか……!まずは魔力纏いの基本を答えてくれるかな?」


「えっと……全身に魔力を込めて魔法に対する防御性能を高める……です!」


「正解♪魔力纏いはバランスのいい防御技なんだ。武器に纏えば武器の強度が上がって、攻撃性能も少し上がる。欠点は耐久性重視で燃費が悪い。何でかわかる?」


 レンは首を横に振る。

 基礎基本として習ったが、燃費が悪いという事はサムにも教わっていない。

 自身の戦闘経験値が少ない事で理解できていないとレンは感じる。

 難しい顔をしているレンを見て、「うんうん」と言いながら頷く。


「そうだねぇ、全身に魔力を込めたら攻撃を受けない箇所にも魔力を使わなければならないでしょ?魔力は余程なことがない限り使えば無くなる。勿体無いから生まれた奥義が魔力凝縮なんだ。魔力を一部分に集中させる技術で爆発的な火力と段違いな防御力になるんだ。魔力纏いの攻撃上昇なんか比べものにならないよ!」


「ど、どうやってやるんですか!?」


「え?」


「え?」


「「……」」


 二人の中で沈黙が走る。

 カレンの中では既に説明したということになり、レンの中ではこれから説明があるとばかり踏んでいた。


「えっとね、魔力纏いの全身バージョンから例えば……手に集中させてみる、みたいな?」


「どうやって集中させるんですか?」


「それは自分で考えなよ。感覚はウチになんとかできる問題じゃないもん。でも、魔力纏いができるなら直ぐに出来るようになるさ!それじゃあ、続きをしようか……!」


「え……ちょ……!?待って……!」


 カレンは木剣を引き抜き、構えると魔力を解放する。

 リコほどではないが、圧倒的強者の魔力によるプレッシャーに当てられたレンは魔力纏いで抵抗するがジリジリと後ろに下がってしまう。

 カレンの言った事を思い出し、全身に割り振っていた魔力を足だけに集中させると、圧力によって無理やり後退させられていた両足は鉤爪のような物で引っ掛けたようなグリップ感を得た。

 そして、その状態でカレンに向かって跳躍すると、今まで体験したことのない程の脚力に驚き、勢い余ってカレンに抱きついた。


「うわっぷ!?」


「ごごごごごめんなさいっ!全然制御ができなくって……!」


 抱きついたレンの首を摘み上げ、そのまま地面に降ろすと、レンは卒倒する。

 魔力切れによる失神だった。


「ああ……魔力切れちゃったか……。魔力の残量を気にするようになれば、この子は間違いなく伸びる。いい子を見つけた……♡めえさま〜!魔力切れで失神してまーす!」


 カレンは気絶したレンを肩に担ぎ、レンが戦闘不能になった事を大声で伝える。

 同時にサクラが負けてしまったため、レンたちの敗退が決まってしまったが、二人に対して拍手が送られたのであった。

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