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聖騎士カレン

 レンは森を模した競技場の中で身を潜めていた。

 ――デタラメすぎる……!剣の一振りで周りを破壊するなんて……。しかも使ってるの訓練の木剣なのに……!

 サクラの【幻惑】による分身を消していきながら両軍の選手を探すカレン。

 一番近くにいたのはレンであり、身動きが取れずに困っていた。

 幸いな事にレンはうまく身を隠す事ができ、見つからずにいたが、いつ魔力による探知が行われるかと肝が冷えていた。

 馬族は聴覚が非常に鋭い。

 下手に動けば衣擦れの音だけで察知されるのは目に見えてわかる。

 そして、レンの瞬発力よりも速く行動できる点で戦闘となれば確実に負ける。

 試合は硬直していた。

 理由は簡単で、レン達の陣地の近くにカレンがいるため、特級クラスのチームも手出しができなかった。

 というよりも目をつけられたレンたちが勝手に負けるのを待っている様だった。

 そんな状況となり、カレンは大きく息を吐く。


「なんだ、特級クラスの子たちは攻めに転じないのかな?そう思うでしょ?そこに隠れてるネコくん?」


「!?」


「隠れてるつもりでも、魔力探知は嘘つかないからね。この幻影はよく出来てるけど、彼女の場所はもうわかっているんだよ?」


 レンは魔力探知を使っていないと判断したのはメリルの探知を目の当たりにしていたから。

 メリルの魔力感知は僅かに毛を震わせ、使ってきたと判断できる物だった。

 しかし、カレンはレンに気付かせることなく魔力感知を広げていたのだ。

 レンは隠れることを諦め、渋々カレンの前に出る。


「珍しいね。わたしの挑発に素直に出てくる子」


「……何をやっても貴女には勝てないです……!でも、調査隊を目指すなら、たとえ聖騎士様でも立ち向かわなきゃダメなんだって思ったんだ!」


「おお!調査隊に入りたいの?良い子だ!よぉし……お姉さんが一肌脱いであげよう!さあ、かかってきなさい!」


 両手を広げ、挑発するカレンに対し、自慢の瞬発力で迫る。


「『唸りを上げる烈風よ、我が敵の足元を掬え!』」


 詠唱と共に杖型の魔道具を振り下ろし、カレンの足元から突風を吹き上げる。

 しかし、レンの魔法は彼女の分厚い魔力の壁に阻まれ、微風程度の威力しか与える事ができなかった。

 それでもレンは怯まず、飛び掛かる。

 魔力を込めた杖を思いっきり振り下ろし、脳天に直撃させようとした瞬間、レンは吹き飛ばされていた。

 バキバキと音を立て、木々を破壊しながらレンを剣圧で吹き飛ばしていたのだ。

 太めの木に直撃し、レンの肺の中の空気を全て追い出し、意識が飛びそうなほどの痛みで悶える。


「ダメダメ!まっすぐ直線的に動くと今みたいにカウンター決められるんだよ!白兵戦はフェイントや魔法による陽動も仕掛けないと!」


「……なこと言われても……なら――」


 レンはそれ以上の言葉を止める。


 ――習ってないは言い訳だ……。戦いに習ってる習ってないは関係ないんだ……。戦うからには知恵を振り絞らなきゃ……!


 サムやメリルが言いそうなことを思い出し、レンは痺れる体に鞭を打ちながら立ち上がる。


「すごいすごい!大体今ので降参するんだけど、キミは根性あるね……!」


「……調査隊を目指すんだ!こんな事で諦めてたまるもんか!」


 再び杖を構え、先端をカレンに向ける。

 ダメージを受けているということもあり、杖が震え、狙いが定まらないでいると、カレンが木剣を構える。


「構えの基本!両手で構えるものは真身まみで構えること。片手で構えられるものは半身、真半身の構えで相対すること!構えはキミの戦う意志を底上げしてくれるから忘れないように!」


 レンは頷くと深呼吸をし、杖を頭上に掲げる。

 そして、左足を下げ、体をカレンに対して直角にする。

 そして杖を持っている右手をカレンに向け、左手は胸の前で防御をいつでも取れるような体勢となる。


「あれ……?体の震えが止まった……?」


「うんうん!構えっていうのはとても大事でね、剣術をするにも魔法を使うにしても大事な部分。身体を正しい位置に持ってくるだけで力まないようにする役割があるんだ!最初の構えは正に魔法拳士の構えだからサムさんを師事してる子でしょ?キミはネコだから柔らかい身体と魔道具を使って魔法を放つからその構えが正解!ってワケ」


 レンは一目見ただけでどんな戦闘スタイルを取るか見破るカレンの分析力に驚愕した。

 彼女の所々感覚的な部分はレンには首を傾げる点もあったものの、褒められているという事は分かったので嬉しそうに尻尾を伸ばす。

 分かりやすい表現の仕方でカレンはニコニコとした表情でレンを見る。

 すると、レンはある事に気がつく。


「聖騎士様って、もしかしてオレたちを倒す気はないんですか?」


「そだよ!」


「じゃ、どうして参加を……?」


「ふふーん。それはね、強いヤツを見て闘う意思がある者を指導しようと思ってね。でも、ウチはスパルタだよ……!乗り越えられるかどうかはキミ次第だ!」


 突然の攻撃によりレンは体を強張らせるが構えを解いてない事から必要以上に力が入らなかった。

 猫族のレンの目には速い動きはスローモーションのように見える。

 見えない剣圧でも砂埃や枝葉の揺れを見逃さない。

 身を屈めて太腿の筋肉を肥大化させる。

 ネコ族の得意技であり、全身をバネのように使う事ができる。

 飛んでくる剣圧を横に躱し、レンは錐揉み状に回転しながらその場を跳ぶ。

 レンのいたところを木剣が通り過ぎていたのだ。

 カレンは躱されるとは思わず、目を見開き、やがて嬉しそうな表情へと変わっていく。

 レンの居る上空へ視線を向けると彼女の口角が上がる。


「『我らに等しく掛かる大気よ!その圧倒的な質量を持って我が敵を押し潰せ!』」


 重力の恩恵を受けた空気の塊がカレンの頭上から降り注ぎ、砂埃を上げて直撃した。

 観客席にいた生徒たちは身を乗り出して煙が晴れるのを待つのである。

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